「子どもたち一人一人が大切にされ、なりたい自分になれる」教育活動に取り組む。「調布市立染地小学校」インタビュー
昭和40年代に開発された多摩川住宅を学区とする「調布市立染地小学校」。1966(昭和41)年の開校より56年目を迎える学校で、自然に囲まれたおだやかな雰囲気に包まれている。
2022(令和4)年現在、児童数およそ210名の小規模校で、子どもたち一人一人を大切にした教育活動が行われている点にも注目したい。
今回は2020(令和2)年度に校長として着任した大柳ひろみ先生を訪ね、「調布市立染地小学校」の概要や特色ある取り組み、地域の魅力についてお話を伺った。
1966(昭和41)年に開校した「調布市立染地小学校」
――まず「調布市立染地小学校」の歴史や概要についてお聞かせください。
大柳校長先生:「調布市立染地(そめち)小学校」は1966(昭和41)年の開校で、今年で56年目を迎えます。児童数は2022(令和4)年10月現在211名で、小規模校のメリットを生かした教育活動が行われています。
学校の歴史を遡ると、多摩川住宅への入居者の増加とともに児童数も増え、昭和40年代から50年代にかけて、最も多い時期で1,417名もの子どもたちが通っていたようです。その後、世代の移り変わりとともにこの地域から巣立っていく人も多く、平成に入ってからは200〜300名規模で推移しています。
現在、多摩川住宅ホ号棟の建て替えが進められており、今後は児童数が少しずつ増えるかなといった見込みもあります。
小規模校のメリットを生かした教育活動を展開
――学校の特色についてお聞かせください。
大柳校長先生:市内でも児童数の少ない学校ですが、小規模校には小規模校のメリットがあると思っています。本校の目指す学校像にもあるように、子ども一人一人が大切にされ、なりたい自分になれる学校という点に注目いただければと思います。
例えば、教職員は児童の顔と名前をすべて知っていますし、家族のようなあたたかみのある雰囲気です。また授業中の発表など子どもたちにとっては活躍できる場が多く、一人一人が主役になれる機会に恵まれている所です。他にも6年間同じクラスで一緒に生活をするのでおたがい気心の知れた間柄と言いますか、絆を深めながら育っていけるところも小規模校の良さだと思います。
豊かな自然環境に恵まれた「はちのす校舎」
――校舎のつくりも特徴的ですが、その点はいかがでしょうか?
大柳校長先生:そうですね、学校のHPに空から撮影した校舎の写真もありますが、教室が六角形をしていてその様子がハチの巣のかたちに似ていることから「はちのす校舎」と呼ばれています。昭和40年代にみられる建物で、市内の小学校では本校を含めて2校、中学校でも現存するのは1校だけのようです。
また学校の敷地内には900㎡にもおよぶ芝生やビオトープもあり、自然を感じながら生活できるのも本校の恵まれているところだと思います。校庭に植えられている樹木のなかには実のなるものもありますし、いろんな種類の野草も自生しています。
あとは正門のあたりにある桜の木も綺麗ですね。以前は道の両側にあって桜並木のように続いていたのですが、老木になってしまったため昨年末に切り倒されてしまいました。今後、道路の改良工事が行われる予定があり、同時に桜の若木が植えられるそうです。
1年生から6年生まで一緒になって活動する「ハチの子タイム」
――異学年で交流する、たてわり活動や特別支援学級との交流についてもお聞かせください。
大柳校長先生:異学年で交流するたてわり活動を、本校では「ハチの子タイム」と呼んでいます。1年生から6年生まで同じ班に編成された子どもたちが一緒になって活動を行います。本校ではコロナ禍においてもガイドラインやルールを守りながらできる限り活動を続けてきました。本校のような小規模校にとってたてわり活動は重要で、その活動がなければ1クラス20〜30人ほどの狭い世界の中で人間関係が完結してしまいます。
そうすると例えば中学校に進学したときに、見知らぬ大勢の人たちのなかで萎縮してしまったり自分を出せないといったこともあるため、小学生のうちからいろいろな学年の子どもたちといろんな活動を通して自分を出せるよう様々な取り組みを進めています。
先週末に行われた運動会の「そめリンピック」も2学年ずつに分かれて演技が行われたのですが、上の学年が下の学年に教えるような交流もあり、1、2年生は琉球の音楽に合わせて「エイサー」を披露し、3、4年生は「花笠おどり」、5、6年生も見事な創作ダンスを披露してくれました。
また本校には「たけのこ学級」という特別支援学級があり、通常学級と特別支援学級の交流も行われています。 このようにたてわり活動や普通学級、特別支援学級の交流を通じて、相手を思いやる気持ちや優しさ、おたがいの違いを認めるといったことも自然とできるようになり、目指す学校像にあるような「一人一人が大切にされ、なりたい自分になれる」教育活動につながっているものと思われます。
「地域学校協働本部」が設置され、地域の方による学習支援が実現
――保護者や地域の方々との交流を通して行われている取り組みなどはございますか?
大柳校長先生:調布市では市内すべての小中学校に「地域学校協働本部」が設置されており、学校と地域とが結びついた教育活動が行われています。例えば、本校では家庭科でミシンを使うときに地域の手芸サークルの方に入っていただいたり、放課後の学習支援や本校を会場とした漢字検定を行うときの運営なども地域の方に行っていただいています。
コミュニティ・スクールに関しましては、本市では来年度(令和5年度)から順次移行していく計画で、2025(令和7)年度までに全校で導入される予定です。
1人1台のタブレットが配布され、ICT教育もスムーズに展開
――オンライン授業やタブレット端末の運用の実際についてもお聞かせください。
大柳校長先生:本校ではコロナの感染拡大がはじまった2020(令和2)年度にオンライン授業を行うためタブレットが設置されました。また2021(令和3)年度に1人1台のタブレット(iPad)が配布され、授業や校外学習などで活用されています。
例えばベネッセのムーブノートを使って協働的な学習に活用したり、高学年は意見交換をする際にGoogleのJamboard(ジャムボード)を使ったりしています。また低学年でも連絡帳に記入する代わりに黒板を写真で撮って持ち帰るといったことも行われています。
他にもGoogle Classroomを使う機会は多く、オンラインで質問のやり取りをしたり、始業式、終業式、保護者会もClassroomで行いました。児童数が少ないこともあり導入がスムーズで、こういったところも小規模校の良いところだと思います。
変化に柔軟に対応する体制づくりと「たくましい子ども」を育てることに注力
――今後、多摩川エリアや多摩住宅エリアでファミリー世帯の人口が増え、児童数も増えていくと思われますが、人口増に伴う対策や検討していることがあれば教えてください。
大柳校長先生:今ある校舎や施設を無駄なく、そしてきれいに、大切に使い続けていきたいと考えています。社会情勢や環境の変化についても、必要に応じて柔軟な対応がとれるように体制を整えています。
――今後、力を入れて取り組んでいきたい活動はありますか?
大柳校長先生:先にお話させていただいたように、近く本校も「コミュニティ・スクール」となります。今まで以上に子どもたちが地域の中で成長できるように、そして、学校が子どものよりどころとなるよう力を注いでいきます。
また、教育目標にある「あたたかく(徳)、たくましく(体)、まえむきに(知)」を目指し、子どもたちの心と体が一層たくましくなるような活動にも取り組んでいきたいと考えています。コロナ禍で子どもたちの体力低下を懸念される声もありました。日常的に体を動かすことで、体力の向上につながればと思います。
子どもたちにとって伸び伸びと生活できる自然に囲まれた恵まれた環境
――最後に、調布多摩川エリアの魅力をお聞かせください。
大柳校長先生:自然に囲まれた落ち着きのある地域で、子どもたちにとっては伸び伸びと生活できる恵まれた環境だと思います。子どもの頃っていろいろなことをやってみたいですよね。都心部だとうるさいからやっちゃダメとか狭いから危ないとか言われてしまうことも、ここだったら広い空間の中で伸び伸びといろんなことにチャレンジできると思います。少し歩けば多摩川もありますし、自然に触れられるのが一番良いんじゃないかと思います。
あと多摩川住宅には公園がとても多くて、いろんな種類の公園があるんです。「アスレチック公園」や「おやま公園」、「汽車ぽっぽ公園」などいろんな公園が点在しています。 日常の買い物などは国領や調布にも出られますし、近くに便利な商業施設もあります。生活するのに便利で落ち着いた環境というのは、子どもをもつ親御さんにとっては安全・安心だと思います。
調布市立染地小学校
校長 大柳 ひろみ先生
所在地:東京都調布市染地3-1-81
電話番号:042-485-1285
URL:https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/org/toshi/soshiki-gyomu/toshinsaisei.html
※この情報は2022(令和4)年8月時点のものです。