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ICT教育に力を入れる小中一貫校「興本扇学園」

「興本扇学園」は、足立区初となる小中一貫教育校だ。現在は西校舎と東校舎の2つの学び舎で、児童・生徒が学校生活を送っている。本学園はユネスコスクールであり、「Google for Education」の事例校でもある。様々な側面を持つ「興本扇学園」の稲葉守朗校長先生にお話をうかがった。

興本扇学園 稲葉守朗 校長先生
興本扇学園 稲葉守朗 校長先生

創立から18年目を迎えた

――まずは、学校の沿革・特徴および現在の学校概要について教えてください。

稲葉校長先生:本学園は、2006(平成18)年4月に、区内初の小中一貫教育校「興本扇学園」として開校しました。その1年前に「小中一貫教育校による人間力育成特区」として政府の構造改革特区の認定を受け(2008(平成20)年度には「教育課程特例校」制度に移行)、1~4年はⅠ期、5~7年はⅡ期、8・9年をⅢ期とする9年間の一貫したカリキュラムに基づき、教職員同士が協力しながら児童・生徒の人間力の育成を進めています。

教育目標には、「自ら考え学ぶ人」「共に生きる人」「健やかに伸びゆく人」を掲げ、目指す児童・生徒像は「粘り強く、主体的・継続的に学ぶ子」、「心身ともに健康で、情操豊かな子」、「自己実現を図り、社会に貢献できる子」です。現在の児童・生徒数は583名で、全学年2クラスとなっています(2023年4月時点)。

2006(平成18)年4月に、区内初の小中一貫教育校として開校
2006(平成18)年4月に、区内初の小中一貫教育校として開校

――9年間の一貫教育であることの良さについて、どのように感じていらっしゃいますか?

稲葉校長先生:結果からお伝えすると、児童・生徒の学力が向上しました。小学校の教員は、中学校の教員による専門的な授業を学び、反対に中学校の教員は、オールラウンドに指導する小学校の授業を学ぶなど、それぞれの立場を知ることなどで授業の質を高めています。一貫教育により児童・生徒は切れ目のない授業を受けることができますし、教員にとっても情報を共有し、長期的な視野で指導ができます。

中学生の卒業式に、目頭を熱くする小学校の教員がいましたが、このシーンだけでも本学園における9年間を象徴している気がします。思ったようにいかないのが教育ですが、それでも決して諦めず、辛抱強く、児童・生徒に寄り添うことが大切だと考えています。

一貫教育によって、児童・生徒の学力が向上
一貫教育によって、児童・生徒の学力が向上

――特に力を入れて取り組んでいる学校運営・教育活動はありますか?

稲葉校長先生:本学園は、文部科学省により「リーディングDXスクール事業」の指定校になっています。主体的・対話的で深い学びを実現させるためのインフラとしてGIGA端末が整備されたわけですが、このGIGA端末の汎用的なソフトウェアとクラウド環境を活用し、児童・生徒の情報活用能力の育成を図りながら、個別最適な学びと協働的な学びを充実させています。

――「Google for Education」の事例校ということですが、こちらについても聞かせてください。

稲葉校長先生:2022(令和4)年度に「Google for Education」の事例校に認定されました。本学園のICTへの取り組みが評価されたかたちですが、「Google for Education」のツールを使いながら、様々な学習シーンでICTを活用しています。

文部科学省により「リーディングDXスクール事業」の指定校となり、ICT教育にも力を入れている
文部科学省により「リーディングDXスクール事業」の指定校となり、ICT教育にも力を入れている

――さらに「ユネスコスクール」にも加盟されているそうですね。

稲葉校長先生:「平和は対話と相互理解に基づき、人類の知的及び倫理的連帯の上に築かねばならない」という理念に基づき発足したのが「ASPnet (Associated Schools Network)」です。その「ASPnet」への加盟が承認された学校のことを、日本では「ユネスコスクール」と呼んでいます。

本学園ではその実践として、「国際理解に係わる活動」「環境に係わる教育」「日本伝統文化に係わる学習」をテーマに掲げています。まず「国際理解に係わる活動」については、「明海大学」との連携事業として、留学生と英語を用いたコミュニケーションを図ることをしています。

「環境に係わる教育」は、地域ボランティア「花いっぱい運動部」と本学園の児童・生徒との協働作業により花の苗植え活動を行っています。各学年が活動に関わり、活動の結果として地域の方に喜ばれる環境づくりに貢献しているのです。

また、「日本伝統文化に係わる学習」では、ソーラン節の演舞と和太鼓の発表をしています。受け継がれてきた伝統芸能に触れ、披露することで伝統を学ぶよい機会となります。

「ユネスコスクール」に加盟し「国際理解に係わる活動」などをテーマに掲げている
「ユネスコスクール」に加盟し「国際理解に係わる活動」などをテーマに掲げている

――SDGsの取り組みについてはいかがでしょうか。

稲葉校長先生:本学園は4つのテーマで取り組んでいます。1つ目は「質の高い教育をみんなに」で、足立スタンダードに基づく授業の実践やICT機器を活用することで、個に応じた指導を実践しています。また、放課後の補充教室や、小中学校の教員による授業、また中学生が小学生に勉強を教えるといったいろいろなアプローチで、学力の向上と個性の伸長を図っています。

2つ目は「住み続けられるまちづくりを」です。これは地域に暮らす方との連携により、他者の尊重と、周囲環境への関心を高める取り組みです。

そして3つ目の「人や国の不平等をなくそう」は、「ユネスコスクール」としての活動に加え、留学生との交流により、人権や平和、貧困について考えてもらい、持続可能な社会の実現について考えてもらいます。

4つ目は「すべての人に健康と福祉を」です。「幸せになるためには」をテーマに掲げ、学校や社会における人々の暮らしや幸せについて学習しています。

広々とした校庭
広々とした校庭

――学校行事や課外活動について、特徴的なことがあればぜひ教えてください。

稲葉校長先生:区内の学校であれば、学校行事はどこも同じようなものですが、そのなかで言及したいのが、通常、小学校(4~6年生)、中学校ともに1学年だけが行ける「TOKYO GLOBAL GATEWAY」に、本学園の児童・生徒は複数の学年が、予算の範囲内で行けるようになっ ています。「TOKYO GLOBAL GATEWAY」は、全館英語が飛び交い、さながら海外にいるような環境が用意されている施設です。行先は同施設の他に、予算内であれば「キッザ ニア東京」にも行くことができます。

部活動の表彰盾が並ぶ
部活動の表彰盾が並ぶ

団結力がある地域

――地域住民の方との関わり・交流などもありましたら教えてください。

稲葉校長先生:「開かれた学校づくり協議会組織」のなかに「花いっぱい運動」という活動部があるのですが、本学園の花壇等に水をあげたり、雑草を取ってくれたりしています。もちろん児童・生徒もそこに加わり、地域で花を育てるかたちです。また、地域行事の手伝いもしており、地域住民との交流をしています。

「花いっぱい運動」などの活動を通して地域住民と交流している
「花いっぱい運動」などの活動を通して地域住民と交流している

――最後に高野エリア周辺の魅力をお聞かせください。

稲葉校長先生:温かい方が多く、いつも本学園を温かい目で見守ってくださいます。そのような環境で育っているせいか、本学園の児童・生徒は本当に優しくて純朴です。学年に関係なく、困っている友だちがいれば、自然と誰かが手を差し伸べます。環境面では緑が多く、歩けば畑もあります。このような穏やかな風景のなかに、元気に遊んでいる笑顔の子どもたちがいる街です。

稲葉校長先生
稲葉校長先生

興本扇学園
校長 稲葉守朗 先生

所在地:東校舎(1~4年生)東京都足立区扇3-22-1、西校舎(5~9年生)東京都足立区扇3-18-4
電話番号:東校舎(1~4年生)03-3890-7104、西校舎(5~9年生)03-3856-1421
URL:https://sites.google.com/ict.adachi.ed.jp/okimotoougi/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0
※この情報は2023(令和5)年8月時点のものです。

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