パン好きが集まる手間ひまをかけて作られたパンの店

aux pains gourmands(オー・パン・グルマン)

「aux pains gourmands(オー・パン・グルマン)」外観
「aux pains gourmands(オー・パン・グルマン)」外観

春日通りを都心方面に向かって左手側、播磨坂を上りきったT字路の左手にある「aux pains gourmands(オー・パン・グルマン)」は、フランス語で「パン好きが集まる場所」を意味するベーカリー。2009(平成21)年の開業以来、丁寧なパン作りを続けており、地元のみならず遠方から足を運ぶファンも多い。

ずっしりとしたドアを開けると、ふわりと小麦が焼けた芳香に包まれる。トレーを手に取り、一つひとつ違った表情をしたパンから、好みの品を選び取る。このスタイルはコロナ禍の後ずいぶん減ってしまったがやはり楽しい。手をしっかりと消毒し、必要以上に触れないのは当然のマナーだが、茗荷谷だからこそ、この形が維持できているのかもしれない。

シェフの腕を感じさせる逸品の創作系パン
シェフの腕を感じさせる逸品の創作系パン

プライスは200円から300円台が平均と、都心部でもやや高めの部類の店だと思うが、それは、それなりの手間とコストが掛けられているため。しかし、「高いから最初はお試しで」と尻込みするのはもったいない。騙されたと思って、ちょっと多めに取るのが賢明というものだ。

店の主力商品はバゲット、食パンなどの定番系パン。地元の常連客が毎朝のように訪れ、それぞれお決まりのパンを購入していることが多いという。ゆえに午後まで残っているパンは創作系や季節限定系のパンが多くなる。しかし実は、これらの創作系パンこそが、シェフの腕を感じさせる逸品揃いである。

小麦粉はほぼすべてが国産小麦由来。長時間発酵を行い手間ひまをかけて作られている。
小麦粉はほぼすべてが国産小麦由来。長時間発酵を行い手間ひまをかけて作られている。

この店のポリシーは「必要な手間を惜しまない」こと。そのために自家製の天然酵母を使い、前日までに生地を練り上げ、すべてのパンに対して長時間発酵を行っている。小麦粉はほぼすべてが国産小麦由来で、生地の種類ごとに使う小麦の銘柄や産地も使い分けている。こうして手間ひまをかけて作られたパンは、やはり香り方が全然違う。「小麦の香りを一番楽しめるのは、やはり、バゲットや食パンなどのシンプルなものかもしれませんね」と仲田洋一シェフは話す。

しかし、棚にある創作パンの説明を求めると、シェフの表情はちょっと嬉しそうになる。「これは水を使わずにシードルだけで練り上げたパン。ずっと考えてきて、ようやく出せたものです。これはケーキ屋さんからヒントを得て、イチゴとチョコレートを組み合わせたもの。このパンとこのパンは、見た目は似ているけれど違う生地で、食べれば違いをわかってもらえるはず」などと、会話が止まることがない。定番パンが美味しいだろうことは想像に難くないが、次々と送り出されるこれらの新作パンにこそ、シェフの「今」が詰め込まれている。

ナッツやフルーツが詰まってずっしりとした重さを感じ、食べごたえのあるパン。男性のリピーターも多い。
ナッツやフルーツが詰まってずっしりとした重さを感じ、食べごたえのあるパン。男性のリピーターも多い。

帰りがけ、シェフの奥様に「ぜひ温めて食べてみてください」と言われたので、持ち帰ったパンをオーブンでリベイクしてみた。すると表面はサックリ、中はみずみずしく、焼き立ての美味しさに。「これはすごい」と声が漏れてしまう美味しさだった。手間をかけて作られたパンだからこそ、食前のひと手間も際立つ。

また、外見からはわかりにくいが、どのパンも手に持つとずっしり重さを感じる。その理由は切れば明らかで、想像の2倍くらいの量で、ナッツやフルーツが詰まっている。買う時には高めに感じても、食べれば「むしろ安すぎでは」と心配になってしまう。小さいパンでもしっかり食べごたえがあり、男性のリピーターが多い理由もよく解る。これだけのパンが近所で味わえてしまうとは、茗荷谷の住人が羨ましい。

aux pains gourmands(オー・パン・グルマン)
所在地:東京都文京区小石川4-21-2 ハイツ小石川1F
営業時間:8:00~18:00
定休日:月・火曜日
http://www.auxpainsgourmands.jp/

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