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八王子市立由井第一小学校インタビュー

あたたかな地域に育てられて150年!駅前にある地域密着型の小学校

京王線「北野」駅から徒歩1分ほど、駅前の超一等地にある小学校が「八王子市立由井第一小学校」だ。すぐ隣には中学校もある。これほど駅前に公立の小中が並んでいる街は、探してもそう無いだろう。

ここ「由井第一小学校」の歴史は古く、2023(令和5)年で開校から150周年を迎えるという。八王子でも最も古い小学校のひとつとして知られ、地元に長く暮らしているお年寄りもほとんどがこの学校の出身。そのため、「地域の学校」という意識がとても高く、人々の学校に対するまなざしは温かいという。

今回は2023(令和5)年の4月からこの学校の校長を務められている緒方礼子先生を訪ね、学校の魅力と地域との関わり、北野の街の魅力などについてお話を聞いた。

緒方礼子校長先生
緒方礼子校長先生

――まずは、「由井第一小学校」の歴史や、現在の児童数、校舎の特徴などについてご紹介ください。

緒方先生 本校は今年度で創立150周年を迎える歴史のある学校で、明治6年に「北野学舎」というところから始まりました。当初はこの場所ではなく、近くの北野天満神社の境内に木造の校舎があったそうですが、レールで校舎を曳いて、ここに移転したきたということです。150周年を迎える学校は市内に8校ありまして、本校はその一つになります。移転の時に、ここは由井という地区なので、校名も変わったということです。

その頃の名残で、校庭の隅に今も赤レンガの門がありますけれども、これは大正7年に、大正天皇のご成婚を記念して造られたと聞いています。近くの長沼にレンガ工場があって、そのレンガを使って造ったということです。

今も残る赤レンガの門
今も残る赤レンガの門

木造校舎は1966(昭和41)年にコンクリート校舎に建て替えられまして、これが階段の両側に教室がある「バッテリー校舎」という、当時としてはモダンなデザインの校舎だったそうです。それから改築や増築を加えて今の校舎になっていますが、校庭側から見ると、半分のところで造りが変わっているのがわかると思います。右側の部分がバッテリー校舎の部分ですね。

学校の規模としては、2023(令和5)年の4月時点で児童数が454名、15学級という学校です。少子化の時代ですので、子どもたちの数も減ってきてはいますけれど、その分、校舎も校庭も広々と使えますから、子供たちによってはいい環境がある学校なのかなと思います。駅からすぐという立地条件も、本校の大きな特徴だと思います。

――たしかに、小学校がこんなに駅前にあるのは珍しいですね。

緒方先生 そうなんです。だからうちは、子どもたちが登校するときに、お父さんが送ってきてくれる割合が高いんです。「ちょっと学校に寄ってから、会社に行こうか」という感じなのだと思います。たくさんの保護者の方が毎日来ているので、(親と)ほかの子とも顔見知りになったりして、自分の子以外にも声をかけてくださるので、本当に、いろんな方から見守られている学校だなと思います。

由井第一小学校校舎
由井第一小学校校舎

――学校の教育目標と、先生方が子どもたちと接するうえで大切にしていることを教えてください。

緒方先生 本校では「すべての子どもが希望をもって、自ら学び育つ学校」ということを目指していますが、その中には、小学校6年間だけで完結できないものもありますので、小中一貫を前提に、義務教育9年間をしっかり見据えたうえで、「小学校では何ができるのか」ということを考えながら、必要なことはしっかり6年間で身に着けさせて、送り出していきたいと考えています。

また、子どもたちが希望をもって楽しく学校生活を送るためには、「いじめ」とか「不登校」の問題というのも、喫緊の課題なんですね。ですので、そこには重きを置いて対策をしています。

具体的には、「いじめ対策委員会」を毎週開いて情報共有をして、未然に手を打てるようにしていますし、学校だけでは解決できない場合には、児童相談所、子供家庭支援センター、教育センターなどとも力を合わせながら、解決に向けて取り組んでいるところです。

もちろん、学校の大きな目標はやはり「学力の定着」ですので、そのための手だてはしっかりやっています。コロナの時代になってから、ひとり1台のがブレット端末が配備されましたので、それを効果的に使いながら、どの教科でもタブレットを活用した学習を積極的に行っています。

学校だより
学校だより

――特色ある教育活動や、地域との交流・連携などについてお聞かせください。

緒方先生 特色あると言えば、今年はちょうど150周年にあたる年なので、「地域学習」を重点的に行っています。6年生は愛唱歌づくりに取り組んで、5年生はこの学校の歴史を調べて発表したり、という取り組みを今まさに進めているところですが、愛唱歌には、この学校の良さとか、地域の良さ、人の温かさといった内容を盛り込んで、歌詞を考えているところです。

地域との連携という点では、そもそも、地域の方には学校運営協議会を通して、学校運営に深く関わっていただいていまして、学校運営以外にも、今年は150周年の式典がありますので、どんな内容にするかなどを、今まさに、一緒に話し合っているところです。

それ以外でも、ここは本当に地域の方の協力がすごく多い地域でして、それが学校の一番の特色にもなっていると思います。

たとえば、「放課後子ども教室」は各学校でも行われていますけれども、これは基本的に、「放課後」なんですね。でも、うちの学校では「朝の子ども教室」を今年から始めまして、これはかなり珍しい取り組みだと思いますが、非常に好評をいただいています。

というのも、朝、保護者の方が早くに家を出てしまうと、お子さんが鍵を閉めなきゃいけないという状況があったんですね。それは好ましくないということで、地域の方が立ち上がってくださって、2023(令和5)年の5月から、始業の30分前の「朝の7時45分」から学校を開けて、見守りをしてくださっているんですね。しかも毎日です。ほかでもやっている学校はありますが、30分前から開けている学校は、恐らく本校だけだと思います。

地域の方と子どもたちを見ていても、本当に仲良しなんですよ。ハイタッチをして挨拶したり、地域の方も子どもを名前で呼んでいたり。北野には、「こういうことをしたい」と言えば、すぐに地域の方が集まってくれるという環境があるんです。それが、うちの学校の一番の強みだと思います。

ほかにも、「子ども食堂」が近隣にありまして、そこには毎朝40人以上の子どもたちが行っているそうですけれども、そこの運営をしている方も学校運営協議会のメンバーの方で、いろいろな情報を共有しています。そういった、子どもたちが安心して過ごせる「居場所」が地域にあるということは、本当に素晴らしいことだなと思います。

校長室に飾られた校歌
校長室に飾られた校歌

――地域の方にこの学校出身の方が多いから、愛着を持ってくださっているのでしょうね。

緒方先生 そうだと思います。お話を聞いていても、「私もこの学校の出身です」とか、「私たちの頃はこうだったよ」という方がすごく多いです。聞いた話では、北野は大人になってから戻ってくる人の率、「リターン率」がすごく高い地域だと聴いたことがあります。

――学校行事や課外活動で、ユニークなものなどがあれば教えてください。

緒方先生 ひとつ、子どもたちが楽しみにしているものに「ハッピーフェスティバル」というイベントがあって、これは、3年生以上がお店を出して、「お店やさんごっこ」のように、子どもたちが自分で企画をして、楽しく遊ぶという遊びの会です。

あと、学校行事ではないんですが、夏休み中に「ワイルドキャンプ」という行事を学校内でやっていまして、これは「おやじの会」が主催になりますが、「デイキャンプ」ということで学校に集まって、みんなでカレーを食べたり、キャンプファイヤーをやったり、水鉄砲で遊んだりしています。

「八王子市立由井第一小学校」教育目標
「八王子市立由井第一小学校」教育目標

――都内でも珍しい「日本語学級」がある小学校ということですが、どのような学級なのでしょうか?

緒方先生 日本語学級は都全体を見ても27校、八王子市では2校にしか無い学級なのですが、なぜ本校にあるかと言えば、やはり、外国人の方が多い地区だという事情があるんですね。すぐそこにニッスイの工場があって、外国人の方も多く働いていらっしゃるんです。

日本語学級には本校の子どもが19人、他校から通ってくる子も合わせると全部で現在52名の子どもたちが通っていまして、国籍は14か国、いちばん多いのがフィリピン、次に多いのが中国のお子さんということです。

ここに通う子どもたちも、普段は通常学級にいて、その中から取り出して、1日1時間から、子どもによっては4時間程度、そこで勉強をして、また通常学級に戻っていきます。

――普通のクラスに外国籍の子たちもいると、多様性の理解が深まりそうですね。

緒方先生 それはあるでしょうね。でも、ここの子たちってもともと、そういう環境に暮らしてきているので、あんまり「外国人」だからというような見方はしないんですね。どんな子たちでも普通に受け入れて、一緒に遊ぼうとしています。

勉強がわからなければフォローするような姿もありますし、遊びたいんだったら自分たちも発しなきゃということで、お互いの言葉を遊びを通して覚えていくような、すごく自然なつながりが見られます。

昔の由井第一小学校
昔の由井第一小学校

――歴史や文化など、地域の特色を生かした教育活動があれば教えてください。

緒方先生 八王子はなんといっても自然が多いし、歴史もありますし、教育資源という面ではすごく恵まれている地だと思いますが、まずはやっぱり、高尾山ですね。市内の小学校はどこも必ず行っていますけれど、環境問題も学べますし、自然も見られますし、世界的にも有名な観光地ですし、高尾山に行って学べるということは、大きな意義があると思います。

ほかにも、「ニッスイ」さんが小学校のすぐ近くですから、コロナ前には工場見学に行かせていただいて、魚肉ソーセージをお土産にいっぱいもらって帰ってきていたようです。また今後は復活していくと思います。

3年生の「街たんけん」という単元でも、ここは駅前ですから、お店が近くにたくさんあって、いろんな業種があるので、気軽に出かけられて、いろんなお話を聞けて、そういう点でも素晴らしいと思っています。

あとは、地域にはまだ畑や田んぼも残っていますから、地域にいる本物の農家の方が、田植えを指揮してくださって、校庭にほんの小さな田んぼがあるんですが、すごくいいお米が収穫できたり、貴重な農業体験をできたりしています。

地域と連携した校外活動
地域と連携した校外活動

――小中一貫の取り組みについて、どのようなことをされていますか?

緒方先生 本校、打越小、長沼小の3校が打越中の中学校区ですが、この3校で今年、「学力定着プロジェクトチーム」というものを新たに作りまして、地域全体の学力向上を図ろうとしているところです。お互いの学校の学力の状況を持ち寄って、課題を精査して、良いところをさらに伸ばしていこう、という取り組みになっていくと思います。

既存の連携については、たとえば、中学生が小学校の行事にお手伝いに来てくれたり、中学生が来て中学校の話をしてくれたり、秋の音楽祭の時には、打越中に集まって発表をしあったり、というような連携はしてきています。

教員側としても、各学期に1回お互いの学校に見学に行って、授業の様子などを見させていただいたり、いろいろな形で交流や情報共有をしています。

――今後の学校のあり方について、どのようにお考えですか?

緒方先生 やはり、子どもたちは「地域の担い手」であり、私たちは転勤がありますけれど、子どもたちは、ある程度の年代までこの地域に住むと思いますし、将来戻ってくることも多いと思います。ですから、「あなたたちがこの地域を良くする一員だよ」ということを自覚させながら、もっともっと地域を好きになって、地域の「より良い担い手」として育ってほしいですね。

廊下
廊下

――子育てをしながら暮らす環境として、北野エリアの魅力は何でしょうか?

緒方先生 北野は駅の周りだけでほとんどが揃いますし、近くに病院もありますし、そこそこ自然もあり、電車も便利で、すごく魅力的な街だと思います。

お子さんがいる家庭にとっては、中学校と小学校は駅のすぐ近くにあるし、進学先の学校も選択肢が豊富な中から選べると思いますし、八王子や高尾はもちろん、隣の多摩市方面にもすぐ出られて、いろいろな街を便利に活用できると思いますし、いろんなことのバランスがとれた場所だと思います。

北野はリターン率が高い場所だと聞いて、最初は意外に思ったんですが、知れば知るほど、「なるほど」と思いますね。

あとはやっぱり、「地域のあたたかさ」が一番の魅力だと思います。子どもをすごく大事にしている地域で、地域の行事とかお祭り、子ども会、子ども食堂などの様子を見聞きしていても、「大人が本気になって子どもたちを育てようとしている」というのが伝わってきます。

――最後に、これから北野に住みたいという方に向けてメッセージをお願いします!

緒方先生 何度も繰り返してしまいますが、「地域のあたたかさ」が北野の一番の魅力だと思っています。自然もいっぱいあって、遊ぶところが多くて、大人も便利に暮らせる街ですが、何より「人」が魅力です。

本校にお子さんを通わせていただければ、「学校ってほんとうに地域の一部なんだな」と体感していただけると思いますので、ぜひ、北野にお住まいになってください。

「八王子市立由井第一小学校」
「八王子市立由井第一小学校」

八王子市立由井第一小学校

校長 緒方礼子先生
所在地:八王子市打越町348-1
電話番号:042-642-4201
URL:https://hachioji-school.ed.jp/yui1e/
※この情報は2023(令和5)年8月時点のものです。

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