地域の思いとビジョンを共有し、再開発地区と商店街との融合をはかる「まちづくり大山みらい株式会社」

都内でも有数の活気ある商店街があることで知られる東武東上線「大山(おおやま)」駅。「池袋」から3駅6分のアクセスの利便性もさることながら、人情味あふれる商店街や「大山」駅を中心に進められている大規模な再開発にいま注目が集まっている。 再開発によって大山駅周辺地区は今後どのようなまちになるのか、大山地区のまちづくりに関する事業を行う「まちづくり大山みらい株式会社」を訪ね、現在の取り組みや今後についてお話を伺った。

まちづくり大山みらい株式会社 エリアプロジェクトマネージャー  熊谷慎一さん
まちづくり大山みらい株式会社 エリアプロジェクトマネージャー 熊谷慎一さん

大山のまちづくりに関する会社として設立

まず「まちづくり大山みらい株式会社」の概要について教えてください。

熊谷さん:「まちづくり大山みらい株式会社」は2015(平成27)年2月に設立されました。ハッピーロード大山商店街振興組合の100%出資で、再開発が進む大山エリアのまちづくりに関する事業を行うことを目的に設立されました。

昨今、エリアマネジメントという言葉をよく耳にするようになってきましたが、私たちは大山エリアが今よりもっと住みやすいまちになるように「エリアマネジメント事業」や「地域貢献事業」に取り組んでいます。

「ハッピーロード大山商店街」
「ハッピーロード大山商店街」

事業の概要や特徴についてお聞かせください。

熊谷さん:中核事業となる「エリアマネジメント事業」については、再開発が完成する時期から本格稼働となるため、本日は現在進行中の「地域貢献事業」を中心にお話しさせていただきます。 ひとつは商店街のアーケードに横断幕を設置する広告事業です。

アーケード内に10カ所ある横断幕をはじめ、幅450mm x 高さ1500mmのフラッグ広告、また「大山」駅前でご覧になったかと思いますがサイネージ広告も当社が広告代理店として設置しています。この広告ひとつをとってみても商店街に賑わいもたらしエリアの価値を高めるためのエリアマネジメント広告として捉え、その収益の一部は地域に再投資しています。

商店街の広告もエリアの価値を高めるための要素の1つ
商店街の広告もエリアの価値を高めるための要素の1つ

もうひとつ大きな取り組みは「⼤⼭ハッピーでんき」と名付けられた電気事業です。ENEOSでんきの代理店と連携することによって、地域の方に、よりお得な電気料金の提案をするとともに、そこで得た収益を地域に還元するというビジネスモデルを作りました。他にもNTTドコモと連携して、ナショナルチェーンのお店に限らず個人のお店でもdポイントを使えるようにしました。他の商店街よりもdポイントを使えるお店は多いんじゃないかと思います。

商店街の価値を高める、個性的なお店やサービスを提案

「かめやキッチン」の運営にも関わっているとお聞きました。

熊谷さん:テナントリーシング事業として、株式会社ジェクトワンと協働し「かめやキッチン」を運営しています。再開発が進んでいる「大山町クロスポイント」のあたりにありますが、もともと約80年続く履物屋さんがあった場所です。廃業を検討している際に店主の方から声をかけていただいたのがきっかけとなっています。

「かめやキッチン」
「かめやキッチン」

「かめやキッチン」はいわゆるシェアキッチンで、パンやお菓子の製造販売、飲食店など個性的なお店が日替りで出店しています。「かめやキッチン」の2軒隣でも同様にテナントリーシングを進めているところがあります。もともと布団屋さんがあった場所で、1階は飲食店、2階はコワーキングスペースとして活用できるよう準備を進めています。

大山エリアのまちづくりに関わる会社として大切にされていることは?

熊谷さん:全国どの商店街でも同じような課題を抱えていると思いますが、経営者の高齢化に伴い事業の継続が難しくなると空き店舗としてシャッターを下ろすか、チェーン店が出店するかという流れになり、結果としてチェーン店が増えると商店街としての個性が失われて行ってしまいます。

そこで私たちとしては商店街の価値を高めるような個性的でなおかつ面白いお店やサービスを提案していきたいと考えています。その具体的な取り組みのひとつがコワーキングスペースで、再開発によって新しく住み始める人たちと、古くからこの地域に住む人たちが出会い、融合する新しい拠点になると思っています。

2つの商店街から誕生した「ハッピーロード大山商店街振興組合」

大山駅周辺地区のまちづくりの歴史やこれまでの取り組みについて教えてください。

熊谷さん:ハッピーロード大山商店街のホームページには商店街の歴史やまちづくりに関することが詳しく掲載されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。おおまかにご説明させていただくと、「池袋サンシャインシティ」の開業(1978年)に危機感を抱いた「大山銀座商店街振興組合」と「協同組合大山銀座美観街」の2つの商店街が合併したのが1977(昭和52)年3月のこと。翌1978(昭和53)年4月には長さ560mの近代的なアーケードが設置されて都内でも有数の商店街として生まれ変わりました。

都内でも有数の規模の商店街となった
都内でも有数の規模の商店街となった

当時の調査によるとアーケードが完成した翌年は2年前と比べて49%も通行量が増加し、イトーヨーカドー前の通行量は約38,000人もいたそうです。ちなみに「ハッピーロード大山」という名前は一般の公募によって名付けられたもので、その愛称を採用した「ハッピーロード大山商店街振興組合」が1983年(昭和58年)7月に発足、現在に至っています。

その後、2014(平成26)年3月に策定された「大山まちづくり総合計画」によってハッピーロードが分断されることが明らかにされました。鉄道による市街地の分断や交通結節機能の弱さ、都市災害に対する脆弱性など様々な要因がまちのにぎわいと商店街の活性化の妨げになっていることが課題として挙げられ、商店街としてももっと良い商店街、より良いまちにしようと現在のまちづくりが動き出すきっかけになりました。

大規模な再開発が進むエリアですが、今後、どのようなまちになるとお考えでしょうか。

熊谷さん:もともと商店街があったところで進められている再開発は、地域と分断されてしまっているという話をよく聞きます。とは言え反対して再開発が止まるわけではありませんし、新しい再開発地区と商店街とを融合させていかなくてはいけないというのが私たちにとっての至上命題だと思っています。

再開発地区と商店街との融合がキーワードだ
再開発地区と商店街との融合がキーワードだ

「かめやキッチン」とコワーキングスペースの準備を進めている場所は、まさに商店街と再開発地区とがつながるところで、私はこのまちにとって非常に重要な場所だと感じています。新しい人たちもこれまで商店街とともに生きて来た人たちも、そこでうまく繋げていかなくちゃいけないと。そういう意味で出会い、融合する新しい拠点がとても大事なのかなと思っています。

池袋から6分の位置で、親しみやすい稀有なまち

大山エリアの住み良いと感じる点についてお聞かせください。

熊谷さん:生活に必要なものは地元でほぼ満たすことができるというのはすごく良いところかなと思います。買い物もそうですし、近年は飲食店や生活に関する様々なサービスも増えて来たので、住むという点では困ることは無いと思います。それでも足りない部分は「池袋」駅まで電車で6分なので、大都市に近くなおかつこれだけ親しみやすい雰囲気が残っているまちというのは貴重だと思います。

大山エリアで好きなスポットや、おすすめのスポットなどがあれば教えてください。

熊谷さん:ひとつは「全国ふるさとふれあいショップ とれたて村」というアンテナショップがあります。2005(平成17)年10月に開設して今年で18年目を迎えます。2020(令和2)年8月に移転、現在の場所でリニューアルオープンしました。全国各地の市町村と直接契約を結び、地域のオリジナル商品をはじめ、新鮮な野菜や果物、名物のお菓子などを扱っています。

おすすめスポットの1つ「全国ふれあいショップ とれたて村」
おすすめスポットの1つ「全国ふれあいショップ とれたて村」

私たちが運営する「かめやキッチン」も、個性的なお店が日替りで出店するのでおすすめです。出店のスケジュールはお店のホームページにもありますので、ぜひご覧ください。また、「ハッピーロード大山商店街」は年間を通して数多くメディアの取材がありまして、1936(昭和11)年創業の「新井精肉店」や、お茶の全国大会で優秀な成績を修めた「大山園」などテレビでも紹介されるような魅力的なお店がありますので、ぜひ商店街を散策してみてください。

最後に、これからこのエリアに住まわれる方々に向けて、メッセージをお願い致します。

熊谷さん:繰り返しになりますが、「池袋」駅まで電車で6分という距離にありながら下町っぽい親しみやすさもあるまちで、とても魅力的だと思っています。大山駅西地区まちづくり委員会が作成する「30年VISION of OHYAMA」というものがありますが、「多種多様な人の集う『緑・賑わい・防災』のまち〜みんなの居場所ハッピー大山(仮)」をテーマにまちづくりを進めています。

都心に近い位置でありながら、親しみやすさをもつ「大山」駅前の様子
都心に近い位置でありながら、親しみやすさをもつ「大山」駅前の様子

そこには「安心安全、災害に強く、バリアフリー、人に優しい」や「子育て世代も高齢者もいる、居心地の良いコミュニティ」、「みんなの居場所、ウォーカブル(歩きたくなる)まち」など、地域の皆さんが自分たちの声で、自分たちで考えて、自分たちで作った大山の未来のまちのビジョンが描かれています。行政主導でも無く、開発者主導でも無い大山地区ならではのまちづくりが今後進められていくものと思います。

私たち「まちづくり大山みらい株式会社」としてはこれまで地域の皆さまが積み上げてきた思いやビジョンをしっかりと理解しつつ、新しいまちと融合するために必要なもの・ことを提案していくのが使命かなと考えています。これからも皆さんと一緒に大山のまちづくりを進めて行ければ幸いです。

 

まちづくり大山みらい株式会社

エリアプロジェクトマネージャー熊谷慎一さん
株式会社全国商店街支援センター(支援事業担当マネージャー)を退職後、全国のまちづくりに関する事業に従事。

所在地 :東京都板橋区大山町49-1
電話番号:03-4283-0346
URL:https://www.ohyama-mirai.com/company.html
※この情報は2023(令和5)年10月時点のものです。

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