変わりゆく目黒の街で、変わらぬとんかつを提供する老舗「とんき 目黒店」の魅力
「とんかつが好き」という人であれば、その名を知らぬ人は無い名店、「とんかつ とんき 目黒店」。全国各地に「とんかつ とんき」という屋号を掲げる店は数々存在するが、それらはいずれも、この目黒本店から暖簾を分けられた店だ。目黒本店はいわば「とんき」の総本山であり、全国のとんかつファンからは、とんかつの“聖地”と目されて久しい。
店があるのは目黒駅の西口を出てすぐ、権之助坂を下り始めた辺りの左手側だ。威風堂々たる佇まいを見せるこの本店店舗は、ここに建って50年余り。現在の目黒駅西口付近にあったという旧店舗の時代を含めれば、じつに80年近くもの間、目黒の人々に愛され続けている。
今回はこちらの3代目、創業店主のお孫さんにあたるという吉原出日(よしはら・いずひ)さんを訪ね、「とんき 目黒店」の特徴と、目黒の地の変遷、地域の魅力についてお話を聞いた。
――「とんかつ とんき 目黒店」の歴史を教えてください。
祖父が目黒で創業したのは1939(昭和14)年と聞いていますが、実は前身にあたる「とんき」が五反田にありまして、祖父はその五反田の「とんき」で修行していたそうで、やがて暖簾をいただいて、目黒に自分の店を持ちました。「なぜ目黒に出したか」ということは定かではないんですが、慣れ親しんだ五反田から遠く離れるよりも、近くでやろうと思ったのかもしれません。
目黒の最初のお店は、今みたいなしっかりした建物ではなくて、立ち食い蕎麦のお店のように間口がぜんぶ開いている、本当に小さなお店だったようです。その後に、いまの「目黒」駅西口のキヨスクがある辺りに、最初の(しっかりとした)店舗を構えたんですが、「目黒」駅を拡張する時に立ち退きにあいまして、いまの場所に移転してきました。移転してここに移ってきたのが1967(昭和42)年のことですから、ここは今年で51年目の店舗になりますね。
――40年この街に暮らして、目黒の街の変化についてどのようにお感じですか?
この40年だけ見ても、かなり変わりましたね。自分が小さいころには、当然ビルはこんなに無かったですし、食べ物屋さんもほとんど無いような街でした。今は権之助坂の左右にいろんな飲食店が並んでいますが、ここも昔は、魚屋さんとか八百屋さんいった店がほとんどでしたから、今のような姿は想像もしていなかったですね。
まったく変わらずにやっているのは、すぐそばのお寺さん(大圓寺)とか、「聖アンセルモ教会」とか、そういうところぐらいです。「ホテル雅叙園東京(旧:目黒雅叙園)」は昔からありましたが、建物は全部新しくなりましたし、ここ十数年で一気にビルやタワーマンションも建ちました。風景はすっかり変わりましたね。それから、何年か前からは外国人の方が多く住むようになったな、と感じています。
――昔の目黒に関して、思い出のエピソードがあれば教えてください。
僕らが子どもの頃は、近所でかけっこをして遊んだり、人の家の塀によじ登ってみたり、悪いこともしながら、街の中で遊んでいましたね。走り回れる広場がたくさんありました。懐かしいと言えば、目蒲線でしょうか。昔は目黒と蒲田の間に東急目蒲線というのが通っていて、いまの「アトレ目黒」の辺りに、目蒲線の「目黒」駅がありました。本当に昔ながらの雰囲気の駅で、終点の駅だったこともあり大きくて、ランドマークになっていました。駅前には大きな歩道橋があって、そこの風景はよく覚えていますね。目蒲線は2、3両くらいの小さな電車だったので、私も大好きでした。
近年は、電車の乗り入れ数が増えて便利になり、人の出入りが増えた分。店のお客さんも増えました。タワーマンションに住んでいる方や、外国人のお客さんにも常連さんが増えて、おかげさまで、これからも何年も続けられるかな、ということは感じでいます。
――「とんき」ならではのこだわりについて教えてください。
とんかつは、粉と卵を3回ずつ付けて、最後に衣を付けて揚げている点が一番の特徴かと思います。さらにそのかつを、低温の100%ラードの油で20分近く揚げて、中までゆっくりと火を通して、召し上がっていただくというとんかつです。切り方もちょっと変わっていまして、一度縦に包丁を入れて、それからスライスしていくという切り方なのですが、これは小さな方から、おじいちゃまおばあちゃままで食べやすいように、ということもありますし、何杯もごはんを食べていただけるように、という思いも込めています。豚汁とご飯はお替わり自由ですから、ゆっくり楽しんでいただきたいですね。
――1階のカウンター席と、そこから見える厨房がとてもきれいですね。
「食べ物屋が汚くては、美味しいものは食べられないだろう」という考え方でずっとやっていますから、とにかく掃除はキッチリ、毎日やっています。お客様から見えるところはもちろんですが、見えないところもしっかり磨くようにしています。これをやめたら「とんき」じゃないと思っていますので、そこはこだわっていますね。
うちは1階席が人気なので、どうしてもお並びいただくことが多くなってしまうのですが、並ばずに食べたい、ゆっくり過ごしたいという方には、予約制の2階席もご用意していますので、ご利用いただければと思います。
――お店にはどんなお客さんが多く来られていますか?
常連さんが多いので、3代、4代と続けて来てくださるような方が多いですね。おじいちゃんおばあちゃんから、1歳くらいの小さなお子さんまで、いろいろな方に愛されている店だな、ということは日々感じています。そこにまた、タワーマンションの方や、新しい外国のお客様も増えていますので、客層という意味では本当に幅広いです。近隣にお勤めの芸能関係の方や政治家の方もいらっしゃいますが、「サインをください」みたいなことはまず無いんですね。「大人」のお客様が多いですよ、うちは。これも目黒の土地柄なのかな、と思います。
――目黒の街の魅力についてお聞かせください。
40年ずっと住んでいても、やっぱり住みやすい、いい街だなと思いますね。治安もいいですし、どこに行くにも便利です。お客様の品がとてもいいというところもですが、落ち着いた、本当の意味での「大人」の方々が住んでいる街ですね。そこが目黒の魅力にもなっているのかな、と思います。
目黒はとっても坂が多くて、歩くと大変な街ですけれども、権之助坂をのぼった先にはおいしいとんかつ屋さんがありますから、どうぞ「とんき」をよろしくお願いいたします!
今回お話を聞いた人:とんかつ とんき 目黒店 吉原出日(よしはら・いずひ)さん
変わりゆく目黒の街で、変わらぬとんかつを提供する老舗「とんき 目黒店」の魅力
所在地:東京都目黒区下目黒1-1-2
電話番号:03-3491-9928
営業時間 16:00~22:45
定休日 火曜、第3月曜
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