荻窪(上荻)エリアガイドKAMIOGI areaguide

スペシャルインタビュー

「からだ力」の育成をはじめ学校独自の特色ある取り組みに注目が集まる「杉並区立桃井第一小学校」

1875(明治8)年の開校より148周年を迎える「杉並区立桃井第一小学校」。区内でも歴史のある学校のひとつで、特色ある教育活動が数多く行われている。15年以上続く「からだ力(りょく)」の育成もそのひとつで、運動能力だけではなく食事や生活習慣も含めた総合的な力の育成に取り組んでいるそうだ。

今回は2020(令和2)年度に校長として着任した高橋浩平先生を訪ね、「杉並区立桃井第一小学校」の概要や歴史、特色ある取り組みについてお話を伺った。

インタビューにご協力いただいた、高橋浩平校長先生
インタビューにご協力いただいた、高橋浩平校長先生

1875(明治8)年の開校より148周年を迎える伝統のある学校

――貴校の歴史や概要、教育方針などについてお聞かせください。

高橋先生:杉並区立桃井第一小学校」は創立148周年(明治8年開校)を迎える、伝統のある学校です。2023(令和5)年12月現在の児童数は821名、各学年4〜5クラス編成の全27学級で運営しています。区内でも児童数の多い大規模校のひとつで、ここ数年の推移を見ても増加傾向にあります。

東京都杉並区・「杉並区立桃井第一小学校」
東京都杉並区・「杉並区立桃井第一小学校」

高橋先生:実は2010(平成22)年から2014(平成26)年度まで、本校の副校長としてお世話になっていました。こうした背景もあり、本校が大切にしてきた特色ある取り組みはその火を絶やすことなく守り続けて来られたかなと思います。

本校はもともと学年をまたいだ縦割りの活動や、「からだ力(りょく)」の育成に重点を置いた取り組みが特色としてあったため、学校経営を進めるにあたって「学力向上」「からだ力向上」「国語授業の充実」「インクルーシブ教育」の4つを柱にすることにしました。

学校経営の4つの柱
学校経営の4つの柱

「学力向上」「からだ力向上」「国語授業の充実」「インクルーシブ教育」の4つの柱

――学校経営の4つの柱についてそれぞれ簡単に教えていただけますでしょうか?

高橋先生:まず「学力向上」についてはコロナ禍で配置が進んだ1人1台のタブレットを活用した学習を進めています。今では授業中にタブレットを使うのは当たり前の光景で、調べ学習をはじめ、教室内でインターネットを使って学習支援を行うためのプログラムである「ロイロノート」を使用し意見を集約してまとめるとか、タブレットで写真を撮って学習につなげるなど授業のスタイルは大きく変わりました。

タブレットは基本的に1、2年生は学校保管で、3年生以上は自宅へ持ち帰れるようにしています。保護者との連絡も「まなびポケット」というクラウドのサービスを使っていますし、宿題もロイロノートを使ってやりとりしている教員もいます。

また、本校独自の取り組みとしては、学校図書館活用実践校の研究指定校として高学年を中心にデータベースを使った資料活用に取り組んでいるところです。

図書室の様子
図書室の様子

取り組みを始めてから15年目を迎える「からだ力向上」

――次に「からだ力向上」についても教えていただけますでしょうか?

高橋先生:「からだ力向上」は取り組みを始めてから15年目を迎える本校の特色ある教育活動のひとつです。体力ではなくあえて「からだ力」としているのは、運動能力だけではなく食事や生活習慣も含めた総合的な力の育成に重点を置いているためです。

具体的な取り組みとしては、火曜日と木曜日に「仲良しタイム」というのを設けて校庭に集まってみんなで身体を動かすようにしています。5分間長縄を飛んだり、秋になるとマラソンをしたりということを長年継続して行っています。

広々とした校庭では、「からだ力」を鍛えるためのプログラムがよく行われている
広々とした校庭では、「からだ力」を鍛えるためのプログラムがよく行われている

高橋先生:コロナ前は全校児童が校庭に集まって一斉に取り組んでいたのですが、感染拡大とともに自粛せざるを得ない状況になってしまいました。それでも子どもたちの健康を考えるとある程度の運動量は確保したい、でも密にはできないという状況が続き工夫を重ねてきました。

臨時休校のときは動画を配信して簡単な運動や桃一体操ができるような機会をつくりましたし、「仲良しタイム」は2学年ずつ、休み時間も3学年ずつローテーションしながら校庭で遊ぶようにしました。そうしたら一人ひとりの遊ぶスペースが広がって、結果的に子どもたちのケガが大幅に減ったということがわかりました。そこですべてをコロナ前の状態に戻すのではなく、時代や状況に応じてやり方を変えながら子どもたちにとっての最善の方法を検討しているところです。

コロナ禍で子どもたちの体力の低下が問題視されていますので、「運動、食、生活習慣」を意識した「からだ力」の育成にきちんと取り組みたいと考えています。

「からだ力」の研究リーフレット
「からだ力」の研究リーフレット

「できないことをほったらかしにしない」という姿勢を大切にした教育活動

――続いて「国語授業の充実」、「インクルーシブ教育」についてもお聞かせください。

高橋先生:「国語授業の充実」については校内研究を進めておりまして今年で3年目を迎えます。テーマは「言葉による見方・考え方を働かせ、自分の考え方を表現できる児童の育成」です。文学的な作品を通して国語の読解力を身につけさせようと考えています。今年度の研究は、低学年は「スイミー」、中学年は「ごんぎつね」、高学年は「たずねびと」についてそれぞれ授業研究を進め、深めることができました。

「国語授業の充実」の校内研究の様子(提供:杉並区立桃井第一小学校)
「国語授業の充実」の校内研究の様子(提供:杉並区立桃井第一小学校)

高橋先生:そして4つ目の「インクルーシブ教育」ですが、一般的には障害のある子もない子も共に学ぶ教育の意味合いが強いんですけど、本校では障害のあるなしだけではなくて、学習面に課題がある子もいれば生活面で課題を抱えている子もいて、支援を必要としている子はみんなインクルーシブ教育の対象だよという考え方でやっています。「できないことをほったらかしにしない」という点が重要ですね。

また「井荻中学校」、「四宮小学校」と3校合同で取り組む「三校合同インクルーシブプロジェクト」という取り組みもあり、小中連携で研修を進めています。

学校運営に協力的な保護者や地域の存在。「桃一まつり」も4年ぶりに開催。

――保護者や地域の方との関わり・交流などはいかがでしょうか?

高橋先生:本校は長い歴史のある学校なので保護者や地域の方はみなさん学校運営にとても協力的です。また2019(平成31)年度にコミュニティ・スクールへと移行したことで、月1回の学校運営協議会を実施しています。また、年2回発行の学校運営協議会だよりを通して、保護者や地域の方へ学校の活動についてお知らせしています。

学校運営協議会の様子(提供:杉並区立桃井第一小学校)
学校運営協議会の様子(提供:杉並区立桃井第一小学校)

高橋先生:「からだ力」の育成で長年お世話になっている国士舘大学の細越淳二教授が委員長を務めてくださっているほか、元校長の内田裕司先生、元PTA会長さん、近隣にある高校の校長先生や幼稚園の園長先生も委員として加わってくださっていることもあり、様々な取り組みが円滑に進められています。

例えば幼保小連携について、コロナ禍は直接的な交流こそできませんでしたが、ビデオレターを交換するなどの取り組みは継続しました。今年になってようやくいろんな活動を再開させることができるようになってきたので、子どもたちの交流を大事にしていきたいなと思っています。

地域との結びつきという点では、本校を会場にして毎年7月に開催されていた「桃一まつり」というのがあります。コロナ前は町会や商店街の方にもご協力をいただいて、子どもたちの教育活動の一環として一緒に取り組んでいたのですが、コロナ禍で3年間実施できなかったことや教員の働き方改革、猛暑による影響などさまざまな要因が加わって、今年は運営方針を大きく変えて4年ぶり10月開催となりました。

開催されていた「桃一まつり」の様子(提供:杉並区立桃井第一小学校)
開催されていた「桃一まつり」の様子(提供:杉並区立桃井第一小学校)

高橋先生:子どもたちにとっては授業ではなく自由参加になったため、どのくらい人数が集まるか予想もつかなかったのですが、出店の食べ物が早々に売り切れてしまうなど、多くの子どもたちが参加したようです。また児童館を利用する子どもたちがダンスを披露したり、お囃子クラブの子どもたちが「井草ばやし」を披露したりと、地域と子どもたちがつながる活動は今も継続されています。

消防署や警察署、郵便局や病院、公園など生活に必要な機能がそろうまち

――学校周辺エリア(主に通学区やその生活圏)について、地域の魅力をお聞かせください。

高橋先生:本校の近隣には消防署や警察署をはじめ、郵便局や病院、「桃井原っぱ公園」という防災公園もあり、生活に必要な機能がそろっている地域だなと思います。「桃井原っぱ公園」の近くには「荻窪病院」という地域の拠点病院があり、コロナ禍で大変な時期に医療従事者の方へ応援メッセージを送ろうと児童全員で手紙を書いて持って行ったこともありました。

「桃井原っぱ公園」
「桃井原っぱ公園」

高橋先生:近年はマンションの建設も進み、子育てをするご家族も多く移り住んでいらっしゃると思います。生活しやすく自然に恵まれた暮らしやすい環境だと思います。

東京都杉並区・「杉並区立桃井第一小学校」
東京都杉並区・「杉並区立桃井第一小学校」

杉並区立桃井第一小学校

校長 高橋浩平先生
所在地:東京都杉並区桃井2-6-1
電話番号:03-3390-3178
URL:https://www.suginami-school.ed.jp/momo1shou/
※この情報は2023(令和5)年12月時点のものです。

\ 私が紹介しました/

admin