猿田彦珈琲 調布焙煎ホールインタビュー

地域に根ざして新たな進化を続ける「猿田彦珈琲 調布焙煎ホール」

「たった一杯で、幸せになるコーヒー屋」をコンセプトに、品質の高いスペシャルティコーヒーを提供する「猿田彦珈琲」。都内を中心に国内外で23店舗を展開するファンの多いお店で、焙煎から抽出までこだわり抜いた上質な一杯に出会えるだろう。今回は2017年にオープンした「調布焙煎ホール」を訪ね、大塚朝之代表に「猿田彦珈琲」のこだわりや特色、生まれ育った調布の町の魅力についてもお話を伺った。

お話を伺った「猿田彦珈琲」代表の大塚さん
お話を伺った「猿田彦珈琲」代表の大塚さん

創業10年で国内外に23店舗を展開するスペシャルティ・コーヒーの専門店

――猿田彦珈琲の沿革や概要、コンセプトについてお聞かせください。

大塚さん:会社の沿革はHP(https://sarutahiko.co/about/)にもありますが、平成23(2011)年にオープンした恵比寿のお店がはじまりです。店名の由来としては、三重県伊勢市の猿田彦神社に祀られている「猿田彦大神」からお名前を拝借いたしました。最初の頃は珈琲をドリップしたり、エスプレッソを淹れたり、カフェラテを作ったり。抽出と接客がメインで焙煎までは手がけていなかったのですが、しばらくして自分たちでも焙煎をするようになり、平成27年(2015)年に焙煎所を備えた「アトリエ仙川」をオープンしました。

その後、4台の焙煎機を完備した「調布焙煎ホール」をオープンしたのは平成29(2017)年のことで、現在は都内を中心に国内17店鋪、台湾にも6店舗を展開しています。 個人のお店としてスタートしてから10年経ちますが、「たった一杯で、幸せになるコーヒー屋」になりたいという当時の思いは今でも全く変わることはありません。

広々とした店内
広々とした店内

しかしながら、4人でやっていた頃と300人の従業員がいる今とでは、現実的に変わらなきゃいけないこともあります。根本にある哲学的な部分については何も変わらないんですけど、いざそれをやりきるためには、精神的な気持ちや原点といったところは変わらないものの、オペレーションなどの仕組みについては変えていかなきゃいけないと思い、そのハイブリッドにした集団の方法論というのを模索しているところです。

焙煎機をそなえたロースタリー
焙煎機をそなえたロースタリー

焙煎スペースをガラス張りにした生態展示を特徴にした「調布焙煎ホール」

――「調布焙煎ホール」をオープンした経緯やこだわりなどについてお聞かせください。

大塚さん:もともと創業した時は今のような事業規模にしようと思ってはじめたわけではなかったのですが、そうなった時、そうならなかった時など様々なパターンを考えながら働いてきました。どんな状況になってもその場その場で対応できるように、想定外が起きても慌てることのないようできる限り考え、いつも気持ちの余裕を持って仕事をして来ました。

もともと役者をやっていたのもありますが、いわゆるアドリブ劇に近い、良い意味でその場その場のハプニングを楽しむような感覚ですね。

「調布焙煎ホール」をオープンするきっかけになったのは、京王電鉄さんから「珈琲店をつくりたい」と声をかけていただいたのがはじまりです。ちょうどその頃、店舗数が増えたことによって仙川のキャパシティが超えるなと感じていた時期でもあり、「猿田彦珈琲劇場〜第1章」の集大成とも言うべき焙煎所を併設した大型店舗の提案をしました。

ガラス越しに焙煎スペースが見える
ガラス越しに焙煎スペースが見える

普段は目にすることのない焙煎スペースをガラス張りにして、焙煎工程をすべてご覧いただけるようにした“生態展示”を設計の基本としたのもこのお店の特徴です。

ただカッコ良いというだけじゃ無くて、居心地の良さとか、カフェの本質ってなんだろうと言った感覚的な部分も含めて意識したお店づくりにしています。 カフェスペースからは焙煎機の様子も見えますし、店内中央にある厨房では一生懸命コーヒーを淹れる従業員の姿を見ることもできます。一杯のコーヒーができるまでの全ての工程をライブ感覚でお楽しみいただけるようになっているのが「調布焙煎ホール」です。

店内の様子
店内の様子

老若男女あらゆる層のお客様にとって訪れやすいお店

――店内のお客様の様子はいかがですか?

大塚さん:実際に来ていただくとよくわかるのですが、こういうコンセプトのカフェにしては若い方からご年配の方まで老若男女あらゆる層のお客様がいらっしゃっていると思います。週末にはお子さまを連れたご家族もいらっしゃいますし、僕がびっくりしたのは平日の夕方くらいになると高校生の姿も見かけるようになるんです。

他のカフェと比べても決して安くは無いですし、クーポンで値引きをするっていうこともしていないので、当初想定していたよりも幅広い層の方に使っていただいているのを感じています。

外からの光も入る落ち着いた空間
外からの光も入る落ち着いた空間

実はこういうお店をやっていると、若い世代の決まった層の方が多く集まりがちなのですが、意外なことにここのお店ではそういったことがないので、これはこれで正解なんじゃないかと思い始めているところです。

隔たりを作らないというか、ある特定の層に受けている方がカッコ良いのかもしれませんが、僕にとっては地元の人たちが何度もリピートしたくなるお店づくりというのを考えて取り組んでいます。

地域の人たちに応援されるようなコーヒー屋さんを目指して

――今後どのようなお店でありたいとお考えですか?また挑戦したいことなどありましたら教えてください。

大塚さん:高価格帯のコーヒーで言うと、個人店のところでうまくいっているコーヒー屋さんはあるんですけど、チェーン店化してるところではほとんどうまくいっていないように感じています。

僕たちが提供するスペシャルティコーヒーというのは、ある産地と深く関わり合って、そこで見つけた良いコーヒーを最終的に僕たちみたいなカフェできちんとお客様に提供するっていうところがひとつの醍醐味なので、生産地で採れた生豆から、日本で飲むような液体となったコーヒーを手渡すところまできちんとやりきることが僕たちの使命であり、それをハイレベルでやりきることができれば世界で1番目か2番目か3番目かはわからないですけど、最高レベルのコーヒーチェーンになるんじゃないかと思っています。
僕はやりきりたいし、やりきる自信もある。

こだわりの一杯を
こだわりの一杯を

たまたま最初に集まったメンバーが、コーヒーや人間に対してのピュアさだけは尋常じゃない人たちばかりで、一人とんでもないコーヒーオタクもいるんですけど、そういうピュアな気持ちを原点として、その思いを生かしてちゃんとひたむきにコーヒーに取り組んでみたいといった今の考えにたどり着くことができました。最初からそのつもりでしたが、僕は最後まで愚直にやってみようと覚悟しているので、あとは突っ走ってみてみようという思いです。

また「調布焙煎ホール」について言えば、五感を刺激するような体験をしてもらえる場所にしたいなと考えています。例えば、地元の中学生を対象にした職業体験も良いですね。コーヒー教室みたいなのをやりながら、焙煎スペースにも入ってもらって工場見学をしてもらいたいなと思っています。

また最近はできていなかったのですが、子ども食堂のお手伝いもしたいと思っています。仙川のお店もそうですが、調布は僕の生まれ育った場所で愛着もありますし、地元との関わりを持ち続けながら地域の人たちに応援されるようなコーヒー屋さんでありたいと思っています。 先日、猿田彦神社のある三重県にお店をオープンしたのですが、お店のある商業施設に行って「猿田彦珈琲」を飲んで帰るといったことが一種の目的になっているそうで、地元に猿田彦のお店があることを誇りに思って来てくださっているようなのが嬉しいことでした。調布の皆さんにとってもこのお店があることを誇りに感じてもらえるようなお店づくりをしていきたいですね。

自宅で楽しめる商品も
自宅で楽しめる商品も

コーヒー屋さんにとっても重要なカギとなる地域という視点

――コーヒー屋さんにとって、地域との結びつきとは?

大塚さん:実はコーヒーを提供にするにあたって、地域との結びつきという視点はめちゃめちゃ大事だと思っています。 スペシャルティコーヒーそのものが産地と深く関わり合うという点で地域という視点を大切にしていますし、某コーヒーチェーンの何がすごいかと言うと、地域の中で一番気軽に行けるコーヒーショップを本気で作ろうとしたことが今につながっていると思います。

これまで「猿田彦珈琲」では、地域性に合わせたお店づくりというのをほとんど意識せずにやってきたので、これからはもっと取り組んだ方が良いのかもしれないと思っています。僕がサッカー好きなことを知っている方もいらっしゃるかと思いますが、先日、僕が応援しているイングランドのサッカーチーム、チェルシーFCが欧州一のサッカークラブとなりました。チェルシーを含め強豪と呼ばれるチームに共通しているのはどこも地域に密着しているのが特徴で、僕たちみたいな業態にも通用する話だと思っています。地域に根ざしたクラブ運営をしているからこそ、熱狂的に支持してくれるファンの獲得に繋がり、それが経営基盤となるためそういった地域からの恩恵を授かるという視点はサッカーを通して学んできたように思います。

「調布」の街並み
「調布」の街並み

都心部と適切な距離を置ける場所が調布の魅力

――「調布」駅前では整備が進んでいますが、現在の印象や今後の期待も含めて、これから新しく調布に移り住む方へ向けてメッセージをお願いいたします。

大塚さん:調布には30年以上住んでいましたが、今、調布は変わろうとしている最中で、これからさらに面白くなると感じています。ある程度特化した地域性は既に持っていますが、きっとあと数歩でこの町はもっと個性的で面白い街に発展するんじゃないかと思います。

お店のある「トリエ京王調布」も鉄道の地下化によって誕生した新しい商業施設で、調布駅前のランドマークとして多くの人に利用されています。またその横には「てつみち」という屋外広場もあって小さな子どもを連れたご家族からご年配の方までいろんな方に親しまれているのを感じます。

お店前にある「てつみち」
お店前にある「てつみち」

調布で生まれ育った僕たちの世代にとって、世田谷と府中に挟まれた調布ってどうなんだろうみたいに言われることも多かったのですが、あの頃とは時代もニーズも変わっていろんな意味で調布はすごく住みやすく、利便性の高い街並みになったと感じています。僕が一番良いと感じているのは、都心部と適切な距離を置ける場所という点です。テレワークやリモートワークも広まって、そういう意味ではこういう場所に住んで、ちょっとゆっくり物事を考えながら生きていくのも良いのではないかと思っています。

それと調布にはいわゆる名店が多くて、手頃で美味しいものもいっぱいあるのでおすすめです。ちなみにまあまあ手頃で美味しいのがうちですかね。笑 しかし僕らとしてはその世界観を作らないと、実は本当に美味しいコーヒーを提供することはできないということに最近ようやく気づけたんです。一杯の価格だけを見れば少し高いですけど、その分、本当に美味しいと感じられるコーヒーを提供できるんじゃないか。さらには猿田彦があるから調布に住みたいなという人がいたら最高ですね。

お店が入る「トリエ 京王調布」
お店が入る「トリエ 京王調布」

猿田彦珈琲 調布焙煎ホール
代表 大塚朝之さん

所在地 :東京都調布市小島町2-61-1トリエ京王調布C館1階
電話番号:042-444-2632
URL:http://sarutahiko.co/
※この情報は2021(令和3)年6月時点のものです。