足立区立千寿本町小学校 インタビュー

一人ひとりの力を伸ばす指導が特色の「足立区立千寿本町小学校」

ターミナル駅「北千住」駅前の賑やかさから離れてまもなく、日光街道沿いの路地裏に校舎を構える「足立区立千寿本町小学校」。校庭の中央に立つ樹齢100年を超えるくすのきは、子どもたちの学校自慢のひとつ。広々としたオープンスペースや地下の温水プール、校庭一面の人工芝など、充実した学習環境が整っている。設備のみならず、基礎学力の定着や活用力の向上を図る指導、生活指導などを徹底させることも同校の大きな特色だ。地域・保護者ととともに歩む同校で、校長の増田好範先生にお話を伺った。

特色ある指導と環境で育つ確かな学力

人工芝の校庭の真ん中には学校のシンボルの「くすのき」
人工芝の校庭の真ん中には学校のシンボルの「くすのき」

――最初に「足立区立千寿本町小学校」の歴史を教えてください。

増田校長:本校は、1900(明治33)年創立の「千寿第一小学校」と1940(昭和15)年創立の「千寿旭小学校」が統合し、1991(平成3)年に創立された学校です。2016(平成28)年度に創立26周年を迎えました。

――基礎学力を育てる取り組みについて教えてください。

増田校長:本校では学力向上のため、基礎学力の確実な定着と、それをベースにした判断力・思考力・表現力の向上に取組んでいます。まず基礎学力では、読み・書き・計算の力を身に付けるため、今年度は週2回の朝学習「本町タイム」と年10回の土曜授業の際に、音読・暗唱、複写、漢字、計算トライアル等を行っています。また、学習する内容が増える3・4年生では、必要に応じて足立区が行っている「そだち指導員」による個別学習指導などで力をつけていきます。

判断力・思考力・表現力の向上については、1年生の時からきちんとノートを書くことができるようにノート指導の徹底を図っています。ノートには、「書くことで考える」「書いたことで考える」という効果があるからです。また、言語活動の充実として、5大新聞と小学生新聞を活用し、子どもたちが朝のスピーチで記事を紹介したり、感想を述べたり、土曜授業の題材としてコラムの書き写しや要約、感想のまとめを継続的に行っています。さらに、本校は足立区教育委員会活用力向上モデル校の指定を受け、授業研究にも取り組んできました。今年度は算数の授業研究を進め、思考力を育むための指導について検討し、実践しています。

新聞コーナー
新聞コーナー

――私立中学校へ進学する児童が多いようですが、特別な取り組みがあるのでしょうか?

増田校長:ここ数年の様子は、区立中学校以外への進学が半数近い割合です。学力向上の取り組みは当たり前のこととしてやってはいますが、受験するための特別な指導は一切していません。保護者の方々がそれぞれのお子さんの将来を考えた結果が多岐に渡った進路に表れていると受け止めています。地理的に、ターミナル駅に近く、都心や千葉方面への学校へ通いやすいという特徴もあるかと思います。

広いオープンスペースを活用した活動がさかん
広いオープンスペースを活用した活動がさかん

――オープンスペースが特徴的ですが、どのように使用されていますか。

増田校長:学年ごとに配置された広いオープンスペースを活かし、学年合同の学習活動やグループ活動に取り組んでいることは、本校の大きな特徴のひとつです。総合的な学習の時間での調べ学習や制作活動、全校行事に向けた学年の取り組みなど、複数の教員で指導しながら、有効に活用しています。オープンスペースでの活動を通して、教員は担任のクラスだけでなく学年全体のことをよく把握しています。

――児童の活発な姿が印象的ですね。

オープンスペースのおかげで子どもたちはひとつの家のような空間で入学から卒業までを一緒に過ごすため、とても仲がいいですね。また、本校は個別支援教育の充実を図るため、聴覚・言語障がいのある子どもが通う「きこえとことばの教室」と、コミュニケーションの力や集中する力を伸ばすための特別支援教室「くすのき教室」を設置しています。いろいろな個性のお子さんがいるので、子どもたちの多様性に応じるということは、本校が最も大事にしていることのひとつです。

「げんきなあいさつ」は学校の自慢

大切にしている4つの「あ」
大切にしている4つの「あ」

――足立区では教員養成講座や教科指導専門員を配置しているようですが。

増田校長:教員養成講座は、新規採用の教員がパソコンを使って授業の進め方や子どもとの接し方のポイントを学ぶ、映像配信講座です。授業で何を学ぶのかという課題をしっかり示さないと、子どもたちの集中力は高まりません。課題の示し方を若手教員が学ぶことで、子どもたちも教員も授業の見通しが立つ。教員は授業が楽しくなり、”きちんとできるようになった”という自信が実感できます。

教科指導専門員は、OBの校長や教員が若手教員を巡回で指導し、即戦力を育てる区独自の制度です。指導計画から板書に至るまで、授業観察を通して、細やかなアドバイスが行われます。

「ビューティフル・スクール運動」の認証書
「ビューティフル・スクール運動」の認証書

――「ビューティフル・スクール運動」とはどのような取り組みでしょうか?

増田校長:足立区教育委員会では、自分たちの学校を自慢に思えるような学校の特色や取り組みを「ビューティフル・スクール運動」として認証しています。本校は、「げんきなあいさつ」が自慢の学校・「朝スポーツ」&「金管バンド」が活発な学校・「花いっぱい」の学校の3つについて、認証を受けています。

前身の学校より伝統的に生活指導を重視している本校では、集団生活を支えるルールやコミュニケーション力を身に付けられるよう、「あいさつ・あつまり・あとかたづけ・あたたかいことば」の4つの「あ」を実践し、あいさつ運動には特に力を入れています。自分からあいさつできるという自主性は、学習面での自主性にもつながるからです。日頃から意識するだけでなく、年に2回「あいさつ言葉づかい週間」を設けて、地域の方にポスター掲示や子どもたちへの声掛けをお願いしています。

年に2回ある「あいさつと言葉づかい週間」
年に2回ある「あいさつと言葉づかい週間」

「朝スポーツ」&「金管バンド」は、希望者によるサッカーなどのスポーツ活動と、金管バンドクラブの自主練習です。週2回、朝スポーツは70人、金管バンドは30人が活動しています。秋から冬にかけて各種目の大会があるので、子どもたちはそこで自分たちの力を試してみる。みんな好きなことなので、朝早くから一生懸命練習していますよ。また、「花いっぱい」は地域の美化活動の一環で、環境委員会の児童が中心となって学校の周りの花壇の世話をしています。住民の方からいただいたトマトの苗を生活科の授業で育てたりもしています。

「朝スポーツ」が実施される校庭
「朝スポーツ」が実施される校庭

――あいさつ運動のほか、生活指導はどのように行っていますか?

増田校長:規則正しい生活は学力の基礎となっていくので、生活のリズムづくりや言葉遣いの意識付けには、長年力を入れてきました。具体的には、早寝早起き朝ごはんがきちんとできたか、家庭で評価をしてもらう強化月間があります。また、「わたしの1週間」というテーマで、テレビを観る時間やゲームをする時間、家庭学習の時間について、子どもたち自身に記録させ、保護者に評価をしてもらっています。ですから、各家庭の協力が必須になってきます。

オリンピック選手を招いた特別授業の様子
オリンピック選手を招いた特別授業の様子

――今年度から都内全校がオリンピック・パラリンピック教育の推進校となりました。

増田校長:本校は以前から推進校の指定を受けています。これまでに体操の鹿島丈博さん、サッカーの矢野喬子さんと水泳の柴田亜衣さん、今年度はパラリンピック陸上の辻沙絵さんらメダリストに「夢や希望」「人への感謝」といった内容で講演をしてもらい、時には子どもたちと一緒にスポーツをしていただきました。実技については、体力向上を目的に、縄跳びや陸上の専門家に上達のポイントを指導してもらっています。国際理解については、アフリカの楽器に親しんだり、高学年がユニセフの方から国際支援について学んだり、全学年がさまざまな国の方と触れ合うことで、その国の文化について理解を深めています。

伝統を受け継ぐ行燈づくりとお神輿教室

4年生が作った「地口行燈」
4年生が作った「地口行燈」

――地域の方とはどのように交流されていますか。

増田校長:統合前からの歴史があるため、地域の人たちは「自分たちの学校」「子どもたちを地域で育てる」という意識を非常に強く持っていてくださる。こうした意識が伝統的に受け継がれてきているので、非常に協力的です。ハイキングやビーチボールバレー大会、地域清掃、町会の連合運動会、地域のボーリング場で卒業生を集めて行うボーリング大会など、子どもたちのための町会行事がたくさん受け継がれてきて年中行われています。

地域学習では、3年生は神輿教室、4年生は地口行燈(じぐちあんどん)づくりをします。神輿教室は地域の秋祭りの前に開かれ、お祭りの話を聞き、実際にお神輿の担ぎ方を教わります。地口行燈は、江戸時代から千住の店先に飾られてきたものです。地域の方に木材を切ってもらい、子どもたちが考えた言葉や絵を描いて、保護者と一緒に親子で行燈を組み立てます。地域の伝統を引き継いでいくためにみなさん協力してくださっているのだと思います。

施設利用についても、地下の千住温水プールや冷房完備の体育館、多目的ホールなど、終日たくさんの方が利用されています。また、「あだち放課後子ども教室」の「キッズぱれっと」は地域の方中心に運営し、身近な地域の「おじさん」「おばさん」が世話をしてくれるんです。子どもたちが安心して過ごせる居場所になっていて、1日平均の利用者は約100人と、区内でもかなり数が多いです。 このように、地域の方がいろいろな場面で学校を応援してくださっているから、子どもたちは幸せですね。まさに”地域のためにある学校”だといえます。

図書室
図書室

――足立区では学校選択制度が採用されています。「千寿本町小学校」も人気のようですね。

増田校長:学区外のお子さんを受け入れる定員は年によって数名から20数名と違い幅がありますが、毎年抽選校になっていることは確かです。

理由はいろいろでしょうが、ひとつには、バスや電車の便がよくて通いやすいということ。また年2回の学校説明会で経営方針をきちんとお話ししています。「当たり前のことを当たり前にできる学校」でありたいので、子どもたちに基本的な学習・生活習慣を身に付けさせるために、家庭で協力してほしいことをはっきり申し上げています。ですから、学校の経営方針に共感をした上で、本校に魅力を感じ選んでいただいているのではないでしょうか。

――今後の教育指標・目標を教えてください。

増田校長:これからの子どもたちは国際人でなければなりません。国際人というのは、目標をもって自分のことは自分でできる人間だと思います。また、人との関係を大切にして、感謝の心をもてる子どもであってほしい。一言では言い尽くせませんが、人として自立して生活していけるようになってほしいと願っています。

歴史と未来志向が融合した人情味あふれるエリア

「足立区立千寿本町小学校」
「足立区立千寿本町小学校」

――最後に、千住エリアの魅力を教えてください。

増田校長:江戸時代からの歴史がある地域で、松尾芭蕉が「奥の細道」の旅へ出立した地であること、宿場町・千住宿だったことを示す旧跡が残っています。休日に歴史の跡を巡って歩く方もいらっしゃいますよ。その一方で、近年は「東京芸術大学」「帝京科学大学」「東京電機大学」などのキャンパスができ、一気に学園都市となりました。「住みたい街ランキング」にも登場するようになり、古い歴史と未来志向が融合して非常に面白い街になっていると思います。

各大学の連携事業も盛んで、本校は「帝京科学大学」の教職課程から実習生を受け入れています。また、「東京芸術大学」は子どもたちのために出前コンサートを開いてくれますよ。

生活という点では、非常に人情味がある地域です。駅前はにぎやかですが、一歩奥に入ると路地の世界で、住民の方々は非常にあたたか。子どもたちに対してはもちろん、我々を含めて外から集まってくる人間も寛容に受け入れてくださっています。昔からの下町の雰囲気と新しいものがいい意味でミックスされている、魅力的な町だと思います。

千寿本町小 増田校長
千寿本町小 増田校長

足立区立千寿本町小学校

校長 増田 好範先生
所在地 :東京都足立区千住3-30
TEL :03-3888-8361
URL:http://www.adachi.ed.jp/adseho/
※この情報は2017(平成29)年3月時点のものです。