南山東部土地区画整理事業 担当者インタビュー

山林の自然を活かしながら、新しいコミュニティを作る「南山東部土地区画整理事業」

京王線「稲城」駅から見て南側の丘陵地帯で、現在「南山東部土地区画整理事業」という大規模な宅地造成事業が進められている。この事業はもともと、昭和40年代から将来的な住宅地として期待され、「市街化区域」として指定されていた山林に対し、平成に入ってから造成事業に着手したというもので、稲城市で現在進行中の開発事業の中でも最大規模のもの。稲城市としてもまさに「満を持して」の大事業と言えるものだ。

2017(平成29)年の時点での進捗率は23.6%。宅地や道路の造成事業はまだ途中段階ではあるが、マンションや戸建て住宅の分譲が始まり、スーパーマーケットやベーカリーなどもできて、新しい街並みを見せはじめている。

今回は、今後さらに人口が定着し、商業施設も増えていくであろうこの「稲城市南山地区」の将来像について、稲城市南山土地区画整理事業部事務局次長の蕪木勝彦さんと、事務局員の山崎俊浩さんにお話を聞くことができた。

構想から50年、動き始めた事業

稲城市南山土地区画整理事業部事務局員の山崎俊浩さん(左)と、事務局次長の蕪木勝彦さん(右)
稲城市南山土地区画整理事業部事務局員の山崎俊浩さん(左)と、事務局次長の蕪木勝彦さん(右)

――まず、事業の概要について教えてください。

山崎さん:この事業は「南山東部土地区画整理事業」といって、事業組合が設立されたのが2006(平成18)年、それから2025年3月31日までを目標に、20年がかりの事業として行っています。区域の面積は87.4ヘクタールに及ぶ広大なもので、地権者の方を中心とした285名の組合員で構成された区画整理組合を作り、稲城市とともに事業を進めています。事業区域については、京王線の「稲城」駅と「よみうりランド」駅の間にあたる区域、北側は京王線の線路に、南側はゴルフ場の境目に接しています。

今回の供用地の面積については先ほど87.4ヘクタールと申しましたが、道路が16~18m幅という広い規格で整備され、歩行者専用道路もできるため、全体面積の約15%ほどが道路となります。また、公園緑地が約23%を占めるため、合計の4割ほどを公共地が占める、公共率が高い開発ということが特徴の一つかと思います。

――南山地区の土地の歴史について教えてください。

山崎さん:この地域はもともと山林が主体の区域でしたが、稲城市が町から市に移行する際に「市街化区域」と「市街化調整区域」というものを線引きする必要が生じました。その時に、将来宅地として開発をすることを前提に、「市街化区域」に指定された地区という歴史があります。

なぜかというと、ちょうどその頃、1966(昭和41)年頃は京王相模原線が作られていた時期で、当時はこの京王線を境に北側に既成市街地、南側に農地や山林が広がっているという状況だったのです。そこで市は将来的にこの「稲城」駅から「よみうりランド」駅の約1km間は、駅徒歩圏として住宅地に適した場所になるであろうと見込んで、「市街化区域」に指定したという経緯があります。

この指定が1970(昭和45)年ですから今から50年近くも前の話にはなりますが、1992(平成4)年頃から事業開始の機運が高まり、2006(平成18)年に区画整理組合ができて事業が動き始め、今まさに進められている、という状況です。

事業について説明する山崎さん
事業について説明する山崎さん

――南山地区は主にそれまでは山林だった地域ということですが、土砂災害は大丈夫でしょうか?

山崎さん:もちろんこうした土地をそのまま宅地にすることはできませんので、区画整理と同時に災害対策も行っています。2003(平成15)年頃から土地の改良や防災のための工事など、最新の国の基準に則って整備していますので、従来よりも土砂災害等のリスクは軽減できているかと思います。斜面地だからといって特に災害のリスクが高いということではありませんので、ご安心いただければと思います。

――現在の工事の進捗状況、これまでに完成した施設、今後新たにできる施設などについて教えてください。

山崎さん:事業費ベースでは53%ほどが完了していますが、宅地ができあがっている割合で言いますと、まだ2割強ほどです。最終的な計画人口は7,600人、世帯数が2,500世帯ですが、現在はまだ600世帯くらいですね。そのうちの約400世帯はマンションで、ほかに戸建てが建ち始めているという状況ですので、まだまだこれから建物は増えていくかと思います。

住宅以外では、保育園、小学校、給食センター、スーパーマーケット、農産物直売所、パン屋さんなどの個人店もできてきています。このほか、先日新聞などでも報道された読売巨人軍の2軍の野球場も建設が決まりました。保育園の隣に認定こども園ができることも決まっています。

蕪木さん:ただ、今回の開発は「区画整理」という事業の特性上、どんな店や施設が入るかは地権者と事業者の交渉次第なのです。そのため市としては、ある程度の誘導はできますが今度どこにどんな店や施設が入るかということは、はっきり申し上げることはできないのです。

“地域に住む人が、みずからの手で街を維持管理する”コミュニティ

――地域を自分たちの手で管理する「エリアマネジメント」という仕組みを導入されているそうですね、詳しく教えてください。

稲城市のエリアマネジメント構想
稲城市のエリアマネジメント構想

蕪木さん:この「エリアマネジメント」は“地域に住む人が、みずからの手で街を維持管理する”という考え方に基づいていて、現在は、従来の稲城市民の方や地権者の方、地域で活動されている方などが中心となって動いています。

南山地区にはまだ人口が少なく“みずからの手で街を維持管理する”という段階までは至っていませんが、将来的にはたくさんの住民の方に参加いただいて、主導していってもらえるよう誘導していきたいと考えています。

「エリアマネジメント」は、いわゆる「自治会」と似た部分もありますが、「自治会」では“街を維持管理する”というところまではなかなか手が及びません。「エリアマネジメント」ではその垣根を超え、公園や公共施設なども含めて“みずからの手で管理する”ということで、ここに住む人たちの共同体のようなものとして運営していければと思っています。

ただ現時点としては、新住民の方たちに稲城の魅力を知ってもらうための活動が主になっています。たとえば農業体験として梨狩りをしたり、芋掘りをしたり、森の中を歩いてみたり、草木染めをしたり、といったものですね。今後は新たな街の核となるコミュニティ形成の場にしていきたいと思っていますし、新住民の方には子育て世代の方も多いですから、イベントだけでなく、そういった方々をサポートするような活動をしたり、コミュニティ作りの支援をしたり、といったこともやっていきたいです。

コミュニティ作りの支援もしている
コミュニティ作りの支援もしている

そういった取り組みを通して“街としての魅力が上がる”ことが期待されますので、資産価値の減少カーブが緩やかになるというメリットも生まれてくるかと思います。あくまでも任意参加の組織ではありますが、できるだけ多くの方に参加していただいて、価値のある街づくりを、皆さんの手で維持・継続していっていただければと思っています。

――このほか、地元のボランティア団体さんとも協力して、自然体験イベントなどを開かれているそうですね。

山崎さん:もともとここは広大な山林でしたので、自然を守りたいという市民の方が多くいらっしゃいます。一方で地権者の皆さんは開発を進めたいという立場なので、この事業が始まる前に双方で数年単位で時間を割いて、自然と共存する街づくりのための話し合いが行われてきました。

その結果、20ヘクタール程の広大な公園緑地ができましたし、自然を上手に保護しながら共存していく取り組みも行われています。そうした中で「南山の自然を守り育てる会」などの地域の自然保護団体の方にも関わっていただきながら、イベントや講座をいろいろと行っています。

最終的には地元に住んでいらっしゃる方々自身が自然環境の保全の仕方を正しく理解することが大事ですので、未来にわたってそれをずっと引き継いでいけるように、という思いで取り組んでいます。

都会と自然、バランスの良い環境が魅力の街

――では最後に、南山地区の魅力を教えてください!

蕪木さん:やはり都心との距離と、まわりの自然環境のバランスの良さでしょうね。もともと、稲城市自体がかなり専業農家の方が多い市ですし、山林の面積も多いです。森の中を散策するのが楽しい、自然と触れあう機会がほしい方にとってはすごく魅力的な地区だと思いますので、ぜひお住まいいただきたいですね。

もうひとつは、「エリアマネジメント」の存在でしょうか。これを通じて、自分の街の価値を高めていこうという気運がある街になっていくでしょうし、情報交換がしやすい環境もできると思いますから、子育て世代の方には魅力になるのではないでしょうか。

稲城市の魅力を語る蕪木さん
稲城市の魅力を語る蕪木さん

山崎さん:私はやはり景観が一番の魅力かと思います。ここは下から見ても緑がいっぱいの地区ですし、上から見ても稲城の街や遠くは都内まで見渡せてとても景色がよく、夜景もきれいなんですよ。あとは専業農家の方が多いので、そういう人たちと身近に付き合いながら農業と隣接した暮らしが送れるところも、ほかではなかなか無い魅力だと思います。

蕪木さん:先ほど申し上げた巨人軍の二軍のグラウンドについてもファンにはたまらないでしょうね。選手に気軽に声をかけられるような、ボールパーク的な施設を検討されているようですし、子ども向けの野球教室なども、積極的に取り組んでくださるでしょうから、野球好きのお子さんがいるご家庭の方には、すごく魅力的な地区になると思いますよ。

南山東部土地区画整理組合

事務局次長 蕪木勝彦さん(右)
事務局員 山崎俊浩さん(左)
URL:https://www.city.inagi.tokyo.jp/shisei/machi_zukuri/kukakuseiri/kumiaisekou/minamiyama.html
※この情報は2018(平成30)年7月時点のものです。