wagashi asobi インタビュー

伝統的な“和菓子”の文化を次世代へと繋ぐ2人の和菓子職人

2011(平成23)年4月のオープンより、大田区上池台のアトリエを拠点に、国内外のイベントや茶会など、海外にも活動の場を広げている「wagashi asobi」。稲葉基大さんと浅野理生さんの2人の和菓子職人によるお店で、「ハーブのらくがん」と「ドライフルーツの羊羹」の2品しか提供しないこだわりも光り、和菓子の未来を切り拓く可能性に満ちた注目のお店です。今回は「ハーブのらくがん」を考案した稲葉基大さんに開店の経緯や和菓子への想い、また地域の魅力についてもお話を伺いました。

こだわりの和菓子が人気の「wagashi asobi」のお二人
こだわりの和菓子が人気の「wagashi asobi」のお二人

地元の方にとって“自慢のできるお菓子”を提供したい

そもそも私は、老舗和菓子店で職人として働くかたわらで、アーティストや陶芸作家、ミュージシャンなどさまざまな業界の人とコラボしながら和菓子の可能性を探求していく「wagashi asobi」の活動を行っていました。ある時、プライベートで通っていたカフェが閉店するのを知り、「この場所を失いたくない」という思いでそのまま借り受けてアトリエ兼店舗としてオープンしたのがこのお店のはじまりです。

もともと石川台から洗足池のあたりに住んでいたため、この長原商店街も地元のような感覚で土地勘はありましたし、地域のみなさまに長年親しんでいただける商店街の小さな和菓子店を目指していた私たちにとってもちょうど良い場所でした。

「wagashi asobi」
「wagashi asobi」

地元にお店を開くにあたって大切にしたことは、“地元の方にとって自慢のできるお菓子を提供したい”という思いです。この地域の方々は、手土産を買うのにもわざわざ渋谷や二子玉川まで足を運ぶことが多いですが、この街に“自慢できるもの”を提供することで、この街の方に手土産としても選んで頂けるような、末永く愛されるお店であり続けたいと考えています。

“和菓子”の文化を次世代へと受け継ぐ2人の職人の挑戦

この店で「ハーブのらくがん」と「ドライフルーツの羊羹」の2つの商品に限定したのは、せっかくお店を開いてやるんだったら2人にとって、もっとも得意とする和菓子で挑戦したいという思いがあったからです。上手くいかなかったらそれはそのときで考えようと、今日まで2人で歩んで来られたような状況です。

おしゃれな内装にもこだわりがうかがえる
おしゃれな内装にもこだわりがうかがえる

和菓子業界に目を向けると、店舗の大型化また多店舗拡大により、和菓子やお団子と並んでどら焼きやケーキ、クッキーなど何でも取り扱うお店の業態が主流となり、“おもてなし”にも通じる“和菓子”の文化がいつしか忘れ去られ、“売れるお菓子”を志向している今の状況に疑問を感じていました。

また、“老舗”を良しとする、和菓子に対する世の中の風潮は、若手の独立や開業を難しくしていると感じています。これまで先人たちが培ってきた“和菓子”の文化を次世代へと受け継ぐべく、「wagashi asobi」が小さな支流としてその役割を担っていると考えています。

見た目も美しい2種類の和菓子
見た目も美しい2種類の和菓子

和菓子づくりへのこだわりという点では、浅野が「ドライフルーツの羊羹」を、私が「ハーブのらくがん」を考案し共同で作業しています。得意なことに特化しているため、質とクオリティには自信があります。

とは言え、オープンした当初は「何のお店をやっているのか分からない」と地元の方にもなかなかお立ち寄りいただくのが難しく、テレビやメディアを通じてようやく「テレビで見たわよ♪」と徐々に知れ渡り、口コミでお客さんの層を広げてきたような状況です。今ではお客さんの約7割がリピーターの方で、地域の方にも浸透してきたような印象です。

明るいアトリエ兼店舗
明るいアトリエ兼店舗

「おおたの逸品」にも選ばれた大田区上池台発の和菓子

実は、浅野のつくる「ドライフルーツの羊羹」は、もともと「wagashi asobi」の活動を通じて、アーティストから「パンのイベントを行うので、パンと一緒に食べる和菓子をつくってほしい」というオーダーをいただいたことから誕生したもので、沖縄県西表島の黒糖とラム酒で炊き上げた羊羹に、ドライフルーツの苺と無花果、胡桃をたっぷり使用しています。

「ドライフルーツの羊羹」
「ドライフルーツの羊羹」

パンに合う和の素材や、和菓子の起源でもある木の実や果物などの食材を照らし合わせ、最良の味や食感の調和を導き出しています。1cmほどの厚さにスライスしてぜひパンと一緒に召し上がってみてください。

思わず手に取ってしまうきれいな外装
思わず手に取ってしまうきれいな外装

切った断面が常に違う“一期一会”の感覚も、まるで抽象画のような視覚的な美しさも楽しめる逸品で、2013(平成25)年度に大田区が認定する「おおたの逸品」に選ばれたのをはじめ、2015(平成27)年度には経済産業省の「TheWonder500™」にも認定され、日本が誇るべき優れた地方産品「ふるさと名物」として大田区上池台発の和菓子が認められました。

「TheWonder500™」の賞状
「TheWonder500™」の賞状

伝統的な“和菓子”にあらたな息吹きをもたらす職人の技

また、私のつくる「ハーブのらくがん」は、菊や蓮の花をかたどったお供え物としてのらくがんとは異なり、ローズマリーやハイビスカスといったハーブをはじめ、抹茶や果物など香料や着色料を一切使用せず、素材そのものを練り込んだお菓子で、らくがんの新たな楽しみ方を提案しています。

「ハーブのらくがん」
「ハーブのらくがん」

一般的に用いるものよりもきめの細かい砂糖と寒梅粉を使用しているため、口溶けがなめらかですし、素材の美味しさも引き立ちます。ラインナップは「ローズマリー」、「ハイビスカス」、「カモミール」、「抹茶」、「いちご」、「ゆず」の6種類で、季節によって「南高梅」や今提供している「ほうじ茶」も限定商品として扱っています。

季節の味も楽しめる
季節の味も楽しめる

「wagashi asobi」では今後も、“和菓子”という文化を次世代へと受け継いでゆくため、「一瞬一粒(ひとつひとつ)に想いを込めてつくる。」を理念に、地域に根ざしたお店として活動していきます。

店内に並べられた和菓子
店内に並べられた和菓子

将来的な可能性を秘めた水辺のある街

古くから水のあるところには文化が育まれてきていますが、吉祥寺にとっての「井の頭公園」のような、「洗足池公園」や「小池公園」といった水辺が近くにあるこの環境には、将来的な可能性を秘めた魅力ある土地として期待をしています。

「洗足流れ」沿いの落ち着いた街並み
「洗足流れ」沿いの落ち着いた街並み

代々続くお店が多いなかで、パン屋さんやケーキ屋さんなどあらたに出店するお店もあり、今後ますます感度の高い個人経営のお店が増えていって欲しいなと思います。

街の賑わいという点でも、個々のお店がそれぞれ専門店としてその魅力に磨きをかけることこそが大切で、個々の魅力アップが結果的に人の流れとなって街に活力をもたらすと考えています。個人的にはギャラリーを併設したカフェや本屋さんがあるといいなと常々感じています。

またこの地域のおすすめスポットとしては、「洗足池公園」や「小池公園」については先ほども触れましたが、「洗足池公園」から住宅地へと流れる“洗足流れ”も大好きな街並みです。

春は桜、秋は紅葉と、季節の移り変わりを楽しみながら散策できたり、地元の有志によるホタルを自生させようといった活動もあり、この地域ならではの魅力を感じます。

町の中にある立札
町の中にある立札

こだわりの和菓子が人気の「wagashi asobi」のお二人
こだわりの和菓子が人気の「wagashi asobi」のお二人

wagashi asobi

(写真左)稲葉基大さん(写真右)浅野理生さん
所在地:所在地:東京都大田区上池台1−31−1
電 話:03-3748-3539
URL:http://wagashi-asobi.com
※この情報は2015(平成27)年11月時点のものです。