英語を学び「文武両道」を掲げる公立小学校

地域の方に支えられ、さまざまな学びへの取り組みを実践する「高井戸東小学校」(東京都)

京王井の頭線の「高井戸」駅から、環八通りを越えて川沿いに歩いていくと、駅周辺の喧騒が嘘のように感じられる程に穏やかな住宅地が広がっているのをご存じでしょうか。眼下には神田川がせせらぎ、川沿いには桜並木のアーチ、道の左右には緑豊かな公園や広々としたグラウンドが見える、自然も豊かな環境。そんな杉並区高井戸東一丁目地区に建つ杉並区立高井戸東小学校』の坂本智子校長先生に、同校の特徴や力を入れている教育活動、周辺地域の環境や、地域の方々との交流など幅広くお話を伺いました。

周辺4校の児童が集まってスタートした学校

――まずはじめに、貴校の今日までの歩みをご紹介いただけますか。

坂本先生:本校は、昭和48年(1973年)4月に開校し、2021年で47年目を迎えました。成り立ちとして、周辺の4校(高井戸小、浜田山小、高井戸三小、富士見丘小)の児童増加を背景に学区の分割を行うため、各校の児童が合流するかたちで誕生した学校のため、“杉並の4つの学校”が集まった、という意味をこめ“4つの杉”が集まったシンボルマークが校章になっています。

4つの「杉」のシンボルから成る高井戸東小学校の校章
4つの「杉」のシンボルから成る高井戸東小学校の校章

――近年の児童数や、その増減はいかがでしょうか?

坂本先生:現在の児童数は約550名で、19学級です。区内の学校では中規模ですが、学区域はかなり広く、高井戸、下高井戸、浜田山にまたがっています。近年はおおよそ横ばいでしょうか。令和2年度(2020年)までは4学級の学年もありましたが、令和3年度(2021年)は全学年3学級となる見込みです。

今回お話をうかがった杉並区立高井戸東小学校 校長 坂本智子先生
今回お話をうかがった杉並区立高井戸東小学校 校長 坂本智子先生

――校舎の特徴などもあれば教えてください。

坂本先生:4階建ての直方体の校舎で子どもたちにも分かりやすい、行き来のしやすいような造りになっていると思います。図書室には学校司書がおり、特別支援の通級教室があったり、学童クラブ(上高井戸第二学童クラブ)も本校内に設置されています。

高井戸東小学校の校舎
高井戸東小学校の校舎

新たな取り組みで教育目標の実現を目指す

――貴校の教育目標や、その実現のために取り組んでいることを教えていただけますでしょうか。

坂本先生:本校は教育目標として「夢をもち豊かに生きる子」を掲げ、「かかわる、あらわす、やりぬく」ということを大切にしています。 

その第一歩は、まず子どもたち一人一人が自分で計画を立てられるようになることだと思いますので、今年度から新たに、「マイプランタイム」というものに取り組み始めました。これは毎週金曜日に、子どもたちがその週の振り返りを行い、その後、翌週1週間分の学習予定表を担任から受け取り、それを見て自分の来週のプランを考えていく、というものです。こうした習慣を通じ、自分でプランニングをして、マネジメントをする力を養えるようになって欲しいと思っています。

教育目標
教育目標

そのほか、6年生が学習をもとにして、全校に呼び掛けをするポスターを作って校舎内に掲示し、下の学年に自分たちの考えを伝える、という取り組みも行っています。同様に、今年はコロナ禍で従来の「全校朝会」を「全校昼会」という特殊な形態で実施し、給食の時間中に6年生が放送で自分たちのメッセージを伝える、ということも行いました。

杉並区立高井戸東小学校 インタビュー(6年生が作ったポスター)
杉並区立高井戸東小学校 インタビュー(6年生が作ったポスター)

よりよい学びのため、試行錯誤して整える環境

坂本先生:カリキュラムの面では、本年度から毎朝30分間の「東っ子タイム」という学習タイムを作り、この中で漢字や言葉遣いなどの、言語領域の学習を毎日行っています。漢字の学習を国語の授業の45分の枠の中で行おうとすると、学びが「圧縮」されてしまうんです。本来であれば、45分をたっぷり使って、思考したり、表現したり、交流したりするべきだと思います。そのため、言語領域の部分については、この朝の30分間に特化して行うことにしました。これは杉並区内でも本校独自の取り組みではないでしょうか。ただ、まだ試行段階ですので、次年度は現在やっていることを検証して、内容を整理していきたいと思っています。

また、本校は高学年でも6時間授業は週に2回だけと比較的ゆとりを持たせており、そこで放課後に生まれる時間を活用しています。特に低学年に関しては週1回「まなびタイム」というものを設け、例えば図工の作品が間に合わないという子はそれを作ったり、学習をしたい子は残って勉強をしたり、子どもたちがそれぞれに必要なことを工夫して行っています。

校内の様子
校内の様子

この他「放課後ロングあそび」という時間も創設し、毎週金曜日の放課後に1時間程度、校庭で自由に遊べる時間を確保しました。この時には地域の方に来ていただき、見守りの中で安全に遊べるようになっています。

――貴校はICT機器の活用に関しても先進的な学校とお聞きしました。どのような活用をされていますか?

坂本先生:ICTの活用に関しては、杉並区から指定校にしていただき、高学年はすでにひとり1台のタブレットの体制になっています。「ロイロノート・スクール」というツールを使うことが多いのですが、子どもたちひとりひとりの考えを、そのツールを使って電子黒板に集約して、比較検討したり、さらに深めたりするという形で活用できているかと思います。

タブレットを使った授業の様子
タブレットを使った授業の様子

また、本年度はプログラミング教育に関して、お掃除ロボットの「ルンバ」の機能を踏襲した「Root(ルート)」というプログラミングロボットを借りることができましたので、そちらも授業の中で活用し始めているところです。例えば、今年度はコロナ感染拡大防止の影響で、音楽の授業でも合唱やリコーダーなどもできなくなってしまったため、プログラミングで曲を作ったりというようなことを実施しています。

――そのほか、貴校で力を入れている教育活動などがありましたら教えてください。

坂本先生:本校では「保健室登校」に真摯に取り組んでいます。不安定な状態になってしまった子どもたちを保健室でお預かりし、また教室に戻れるようにする取り組みを、特に今年度から力を入れております。また、「hyper-QU」という小中学校向けの心理テストがあるのですが、本年度からそちらを取り入れ、子どもたちの心理状況などを鑑みながら、教員が適切な指導をできるように、という取り組みも始め、今後も継続していく予定です。

保健室
保健室

地域の方に支えられて実現する、様々な育み

――日本の伝統文化に関しても、さまざまな取り組みをされているそうですね。詳しくお聞きできますか?

坂本先生:本校ではオリンピック・パラリンピック教育の中の、伝統的な日本文化の学習に力を入れており、もともと郷土資料室だった部屋を和室に改装して、そこで茶道の体験なども行っていました。ただ、今年度はコロナ禍のために形を変えて、お点前をいただくのではなく、ご飯のお茶碗の持ち方、お箸の持ち方の作法を学んだり、茶道に用いる伝統工芸品をレクチャー付きで鑑賞するという内容になりました。
このほか、低学年では昔あそびを地域の方に教えていただいたり、地域にお住まいの落語家の方に教えていただいて自分たちが考え練習した落語の発表会を行ったり、同じく地域の書家の方に書道を教えていただいて席書会を開催したり、お琴の先生を招いてお琴を習ったりといったことも行ってきました。高井戸で継承されている「高井戸囃子(ばやし)」という地域ならではの伝統文化も教えていただいています。

また本年度は開催できませんでしたが、例年ですと、6年生で「雅楽体験」という時間もあります。昨年度は民舞の鑑賞もしました。こういった伝統文化に多く触れられるのも、地域の皆様のお力があってのことだと感じています。

校内の和室で茶道体験などを行う
校内の和室で茶道体験などを行う

――伝統文化以外にも、地域の方々との交流する活動はありますか?

坂本先生:本校は「コミュニティスクール(地域運営学校)」になっており、学校運営協議会と共に運営しています。その中の学校支援本部が、子どもたちのために色々なイベントを主催して、保護者や地域の方々が参加し盛んに活動しています。

例えば「ビレッジスクール(土曜日学校)」では、例年ですと、うどん作りや、ヤゴ(トンボの幼虫)を育てる活動をなどをしています。特にこのヤゴの飼育については本校の特色のひとつになっていて、「ビレッジスクール」の方と児童のお父さんたちの組織「おやじの会」が中心になり、学校のプールに、プラスチックのかごに草や枝を入れた、人工の浮島を子どもたちと作ります。こうした環境を作っておくと、周りからギンヤンマやシオカラトンボなどが集まってきて卵を産むため、子どもたちと一緒にヤゴ取りを行い、自宅に持ち帰ったり、水槽を教室の前や廊下に置いて観察したり、地域の幼稚園や保育園にもお分けしたりしています。地域の皆さんのお力と、高井戸の自然豊かな環境があって継続できており、本校の伝統にもなっている活動のひとつです。

小学校と地域の繋がりについて話す坂本先生
小学校と地域の繋がりについて話す坂本先生

坂本先生:ほかにも、近隣にある「浴風園」という高齢者施設の方と、4年生の総合的な学習の中で交流をさせていただいております。子どもたちが運動会で踊ったダンスや合奏を披露したり、グループに分かれて色々な遊びをしたり、高齢者の方のお話を聞いたり、逆に子どもたちが学校のことをお伝えしたり、と充実した時間になります。

また、本校は「合唱団」と「和太鼓クラブ」の活動が盛んです。例年ですと「高井戸中学校」で開催される「高中ミニコンサート」で両クラブが出演をさせていただいたり、「合唱団」は先ほどの「浴風園」のホールをお借りしてコンサートを行ったり、「高井戸地域区民センター」の前で開かれる地域まつりに「和太鼓クラブ」が中学校と合同のチームで参加したりと、地域の行事でも練習の成果を披露しています。

「高井戸中学校」との関わりでいいますと、中学校の生徒会の子どもたちが来てくれて、本校の代表委員会の子どもたちと一緒に「あいさつ活動」を一緒に行ったり、杉並区の交流都市であるオーストラリアのウィロビーでの中学生の体験学習の様子を本校に来て発表してもらったりもしています。近隣の幼稚園・保育園とも交流があり、1年に3回程度、次年度入学予定の子どもたちを招く取り組みをしています

大変な環境下だからこそ、特別な1年となった

――今年度はコロナ禍でいろいろなご苦労があったかと思いますが、学校運営で工夫されたこと、継続していることを教えてください。

坂本先生:本校では、管理職、生活指導主任、保健主任で、それぞれ対応の骨組みを決め、そこから派生して分掌ごとの感染症対策を作り、本校独自のガイドラインをまとめました。学校の対策としてはかなり早い段階からガイドライン化ができていたのではないかと思います。

もちろん、アルコール消毒、手洗い、うがいといった対策は日常的に実施していますし、休み時間の遊び方にも気を付けています。登校時、校舎に入る時間に関しても、低学年は先に入るようにして、密集を避けるように工夫しています。つい先日には、水道の水栓もすべてレバー式に更新しました。また、放課後に教職員による校内の消毒活動を続けており、職員会議がある水曜日には学校支援本部の方々が協力に来てくださって行っています。

レバー式になった水道
レバー式になった水道

――学校行事も、感染対策を徹底しながら慎重に開催されたそうですね。

坂本先生:そうですね。例年の「学習発表会」については実施できずに終わってしまったのですが、「図工作品掲示」については、なんとか実施ができました。今年は例年の個人作品ではなく、6年生の卒業を祝して学年ごとの共同作品ということに変え、1階の廊下だけに展示空間を設け、保護者の方にも一家庭お一人だけ見ていただける、という限定した形でご理解いただきました。また、運動会についても「体育学習発表会」と名前を変え、学年ごとに時間を設定して、保護者の方には入場から一方通行でご覧いただき退出していだたくような形でご協力をいただき、大きな混雑等もなく行うことができました。

移動教室も本年度は無くなってしまいましたが、杉並区は日帰りであればバス移動ができるということでしたので、各学年ごとに屋外のアスレチックに行って、1日遊んできました。また6年生については、さらにもう1日「高井戸公園:に行って、子どもたちがそれぞれ考えて企画した遊びを、学年全体で楽しむということも行いました。

卒業関連の掲示物
卒業関連の掲示物

――今年度はコロナ禍で大変な1年でしたが、反面、子どもたちにとっては一生忘れられない、印象に残る1年だったのかもしれませんね。

坂本先生:そうですね。本当に、今年は特別な1年でしたので、本校では卒業記念の植樹をすることにしました。そんなに大きな木ではありませんけれども、「こういう年で、いろいろできない事もあり、大変な1年だったけれど、これがその時自分たちで植えた木なんだ」ということを示すことができる、大切なものとして残っていくかと思います。

「豊かな自然」と「人」が魅力の高井戸

――最後に、子育てや教育活動をする環境として高井戸地域の魅力をお聞かせください。

坂本先生:まずはやはり、豊かな「自然」があることだと思います。先ほどのヤゴの話もそうですが、子どもたちは自然の中で、さまざまなことを見つけ、感じ、育っていくと思います。ですから自然豊かな高井戸の環境は、今後も大切にしていかなければと思います。

もうひとつは、「人」の魅力ですね。今年はますます、それを強く感じました。保護者の方はとても学校に協力的で教育熱心ですし、地域の方も学校を温かく見守り、手を携えてくださっています。

子どもたちにとって、この街が「ふるさと」になるためには、やはり、地域を愛し、人と繋がっていくことが大事だと思います。今年は私たち教職員にとっても、子どもたちがいろんな人たちと関われることの有難さ、大切さといったものを、改めて強く感じる1年となりました。ここはそういった温かな人々がいる、素晴らしい街だと思います。

自然豊かな杉並区立柏の宮公園
自然豊かな杉並区立柏の宮公園

 

杉並区立高井戸東小学校

校長 坂本智子先生
所在地:東京都杉並区高井戸東1-12-1
電話番号:03-3304-5711
URL:http://www.suginami-school.ed.jp/takaidohigashishou/
※この情報は2021(令和3)年3月時点のものです。