特別インタビュー

令和元年東日本台風を契機とした風水害対策の取組みを進める「世田谷区役所 危機管理部」

2019(令和元)年10月に発生し、甚大な被害をもたらした「令和元年東日本台風(台風第19号)」を契機とし、情報発信の強化や避難所開設・運営の見直しを進めてきた世田谷区。風水害対策の見直し点や今後の課題、災害時に求められる備えについて、「世田谷区危機管理部」の皆さまにお話を伺ってきた。

取材にご対応いただいた「世田谷区危機管理部」の皆さま
取材にご対応いただいた「世田谷区危機管理部」の皆さま

世田谷区のハザードマップで確認する地域防災リスク

――尾山台周辺における防災上のリスクについて、世田谷区ではどのような災害対策を重視されていますか。

危機管理部:尾山台周辺における浸水や土砂災害のリスクは、世田谷区が発行している洪水・内水氾濫ハザードマップや土砂災害ハザードマップで確認できます。堤防決壊時の浸水想定区域は決まっているため、より高台への避難が必要です。

洪水・内水氾濫ハザードマップ(多摩川洪水版)データ(世田谷区HP)
洪水・内水氾濫ハザードマップ(多摩川洪水版)データ(世田谷区HP)

――「令和元年東日本台風」による被害で、講じられた対策を教えてください。

危機管理部:区では、「令和元年東日本台風」を契機とし、台風対応について風水害対策総点検を実施し、区として万全を期した対応が取れるよう、点検に基づく対応策を取りまとめ、情報発信の強化や避難所開設・運営の見直しなどの取り組みを進めてきました。

現在では、いつ、どのような行動を取るべきかを時系列で整理した風水害対応タイムライン(防災行動計画)を作成し、それに基づいて風水害対応にあたっています。

また区としては、毎年風水害対応に関する訓練を全庁的に実施し、いざという時に備えています。

区のおしらせ「せたがや」令和7年6月1日号でも発信を行っている(引用:世田谷区HP)
区のおしらせ「せたがや」令和7年6月1日号でも発信を行っている(引用:世田谷区HP)

――河川管理・地形対策・施設整備などについて、現在の防災対策を教えてください。

危機管理部:「令和元年東日本台風」により、甚大な被害が発生した多摩川については「多摩川緊急治水対策プロジェクト」や「流域対策プロジェクト」が進められ、国では、無堤防区間への堤防整備や河道掘削、樹木伐採などの対策を進めてきたほか、区では多摩川沿いに水防倉庫の整備、またポンプ車の配備や土のうステーションの拡充を進めてきました。

多摩川緊急治水対策プロジェクト<堤防整備(世田谷区玉川地区)>(引用:関東地方整備局「多摩川緊急治水対策プロジェクト」資料より抜粋)
多摩川緊急治水対策プロジェクト<堤防整備(世田谷区玉川地区)>(引用:関東地方整備局「多摩川緊急治水対策プロジェクト」資料より抜粋)

子育て世帯への配慮を重視した世田谷区の防災行動

――子育て中の家庭、具体的には0〜5歳児を抱える世帯への配慮はありますか。

危機管理部:世田谷区では、大雨等による河川氾濫や土砂災害等のおそれがある場合、危険が予測される地域の方に対して避難情報を発令します。その避難情報については、警戒レベル3、4、5に対応する「高齢者等避難」、「避難指示」、「緊急安全確保」と段階を追って発令することになりますが、特に最初に発令する「高齢者等避難」については、お子さま連れの家庭をはじめ、避難に時間のかかる方に対し、早めの避難を促します。

避難情報と区民の皆さんがとるべき行動
避難情報と区民の皆さんがとるべき行動

危機管理部:「令和元年東日本台風」後に作成された風水害対応タイムライン(防災行動計画)においては、世田谷区が「高齢者等避難」を台風接近・通過の前日までに発令することとなっており、避難に時間のかかる方が避難を完了するために十分な時間を確保できるよう取り組んでいます。

――地域住民にとっての日々の備えとして、区が提供している情報発信や支援ツールはありますか。

危機管理部:ハザードマップにも情報の入手方法について記載がありますが、世田谷区防災ポータルのほか、区ホームページ、災害・防犯情報メール配信サービス、X(旧Twitter)などで防災に関するさまざまな情報を発信しています。緊急時には不確実な情報が拡散することもありますので、正しい情報を入手した上で判断、行動していただきたいと思います。

世田谷区防災ポータル
世田谷区防災ポータル

地域と行政が一体で取り組む世田谷区の防災訓練と備え

――尾山台地域における町会や学校など、地域ぐるみの防災連携の実例はありますか。

危機管理部:震災については、避難所運営訓練を毎年実施しています。2024(令和6)年度は、「世田谷区立尾山台中学校」で町会の方と一緒に防災資機材操作方法の指導・説明を受けたり、「世田谷区立尾山台小学校」では、運営スタッフのほかに小学5年生の児童とその保護者による参加型防災体験イベントという方式で避難所運営訓練を実施しました。

「等々力防災Watch! vol.22」でも、こうした情報が発信されている「(引用:世田谷区HP)
「等々力防災Watch! vol.22」でも、こうした情報が発信されている「(引用:世田谷区HP)

危機管理部:さらに、防災知識の普及や自助・共助の意識向上等を目的とした防災塾では、町会・自治会、避難所運営委員、区民防災会議委員、学校関係者、PTA・おやじの会、福祉事業者など合計51名が参加。“避難行動のアップデートへの取り組み~在宅避難への転換など~”をテーマに講義とグループワークを行いました。参加者からは、地域の特徴に応じた話し合いができたことや、若い世代も交えた議論が活発だったことなど、前向きな声が寄せられました。

世田谷区では、「災害時お家生活のヒント(どうしたらいいの?在宅避難)」という冊子を全世帯へ配布している(引用:世田谷区HP)
世田谷区では、「災害時お家生活のヒント(どうしたらいいの?在宅避難)」という冊子を全世帯へ配布している(引用:世田谷区HP)

危機管理部:なお、風水害においては、水害時避難所開設訓練時に学校の先生に立ち会ってもらうなど、水害時避難所となる学校とも連携しています。

――世田谷区の防災施策における課題や、今後強化したいことについてお聞かせください。

危機管理部:風水害に備えるためには、日頃からご自身がお住まいの地域の水害等のリスクを把握し、適切な避難行動を確認しておくことが重要です。そのため、区のハザードマップには、地域の浸水想定や避難所の位置、避難行動のタイムライン等を掲載しているほか、二次元コードによる風水害時の情報入手方法等も掲載し、より活用していただけるように工夫しています。情報入手方法の中には、スマートフォンなどで事前に登録・フォローしておくことで、スムーズに情報が受け取れるものもありますので、ぜひ登録をお願いします。

洪水・内水氾濫ハザードマップの情報面(引用:「世田谷区洪水・内水氾濫ハザードマップ」)
洪水・内水氾濫ハザードマップの情報面(引用:「世田谷区洪水・内水氾濫ハザードマップ」)

危機管理部:引き続き、ハザードマップの周知徹底を図るとともに、さまざまな機会を通じて、各々が風水害に関する備えをしていただけるよう啓発に取り組んでいきます。

左から三好憲俊様(危機管理部防災対策課)、北島寿康様(危機管理部災害対策課 災害対策担当係長)、工ドウ誠様(危機管理部副参事)
左から三好憲俊様(危機管理部防災対策課)、北島寿康様(危機管理部災害対策課 災害対策担当係長)、工ドウ誠様(危機管理部副参事)

世田谷区役所

危機管理部副参事 工藤(※)誠様(※「藤」の字は艸部)
危機管理部災害対策課 災害対策担当係長 北島寿康様
危機管理部災害対策課 三好憲俊様
所在地:東京都世田谷区世田谷4-21-27
電話番号:03-5432-1111
URL:https://www.city.setagaya.lg.jp/02049/8233.html
※この情報は2025(令和7)年8月時点のものです。