地元の人手作りの土俵がある「地域の学校」

創立時から受け継がれる地域住民の郷土愛が子どもたちを守り育てる「府中市立住吉小学校」

2024(令和6)年4月に市制施行70周年を迎えた府中市。その南西部に位置する住吉町の「府中市立住吉小学校」は、京王線「中河原」駅から徒歩7分の場所にある。着任して3年目となる木下和紀校長先生に、学校の歴史や地域住民との関わり、力を入れて取り組んでいる活動、中河原周辺の魅力などについてお話を伺った。

第13代校長の木下和紀先生
第13代校長の木下和紀先生

植樹から校庭整備まで、PTA・地域の人の協力でつくった学校

――まずは「府中市立住吉小学校」の歴史や概要についてお聞かせください。

木下校長先生:1968(昭和43)年に開校し、今年で56年目を迎えました。本校は、PTAや地域の人の協力によって作られたというのが大きな特徴です。校庭の築山や遊具作りから植樹に至るまで、地域やPTAの方々が協力してくださったそうです。川沿いにある学校なので校庭にも石がゴロゴロしていて、PTAと地域の方々が毎週のように来ては子どもたちと一緒に拾って整備していたと聞いています。土を盛って作った朝礼台は、いまも健在です。

「府中市立住吉小学校」校舎外観
「府中市立住吉小学校」校舎外観

木下校長先生:開校時は校舎が未完成で体育館もまだなかったため、屋上で入学式を行ったそうです。その後、開校時493名だった児童数は5年目に1,000人を超え、2回ほど校舎を増築しました。ピーク時の1980(昭和55)年には1,300人を超える児童がいて、職員室を半分に区切って教室にしていた時期もあったようです。そのため、職員室はなく、先生たちは学年ごとに小さな部屋で仕事をしていたそうです。全校遠足で高尾山に行くときには京王線を貸し切って行っていたと、当時小学生だった卒業生から聞きました。

昔は学区が広くて鎌倉街道のずっと向こうから通ってくる子どもたちがいましたが、「四谷小学校」や「南町小学校」などができて現在の学区になりました。現在の児童数は433人。府中市には現在も児童数1,000人を超える学校が2つあり、本校は市内では真ん中より少し小さいくらいの規模です。

校内でも学校の歴史を掲示している
校内でも学校の歴史を掲示している

木下校長先生:校庭に土俵があることも本校の特徴でしょう。これも地域の人たちとPTA・職員が多摩川の土を集めて作ってくれたものと聞いています。卒業生の自慢でもあり、毎年春には歴代のPTA会長が集まって整備していただいています。府中市には青少対(青少年対策地区委員会)という団体があり、「四谷小学校」と「日新小学校」と本校、そして「府中第八中学校」から成るここ第八地区の青少対は、毎年小学生の相撲大会を開催しています。会場は3校持ちまわりなので、3年に1回は本校の土俵を使っています。来年度は住吉場所となります。また、当時は音楽にかなり力を入れていたと聞いています。写真を見ると当時の音楽部には立派な楽器がそろっていて、TBSの音楽コンクールにも出場しています。

PTAの皆さまによる土俵整備(提供:府中市立住吉小学校)
PTAの皆さまによる土俵整備(提供:府中市立住吉小学校)

子どもたちはとても素直で人懐っこく、何事にも一生懸命取り組む

――「府中市立住吉小学校」の教育目標である『かしこく(問題解決力)・やさしく(人間関係形成力)・たくましく(実践力)』に沿うような具体的な教育活動などがあれば、教えてください。

木下校長先生:「かしこく(問題解決力)」の部分でいうと、算数の基礎学力を定着させるため、東京都の教育委員会が推奨する教材「東京ベーシック・ドリル」を活用して月1~2回の朝学習と月1回授業時間での補習を行っています。また、クラブ活動では子どもたちの自主性を特に大事にしていて、どんなクラブ活動をやりたいか子どもたち自身が考え、自分たちで部員を集めてクラブを成立させるようにしています。昨年度は「推し活クラブ」というのがありましたね。

「やさしく(人間関係形成力)」の部分では、1年生から6年生まで一緒になって遊んだりする縦割り班活動を月1回程度行い、異学年交流を深めています。クラブ活動や委員会活動も、異学年で協力し合って進めることを大事にしています。

「たくましく(実践力)」につながる体力面では、年間を通して長縄跳びに取り組み、クラス全員で3分間で何回跳べるかを記録しています。冬には持久走の期間を設け、休み時間に全員で取り組んでいます。

図書室の前にも本が並ぶ
図書室の前にも本が並ぶ

――通われている子どもたちに対しては、どのような印象をお持ちでしょうか。

木下校長先生:実は私も着任したときに先生方に同じ質問をしました。先生方はいろいろな学校を経験してきているので、学校ごとの子どもたちの特徴をよく知っているんですよね。多くの先生が、本校の子どもたちはとても素直で、人懐っこくて、いろんなことに一生懸命取り組むと答えてくれました。私もそう感じています。

子どもたちが育てる植物などが置かれた中庭
子どもたちが育てる植物などが置かれた中庭

――地域住民との関わり・交流に関する活動などがあれば、教えてください。

木下校長先生:まずは青少対が主宰するイベントですね。子どもたちが活躍する機会を用意していただき、子どもたちの貴重な体験となっています。相撲大会の他に、7月に「府中第八中学校」で行う「サマー・フェスティバル」などがあります。毎年、先ほど申し上げた第八地区の4校に加えて都立府中西高生や府中市青少年吹奏楽団などが集まって、音楽や踊りなど多様なパフォーマンスを披露します。

本校は運動会で行った南中ソーランを披露するのですが、今年は運動会前に「法政大学」のサークルの人に来てもらって指導を受けました。子どもたちは彼らの踊りを見て「すごい!」となり、アドバイスをもらって一段と上達しました。動きだけでなく、掛け声も良くなりました。本校の子どもたちは本当に素直で一生懸命なんです。

「府中市立府中第八中学校」で行われた「サマー・フェスティバル」では南中ソーランを披露
「府中市立府中第八中学校」で行われた「サマー・フェスティバル」では南中ソーランを披露

木下校長先生:地域の方々も学校運営に積極的に関わってくださっています。週2回行っている朝の読み聞かせは、地域の方が取り仕切り、保護者と一緒にやっていますし、月に何回か算数の苦手な2・3年生を対象に実施している「放課後算数教室」も、地域の方々が中心となって開いています。雨の日も、暑い日も、寒い日も、毎日見守り隊として通学路に立ち、子どもたちの登下校を見守ってくださるのも大変心強いです。

また、コロナ禍前には地域の人に来てもらって昔遊びなどを教えてもらっていましたので、徐々に再開できたらと考えています。

きれいに整備された広い校庭
きれいに整備された広い校庭

市民が誇る歴史と豊かな自然が魅力の府中中河原

――昨年度は開校55周年を迎えられたそうですね。校長先生のコメントでは“学校や郷土を愛し知・徳・体の調和のとれた「誇りのもてるふるさと府中を創り世界に活躍する府中っ子」の育成”を目指していらっしゃるとのことですが、これらに即したイベントなどがあれば教えてください。

木下校長先生:55周年に関連した行事は特にありませんが、毎年6月10日の開校記念日の前後に、全校朝会などで子どもたちに開校時の様子を伝えています。この辺りには卒業生の方が多く住んでいるので、当時の様子を聞くことができるんです。

――府中中河原エリアの環境は、子どもたちが育つ上でどのような魅力があるとお考えでしょうか。エリアに対する印象があれば、合わせてお教えください。

木下校長先生:人的環境が素晴らしいです。地域の方々の協力によってつくられた学校だとお話しましたが、今も地域の方々が非常に協力的です。昔からこの地に住んでいて学校づくりから関わってきたという流れが、いまも続いてるのだと思います。子どもたちへの関心が強く、子どもたちを非常に大事にしてくれます。この地域に住み続けている卒業生も多く、学校に関わってくれている方がたくさんいらっしゃいます。

「中川原」駅周辺の街並み
「中川原」駅周辺の街並み

木下校長先生:それと、府中は歴史ある街だという自負をお持ちの方が多く、みなさん地域のお祭りに力を入れています。特に1,900年の歴史を誇る「大國魂神社」の例大祭「くらやみ祭」への想いは非常に強いですね。府中っ子の血が騒ぐらしいです。中河原を含め府中各町から山車やお神輿が集まる盛大なお祭りで、毎年GW期間に開催されています。

「大國魂神社」の例大祭「くらやみ祭」(提供:「大國魂神社」)
「大國魂神社」の例大祭「くらやみ祭」(提供:「大國魂神社」)

木下校長先生:住吉町では近くの「御嶽神社」のお祭りも大事にされていて、本校の子どもたちも参加しています。豊かな自然環境も魅力です。本校のすぐそばには多摩川が流れていますし、広くて緑豊かな「府中市郷土の森公園」も近いですし。本校にも毎年のようにツバメが来て、今年も昇降口の上に巣を作っています。

「府中市郷土の森公園」のハス池
「府中市郷土の森公園」のハス池

――最後に、これから府中中河原エリアにお住まいになられる方々へメッセージをお願いします。

木下校長先生:この地域に住めば、歴史ある府中に関われます。多摩川や「府中市郷土の森公園」などがある自然豊かな地域ですし、地域の方々は子どもたちをすごく大事にしてくれます。そういうところがこの地域の特徴だと思いますので、子育てもしやすいのではないかと思います。

木下 和紀 校長先生
木下 和紀 校長先生

府中市立住吉小学校

木下 和紀 校長先生
所在地:東京都府中市住吉町2-30
電話番号:042-361-6319
FAX:042-334-0873
URL:https://www.fuchu-tokyo.ed.jp/fuchu12s/
※この情報は2024(令和6)年6月時点のものです。