d’s cafe bar
株式会社多摩アートコレクションが運営するカフェ&バー。店主を務めているのは、飲食店のデザインや設計などを手掛ける空間デザイナーの久保寺奨さん。もともと空間デザイナーを目指したきっかけが「良質な食事空間づくり」だったことや、クライアントからの信頼を得るのに飲食店の経営やオペレーションの経験がきっと役立つだろうという考えを持っていたことから、いつかは自分の店を作りたいと思っていたという久保寺さん。ちょうど事務所を置くための物件を探していた時に良い物件と出会い、店を出すことを決意。デザインの仕事をする傍ら、自ら作業して店づくりをスタートし、遂に2024年1月、「d’s cafe bar」をオープンさせた。
入口は全開放できる引き違い戸となっており、日中は採光で明るく開放的。しかし、照明を落とした夜の店内は、バーと呼ぶのにふさわしい落ち着いた大人な雰囲気に一転する。カウンターや床に照明を入れ、空間を仕切ったり、印象づけたりする工夫がなされているなど、店内の随所に久保寺さんのデザイナーとしてのこだわりが見られる。また、奥様のお父様である油彩作家、小田切訓さんの作品が間接照明入りの額装におさめられて飾られていたり、プロジェクターで投影されていたりなど、単なる飲食空間だけではなく、アート空間としても楽しめる場所となっている。
そんなこだわりの空間の中で提供されているのは、ワインやビール、日本酒やノンアルコールなどのドリンクと、アルコール類に合うおつまみ類、ランチやディナーといった食事メニューなど。中でも店のおすすめは、東京・芝公園に店を構えるイタリアン「イタリア料理 樋渡」から仕入れたソースで作るパスタ。ソースは「ミートソース」「サーモン柚子クリーム」「白身魚のラグー」の3種類から選ぶことができ、ワインなどと合わせて食すのもおすすめ。
実は現在、店には料理人がいない。つながりのあるお店の冷凍商材(調理済)を仕入れて料理を提供するスタイルに敢えてした背景にあるのは、「飲食店開業のハードルを少しでも下げ、出店を考えている人の背中を押したい」という想い。「料理は他の人の力を借りて出すこともできますし、実は店の内装も敢えてラフな作りをした部分もあるのですが、全体のデザインのマネジメントさえしっかりされていれば、完璧に作り込まなくても店は作れます。こうした店づくりのモデルケースを自分がこの店を作ることで伝えたかったんです」と久保寺さんは語る。
目下、店として目指しているのは「地域になじみ、地域の方が集まれる場所」。そんな場所になるべく、今後は地域の人たちがワークショップやイベントなどを開催したり、飲食業で独立を目指す人がテストキッチンとして店を使えるように店づくりを展開していく予定だという。
d’s cafe bar
所在地:東京都府中市四谷1-31-12
電話番号:042-370-1504
https://designista-s.net/cafe/