特別インタビュー

誰一人取り残さない学校をつくるために“みんなで遊ぶ”「武蔵村山市立第一小学校」

狭山丘陵に象徴される豊かな自然環境に恵まれた東京都武蔵村山市。都心部のベッドタウンとしての機能もあわせ持ち、バランスのとれた住環境が魅力です。将来的に多摩モノレールが延伸される計画もあるようで、これから子育てを予定しているファミリーにとって特に注目度の高いエリアです。

今回は「武蔵村山市役所」に隣接する「武蔵村山市立第一小学校」を訪ね、校長の押本純樹先生に学校の概要や特色ある取り組み、地域の魅力などについてお話を伺いました。

今回お話を伺った押本純樹校長先生
今回お話を伺った押本純樹校長先生

開校より110周年を迎えた「武蔵村山市立第一小学校

――まず「武蔵村山市立第一小学校」の概要についてお教えください。

押本先生:本校は1914(大正3)年の開校より110周年を迎えました。児童数は374名、各学年2クラスの12学級に加えて、情緒と知的の特別支援学級が4クラスずつあります。

――続いて教育目標について教えてください。

押本先生:教育目標は「進んで学ぶ子 元気な子 心の強い子 やさしい子」です。また学校経営方針としてHPにも掲載していますが、「みんなで創る『誰一人取り残さない学校』〜自立・共生・創造を目指して〜」を目指す学校像としています。

以前は「おいてきぼりをつくらない」という表現だったんですけど、SDGsの基本原則に“誰一人取り残さない”という言葉があり、本校でも3年ほど前から取り入れるようになりました。また学校だけではなく地域や保護者、子ども自身もその思いを共有できるよう“みんなで創る”という文言をつけ加えました。

HPに掲載されている「令和6年度 武蔵村山市立学校 学校経営方針」(引用:武蔵村山市立第一小学校HP)
HPに掲載されている「令和6年度 武蔵村山市立学校 学校経営方針」(引用:武蔵村山市立第一小学校HP)

――教育活動の中でも、特色ある部分を教えてください。

押本先生:子どもたちにはとにかく「みんなで遊ぼう」と言っています。経営の具体策にも挙げているように、『誰一人取り残さない学校』をつくるためには、まずはみんなで遊べることが大切だと思います。本校には若い先生も多く、休み時間になると一緒に子どもたちと遊んでいます。

「武蔵村山市立第一小学校」の校庭
「武蔵村山市立第一小学校」の校庭

押本先生:もうひとつは「みんなで歌おう」です。本校では、音楽集会を月に1回行っています。さらに今年は3年に1度の音楽会もあり、保護者をはじめ学校運営協議会の皆さまにもご覧いただきました。また開校110周年の記念式典では、谷川俊太郎の「春に」の合唱もあり、それも素晴らしかったです。群読してから歌ったんですが、それはこれまでに聞いたことがないような迫力のある素敵な歌声でした。

そのほかにこだわって取り組んでいるのは、スポーツ大会です。11月のサッカー大会に始まり、12月の駅伝大会、そして例年1月下旬に開催されるドッジボール大会と、大会が3つあります。

以前は放課後に練習をしていましたが、昨今は教員の働き方改革もあり練習時間を確保することが難しく、時程を工夫することで練習時間を確保しています。その結果、サッカー大会は出場した2チームのうち1チームが3位に入賞しました。駅伝大会も男子が優勝と3位、女子が準優勝と3位の成績を残し、今年は4人が区間賞をとる素晴らしい結果でした。

駅伝大会の様子(引用:「武蔵村山市立第一小学校」公式Xより)
駅伝大会の様子(引用:「武蔵村山市立第一小学校」公式Xより)

開校110周年を記念して行われたスペシャルな「地区まつり」

――開校110周年を記念して行われたイベントやキャラクターについてのお話などもお聞かせいただけますでしょうか?

押本先生:周年行事と言えば式典と祝賀会をセットに行うのが一般的なんですけど、110周年を迎えるにあたり祝賀会ではなくおまつりをしようという意見が持ち上がりました。もともと「地区まつり」という地域のイベントがあるんですけど、コロナ禍でおまつりができなかったことや、PTAや青少年対策地区委員会とのつながりも希薄になっていたところがあり、子どもたちも一緒に楽しみながらみんなでお祝いができれば良いかなと私も思いました。

そこで本校の校庭を会場にて2024(令和6)年10月19日に開校110周年のスペシャルな「地区まつり」を開催することになりました。青少対や地域の自治会、PTA、各地域の事業所なども協力してくれて楽しいひとときを過ごすことができました。

「地区まつり」では、子どもたちから市長へインタビューも行ったそう!(引用:「武蔵村山市立第一小学校」公式Xより)
「地区まつり」では、子どもたちから市長へインタビューも行ったそう!(引用:「武蔵村山市立第一小学校」公式Xより)

――記念キャラクターについても詳しくお聞かせください。

押本先生:名前は「がっちゃん」と言います。去年の今頃ですね、児童会を通してキャラクターを募集しました。全校児童に絵を書いてもらい、最終的に当時の1年生が描いた絵が選ばれました。パッと見た感じが学校らしいですよね。

当時の1年生が描いた絵を採用した、開校110周年記念キャラクター「がっちゃん」。
当時の1年生が描いた絵を採用した、開校110周年記念キャラクター「がっちゃん」。

「がっちゃん」という名前は私が提案したんですが、コロナ禍で希薄になった学校・保護者・地域のつながりをもう1回ガッチャンと電車が連結するように力をあわせてやっていけたらという思いを込めて命名させていただきました。

動物好きの一人の先生が実現させた、夢の動物飼育

――次に校内で飼育している動物について、どんなきっかけで動物を飼うようになったのかお聞かせください。

押本先生:きっかけは前任の副校長で、動物が大好きな方でした。当時、本校にはうさぎ一匹しか飼っていなかったのですが、子どもたちのためにももっといろんな動物を飼いたいと考えていたようです。

そこへ東京都から小学校動物教育推進校募集の案内が届いて、「やりましょう!」となりました。2018(平成30)年に東京農工大学のバックアップもありまして、ヤギを2頭飼い始めました。また、「青梅畜産センター」で烏骨鶏を譲っていただけるという情報を副校長が聞きつけ連れて帰ってくるということもありました。

東京農工大学のバックアップもありヤギを飼育
東京農工大学のバックアップもありヤギを飼育

押本先生:小鳥を飼っている人と知り合うこともあり、そのまま仲良くなって文鳥も学校で飼うこともありました。これだけの動物の世話をするのはすごく大変なことですが、前任の副校長は行動力とバイタリティーにあふれた方で、動物の世話だけではなく写真プリント入りのTシャツまで制作販売するほどでした。

2024(令和6)年度に杉の子学級がデザインした写真入りTシャツ
2024(令和6)年度に杉の子学級がデザインした写真入りTシャツ

子どもたちにとっては動物とのふれあいやお世話を通して、いのちについて考えるきっかけにもなります。3年前にはヤギの赤ちゃんの出産にも立ち会うことができました。今年度は、11月に行われたデエダラ祭り(市民祭り)で杉の子学級(※1)が「まちづくり学習」の一環として、もっとヤギのことを知ってもらうために、自分たちでデザインしたTシャツを販売しました。

他にも子どもたちの気持ちの安定につながるアニマルセラピーのような効果も期待できるため、その副校長が異動した後も、飼育を続けています。

(※1)特別支援学級の名称

手伝える人が手伝えるときに手伝う新たなPTA活動の仕組み

――保護者や地域とのつながりについてはいかがでしょうか?

押本先生:ひとつは学校運営協議会があるので、運動会や行事など学校の取り組みを実際に見ていただき、評価してもらっています。

またPTAについては、コロナ禍になって大幅に縮小された活動が、110周年を機に見直されました。もともとこの地域は学校とのつながりが強く、その特性がPTAにとって負担になっていた部分もあったようです。今は手伝える人が手伝えるときに手伝うというスタンスでやっていただいていると聞いています。

110周年の記念式典のときもこのサポートシステムを使って登録制にしたところ、40名以上もの方がお手伝いに来てくれました。PTAの活動は従来のように強制されると負担に感じるものも、できる人がやれば良いという雰囲気にしたことで参加してくれる人も増えたような印象です。時代のニーズに合っているのかなと思います。

時代にあったアプローチ。PTAサポーター募集のお知らせ
時代にあったアプローチ。PTAサポーター募集のお知らせ

狭山丘陵の自然が広がり、伝統文化や地域の行事も脈々と受け継がれる武蔵村山市

――武蔵村山市の魅力、おすすめのスポットについてお聞かせください。

押本先生:武蔵村山市の魅力は、人があたたかいというところ。あと子どもたちは素直です。いろんな地域で担任をして来ましたけど、武蔵村山の子は本当に素直なんです。他の地域から来た教員もみな同じような話をします。

市内に鉄道駅が無いため私立中学校を受験する子もほとんどいませんし、みんなそろって「武蔵村山市立第一中学校」に進学します。学校評価アンケートの結果にもありますが、子どもたちは学校が大好きで、和気あいあいとした雰囲気です。

進学先の「武蔵村山市立第一中学校」
進学先の「武蔵村山市立第一中学校」

押本先生:また、おすすめといえば狭山丘陵ですね。「野山北公園」や「六道山公園」があって、武蔵村山らしさを感じられる良い場所だと思います。「野山北公園」は本校の学区にあるので、子どもたちもよく遊びに行っていると思います。2023(令和5)年にはアスレチック遊具も整備されて、公園全体が明るくなったような感じがします。

「野山北・六道山公園」
「野山北・六道山公園」

――最後に、これから武蔵村山市にお住まいになる方へメッセージをお願いいたします。

押本先生:繰り返しになりますが、武蔵村山は人があたたかいところです。自然も豊かで、小松菜やほうれん草、みかんなど美味しい食べ物もあります。都市部から来ると東京都の印象が変わるかも知れません。「村山大島紬」という伝統文化もありますし、270年以上続く「横中馬獅子舞」もあり、そういうものが脈々と受け継がれているのが武蔵村山市だと思います。

市報の表紙にもなっている「横中馬獅子舞」(引用:市報「むさしむらやま」令和6年5月15日発行分より)
市報の表紙にもなっている「横中馬獅子舞」(引用:市報「むさしむらやま」令和6年5月15日発行分より)

押本先生:余談ですが、教員をやるならここが良いと思います。子どもたちの伸びを感じられるのは教員にとって何より楽しいことだと思います。都市部と比べると勉強ができる子もいればできない子に少し差があり、勉強面に課題が見られるかもしれません。指導する側も工夫をしないといけないのですが、ある瞬間を経て子どもたちに思いが伝わり、グーンと予想以上の力を発揮することがあります。教員としてやりがいも感じられる面白い場所だと思っています。

校長 押本純樹先生
校長 押本純樹先生

武蔵村山市立第一小学校

校長 押本純樹先生
所在地:東京都武蔵村山市本町1-1-11
電話番号:042-561-1751
URL:https://www.city.musashimurayama.lg.jp/school/mmced1s/index.html
※この情報は2025(令和7)年1月時点のものです。