きめ細かい指導を実践する大規模校

ポジティブな声かけで子どもたちをサポートする「世田谷区立砧中学校」

「世田谷区立砧中学校」は、2013年度(平成25年度)から指定を受けている「地域運営学校」として 地域住民や保護者が学校運営に携わることで、地域に開かれた学校づくりを目指している。昨年4月に着任した建部校長先生に、同校の取り組みや砧エリアの魅力について伺った。

大規模校だからこそ、きめ細かいケアを意識

世田谷区立砧中学校
世田谷区立砧中学校

――まずは学校の概要を教えてください

建部校長:本校ができたのは1947年(昭和22年)。それ以前は宮内庁の御料地で、敷地内には古墳もあります。昨年度には開校70周年を迎えた、歴史ある学校です。現在、全校生徒は612名。都内でも規模の大きい学校に入ります。生徒数が多いので大変ですが、「伸ばすべき子どもは伸ばし、支えるべき子どもは支える」を基本理念に、きめ細かい指導を実践しています。

建部校長先生
建部校長先生

――大規模校ならではの取り組みはありますか

建部校長:そうですね。一クラスあたり35~40名と生徒数が多いので、一人の担任教諭がクラス全員の状況をつぶさに把握するのは難しいでしょう。その分、学校とのつながりを生徒一人ひとりが感じられるよう、全教員が全生徒をケアする意識を持っています。たとえば女子生徒なら、男性の担任教諭には打ち明けにくい悩みもありますよね。でも生徒も2・3年生になると、「他の先生に相談するのは担任の先生に申し訳ない」と気を遣います。そこで夏休み明けに、堂々と担任以外の教員を指名できる「そうだんウィーク」を設けているんです。そこで信頼関係が築ければ、その後も相談しやすくなりますよね。養護教諭や私を指名する生徒もいますよ。

ランチルーム
ランチルーム

――授業の特色について教えてください。

建部校長:どの教科でも、グループ学習を推奨しています。通常の先生対生徒という授業形式では、手を上げて発言するのが苦手な子は参加しにくい面がありますよね。でも5、6人のグループなら発言しやすいので、全員が参加意識を持つことができます。気軽に意見交換できることで、子どもたち同士の学び合いにもつながると考えています。

「日本語」の授業でアサーション・トレーニングを実施

渡り廊下と一体化した広々としたスペース
渡り廊下と一体化した広々としたスペース

――授業の進め方以外で、力を入れている取り組みがあれば教えてください

建部校長:書き言葉と話し言葉の違い、丁寧な言葉遣いの大切さ。これらには特に力を入れて指導しています。いまの生徒たちは、小学生の頃からLINEなどのメッセージアプリを利用していて、短文のやりとりがクセになっています。面と向かった会話でも、短いフレーズや略語を多用します。普通なら「ちょっとそこをどいてもらえる?」というところを、「邪魔」の一言で済ませてしまう。相手の気持ちを配慮した丁寧さが欠けているんです。当然、冗談のつもりで口にした一言が相手を傷つけるといったことが起こり、トラブルにつながります。相手の気持ちになって言葉を選ぶようにと教えています。

特別支援学級の調理実習
特別支援学級の調理実習

――そういったことを指導する授業もあるのでしょう

建部校長:世田谷区の中学校には「日本語」という教科があります。本校ではこの授業の中で「アサーション・トレーニング」を行っています。アサーションとは、相手を尊重しながら自分の意見をしっかり伝えるコミュニケーションスキルのこと。仏頂面で「それ取って」と言われるのと、笑顔で「それを取っていただけますか」と言われるのでは、気持ちが全然違いますよね。同じ意味でも相手が不快に思わない言い回しを教えています。

メッセージアプリのトラブル事例を集めた掲示
メッセージアプリのトラブル事例を集めた掲示

――生徒たちの反応はどうですか

建部校長:日常的な課題なので、生徒たちの関心も高いですね。生徒会が中心になってアンケートを実施し、メッセージアプリのやりとりで嫌な気持ちになった言葉を集めて掲示しています。周囲の大人の言葉遣いも重要ですね。私は若い頃に先輩に教わり、普段から生徒にも敬語を使っています。

休み時間の教室
休み時間の教室

――生徒とふれあう中で、先生方が心がけていることを教えてください

建部校長:休み時間には可能な限り校内をまわり、生徒を見かけたら笑顔でポジティブな声かけをするようにしています。もしその生徒が、人知れず悩みを抱えてギリギリのところにいたら、私たちの一言で救われるかもしれません。この考えのベースにあるのは、サリンジャーの小説『ライ麦畑でつかまえて』です。崖から落ちそうな子どもを瀬戸際でキャッチする。そんな存在でありたいと思っています。

地域の支えあっての学校

廊下の一角には、図書委員がテーマに沿って集めた本が並ぶ
廊下の一角には、図書委員がテーマに沿って集めた本が並ぶ

――地域の方々との関わりについてお聞かせください

建部校長:本校は地域に開かれた学校で、地域の会合が校内で行われることもよくあります。そういうときは、来校された方に必ず校内を案内することにしています。教室内で授業を見ていただくことも多いので、生徒も開かれた学校であることを肌身で感じていると思います。

――今後新たに取り組む予定の活動などあれば教えてください

建部校長:実は世田谷区の取り組みの一環として、部活動を来年度から地域主体へとシフトする予定です。公立中学校では、活動の盛んな部であっても顧問教諭の異動でしばしば廃部にせざるを得ないことがあります。そこで部を永続的に存続させるため、本校では地域の力を借りることにしました。学校は活動の場を提供する程度で、部の運営は地域の方にお任せし、顧問も務めていただくんです。

2面あるテニスコート
2面あるテニスコート

――具体的にはどんな部活動ですか

建部校長:一つは、2019年度新たに創設予定の囲碁・将棋部です。欧米には、老若男女が自由にチェスを楽しめる公園がありますよね。あんな風に地域の人が気軽に参加できるオープンな部にできればと考えています。もう一つは、屋上の農園で活動する栽培部。これは既存の部ですが、2019年度から地元の農家の方にさらなる協力を仰ぎ、地域主体のものにする予定です。運動部も日大の学生さんなどに来てもらうなど、みなさんの力を借りてやっています。まさに、地域に支えられている学校ですね。

栽培部の活動の様子
栽培部の活動の様子

人々の温かさが砧エリアの魅力

――砧エリアの魅力はどんなところでしょうか。

建部校長:魅力はこの地域にお住まいの方々です。一つは気さくで温かいこと。代々ずっとこの地に住んでいる方が多く、地元愛にあふれています。それでいて、違うところから来た人も快く迎え入れる懐の深さがあるんです。私は4月に来たばかりですが、みなさん街で会っても気軽に声をかけてくださいます。子どもたちにもそういう面があります。普通は中学生ともなると照れや反発心があって、学校外で教員に会っても自分から声をかけてくることは少ないですよね。でもここの生徒たちは、私を見つけると大きな声で「校長先生!」って呼びかけてくるんです。驚きましたね。

もうひとつは、ボランティア精神が根付いていること。行事などでお手伝いをお願いしたとき、人が集まらないということがないんです。進んで地域に貢献する両親や祖父母の姿を見ているからでしょう。子どもたちの中にも自然とボランティア精神が醸成されていると感じます。これは、この地域の人々の大きな魅力だと思います。

校長 建部豊先生
校長 建部豊先生

世田谷区立砧中学校

校長 建部豊先生
所在地 :東京都世田谷区成城1-10-1
電話番号:03-3417-2367・2368
URL:http://school.setagaya.ed.jp/tkita/
※この情報は2019(平成31)年2月時点のものです。