三鷹市の一貫教育について、一般社団法人エデュケーション・コミュニティの森田次郎さんに聞く

三鷹市ではすべての小中学校を中学校区ごとに「学園」呼んでおり、学園単位での「施設分離型小中一貫教育」を実践している。このような取り組みは近年数多くの自治体で行われるようになってきたが、三鷹市は先進的に取り組み、全国から注目を集めてきたという市である。また、その学園運営を、学園と地域住民で構成される「コミュニティ・スクール委員会」が主体となって行っているという点も特徴的である。

従来の学校施設を生かした小中一貫教育を行うことで、また、地域の人々が学校運営に関わることで、小中学校はどのように変わってきているのだろうか。今回は実際の保護者の声を聞くために、三鷹市出身・在住で、「探究学舎」講師をはじめ、子ども向けの体験企画やイベントも数々主宰している森田次郎さんにお話を聞いた。

■三鷹市の一貫教育についてお教えください

三鷹市では、各学校に「学校運営協議会」が設置されていて、学校・家庭・地域が協力しながら教育にあたるシステムがあります。この各学校の「学校運営協議会」のメンバーが兼務するかたちで、「コミュニティ・スクール委員会」が各学園にあり、学校運営や教育活動への参画をしています。三鷹市の一貫教育はこのコミュニティ・スクールを基盤として、小中一貫カリキュラムに基づき行われています。
コミュニティ・スクールの利点としては、地域の方が学校の運営に積極的に参加できるところではないでしょうか。学校というと、あまり開かれたイメージはないですが、三鷹市では地域の方の情報や意見を運営に取り入れている印象があります。

■具体的にどんなことをしているなど、ご存知のところはありますか?

私の娘が小学5年生なんですが、時々中学生が勉強を教えに小学校に来てくれたり、運動会の時にボランティア活動をしてくれたりという繋がりがあるようです。親御さんなど地域の方が授業のサポートをすることもあるようで、算数で授業の進度についていけない子がいたら、その子のサポートに入ってくれたりするようです。
カリキュラムも、9年間の一貫した学習内容になるよう、市レベル、学園レベルで毎年カリキュラムの改善、変更がなされ、必要なものと必要ではなくなったものを整理しているそうです。新しい教科が小中一貫教育とともに始まったというよりも、小中がともに教科指導を考えるようになったというイメージです。ただ、こちらは学園ごとに取り組み方が違うようです。

■そのほかに特徴的な取り組みはありますか?

一貫教育とは違いますが、地域子どもクラブ事業も盛んです。放課後や土・日曜日などに子どもたちが安全に安心していられる居場所で、文化やスポーツ活動の体験、自由遊びを通じて、自主性や創造性を伸ばしています。また、登下校の見守りも、地域の方が学校の門の前に立って見守ってくれるんです。見守りの方は地域のこともよくわかっているし、どの子がどの家の子といったことも、わりとわかっていらっしゃるので、そういう人たちが声をかけあって、下校時とか登校時に声をかけてくれるといいうのは、ふれあいも生まれるし、すごくいいことだと思います。

第一小学校は三鷹市でもっとも歴史の長い小学校ですが、周辺は新しい住民も多く、古くからの地域性と新しい地域性がうまく融合していると思います。小学校では地域性を活かして学区内の農家さんにご協力いただいて、農業体験も取り入れているそうです。

■三鷹にはどういうご家庭、お子さんが多いとお感じですか?

教育熱心な方が多い地域なので、中学受験をする人も多いですよ。三鷹高校が中高一貫校なので、そこを中学受験するんです。明星学園や国学院久我山、藤村女子、吉祥女子といった私立校もあるので、こちらを受検する人もいらっしゃいます。
あと、私も講師をやっている「探究学舎」という塾が三鷹にあるんですが、夏期講習に全国から子どもが来るくらい有名な塾なんです。この塾では詰め込みの教育じゃなくって、「宇宙はどうなっているのか」とか、「どうやって生命が生まれてきたのか」とか、起業とか株式の仕組みの話とか、いろんなテーマの話をして、子どもの「探究心」を刺激して没頭させていくんです。そういう塾があるっていうのも、けっこう魅力になっていて、教育熱心な方が集まってくるのかな、と思っています。

■三鷹市の良さについて教えてください

やはり、公園が多いことがまず一つですね。「井の頭恩賜公園」はもちろんですが、ちょっと行けば「野川公園」や「小金井公園」もあって、バスを使えばけっこう行きやすいので、まわりにも行っている人は多いですね。あとは「吉祥寺」駅に近くて買い物が便利というものうれしいですね。

「コミセン」も面白いですよね。三鷹市には各地区に「コミュニティセンター」があるんです。それを「コミセン」って呼んでいて、発祥は三鷹市なんです。「コミセン」には体育館とかプールとかがあって、子どもたちはもちろん、誰でも使えるように開放しています。運営は住民協議会がやっているので、料金も安いですし、安心して通えますよね。ほかにも図書館とか視聴覚室もあって、時々お祭り(イベント)なんかもやっていて、うちの子どもたちもよく「コミセンのプールに行ってくる」って言って出かけています。

あともうひとつ、市民団体がすごく活発に活動していることも三鷹の魅力でしょうね。本当に沢山の団体があるんですけれど、「市民協働センター」というところに行けば、たとえば子育てのサポートをしてくれる団体だとか、親子広場とか、いろんな団体を紹介してくれますから、関わりやすいと思います。活動のしかたを教えるっていうのもあるので、自分で活動したいという方も、わりと始めやすんだと思います。

実は私も、子育て団体の人たちと月に1回食事をする「協働メシ」というイベントをやっているんですが、ここにも、子育て支援団体の方や地域防災系の活動をしている方が来て、お互いに情報交換をしています。そうすると、一緒になにかをやろうという話になることもあるし、いろんな団体で一緒に活動することも生まれます。三鷹市は「団体がどうしたら活動しやすいか」とことも考えてくれていて、サポート体制も手厚いので、市民の活動が活発なんだと思います。こういうのをぜんぶ含めて、すごくバランスがいいから、子育て世代から人気なんでしょうね。

三鷹市の一貫教育について、一般社団法人エデュケーション・コミュニティの森田次郎さんに聞く
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井の頭公園
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 「都立野川公園」
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吉祥女子中学・高等学校
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三鷹市の一貫教育について、一般社団法人エデュケーション・コミュニティの森田次郎さんに聞く
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東三鷹学園 三鷹市立第一小学校
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藤村女子中学・高等学校
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三鷹市立第六中学校
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三鷹市の一貫教育について、一般社団法人エデュケーション・コミュニティの森田次郎さんに聞く
所在地:東京都三鷹市 

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