多様な価値観を育む国際交流、芸術教育にも取り組む「吉祥女子中学・高等学校」

「社会に貢献する自立した女性の育成」を建学の精神に掲げる「吉祥女子中学校・高等学校」。1938(昭和13)年の創設より80年を迎える歴史ある学校で、進学校でありながらも芸術コースを設置する多様性を尊重する校風が特徴だ。2018年4月1日現在、中学校、高等学校を合わせて1,617名の生徒が在籍し、6年間の中高完全一貫教育が実践されている。今回は「吉祥女子中学校・高等学校」に伺い、学校の沿革や特色ある教育活動、地域とのつながりについて、広報の綾部さんにお話を伺った。

現在の新宿区大久保後に「帝国第一高等女学校」として創設

――学校の沿革について教えてください

「吉祥女子中学校・高等学校」は、1938(昭和13)年に「帝国第一高等女学校」として創設されたのがはじまりです。当時は淀橋区百人町という地名だったようですが、現在の新宿区大久保のあたりに校舎がありました。創立者の守屋荒美雄(もりやすさびお)は、帝国書院の設立者でもあり、教育をもって社会に恩返しをしたいという意思のもとに開校されました。

東京大空襲によって校舎を焼失。吉祥寺へ校地を移転

――吉祥寺にキャンパスを移転することになった経緯は?

1945(昭和20)年の東京大空襲によって大久保の校舎は焼失してしまい、しばらくの間は青空教室などで対処していたようですが、1946(昭和21)年に現在の場所へと校地を移転しました。

この場所はもともと守屋荒美雄が所有していた土地で、寄宿舎として学生を住まわせていたそうです。しかしながら、やむを得ない状況に見舞われたため、当時3,300坪あった土地を無償で提供し校舎を建設しました。また、校地の移転と合わせて校名が改称され、1947(昭和22)年に現在の校名となりました。2018年度は記念すべき創立80周年を迎えます。

「社会に貢献する自立した女性の育成」を建学の精神に

――建学の精神と校是についてお聞かせください

創立者の守屋荒美雄とその後を継いだ守屋美賀雄(もりやみかお)が、社会に貢献する自立した女性を育成したいという想いから創設された学校で、建学の精神には「社会に貢献する自立した女性の育成」と掲げられています。また、それを具体化する指針として、「知的探究心を育みましょう」「言葉と行動に責任を持ちましょう」「互いの価値観を尊重しましょう」という3つの校是があります。

「知的探究心を育みましょう」では、生涯にわたり学び続けることの素晴らしさに触れ、「言葉と行動に責任を持ちましょう」では自分で考え自分の言葉で誠実に語ることと示されています。さらに社会性や協調性、国際性を身につけることにもつながる重要な姿勢として、「互いの価値観を尊重しましょう」とも明記されています。学習面はもちろん、日常の生活においても3つの校是を意識しながら教育活動が行われています。

多様な価値観を育む国際交流、芸術教育

――特色ある教育活動についてお聞かせください

本校では古くから国際交流が盛んで、中学3年次にはほぼ全員がカナダに行き、姉妹校と交流します。姉妹校の「Queen Margaret’s School」や現地の公立学校を訪問し、ビクトリア市やその周辺でのホームステイ4泊を含む、全8泊9日の日程です。

高校生になると10~12ヵ月間の長期におよぶ留学や姉妹校より留学生の受け入れもあり、文化的背景の異なる人たちとの交流を通じて、多様な価値観や複眼的なものの見方を養います。

昨年度はアメリカの学校と新たな友好関係を結び、多数の留学生を迎えることができました。今年度はアジア方面の高校との交流の機会を新たに創出する計画で、アジアの一員としての視点を育てていきたいと思います。

また、本校ならではの教育活動として1969(昭和44)年に開設された芸術コースにはじまる芸術教育(音楽、美術)が行われているのも特色のひとつです。

音楽では、中学1年生から高校1年生までの4年間にわたり声楽(合唱)、器楽(弦楽器)、鑑賞の3つを柱にした授業が行われています。中学1年生では2人1組で1台のヴァイオリンを使い、楽器の扱い方や基本的な構え方などから学びます。

また美術ではデザイン学習という科目を通じて、実際の社会の課題に取り組むプロジェクト型の学習を行っています。その一例として、地元商店会との合同企画で商店のマークや看板などをデザインした「商店CIプロジェクト」や、「子どものための遊具プロジェクト」と題した大型遊具を制作する取り組みなどがあります。

学問と言うと文系、理系という枠だけで捉えてしまいがちですが、もっと広い視野で学問というものを見つめたときに、多様な価値観を育む国際交流や芸術教育の大切さに気がつくと思います。

生徒たちの自主的な取り組みによって開催される“吉祥祭”

――日々の学校生活で大切にしていることは?

本校の学校生活において自主自立という言葉はいろいろな場面で生徒たちに語りかけられているのですが、クラブ活動ひとつをとっても学校行事においても生徒たちの自主的な取り組みというのを尊重しています。

例えば毎年9月に開催される「吉祥祭」は本校でもっとも大きな行事のひとつですが、中3から高2までの選挙によって選ばれた代表メンバーが実行委員会を組織し、文化祭全体のテーマ決めから参加団体の審査、規約づくりや当日の運営なども含めてすべて生徒たちが主体になって取り組みます。

およそ半年間かけて準備するのですが、毎年テーマが違うので、今年はなぜそのテーマなのかという理由も含めて全校生徒の前でプレゼンする必要もあり、テーマ決めをするためだけに合宿をして議論を重ねることもあります。全校に周知させてテーマにのっとった統一感のある「吉祥祭」を開催するためにも、はじめから終わりまでそのほとんどを生徒たちに任せています。

また「吉祥祭」では近くにある「武蔵野市立本宿小学校」や「杉並区立松庵小学校」の児童と一緒に制作した作品を展示したり、お隣の「樫の実幼稚園」の園児とその保護者を招待してイベントをやったりと、地域の方にもお楽しみいただけるさまざまな取り組みを行っています。毎年地域の方も多数お越しいただき、2日間で約13,000人もの来客があります。

地元商店会や地域の子どもたちと関わるなかで得られる学びの機会

――地域との関わりについて具体的なエピソードをお聞かせください

「商店CIプロジェクト」ですが、西荻窪にある5つの商店の看板やシャッター、商品シールやパンフレット、ロゴマークなどをデザインしました。自分たちがやりたいことと店主や関係者から求められることに違いが生じる場面もあり、厳しい指摘を受けながらも試行錯誤を経てようやく採用されたときは大きな達成感があったようです。

また「子どものための遊具プロジェクト」は、お隣の「樫の実幼稚園」にご協力いただいて段ボール素材の大型遊具を制作する毎年恒例となった取り組みです。遊具を制作するにあたって事前に幼稚園を訪問し、お子さんたちのボディサイズを計らせてもらうところから、どんな遊具が楽しいかをリサーチし、それを踏まえて遊具を企画、制作します。さらに実際に遊んでもらったら投票による評価まであり、単なる作品づくりではなくデザインの本質を学んでいきます。

地域とのつながりは他にも、吹奏楽部は地域のイベントに招待いただく機会も多く、「武蔵野警察署」から依頼があって交通安全のパレードに参加して演奏したこともあります。また、生物クラブは「井の頭恩賜公園」の水質調査に長年取り組んでいて、毎年その結果をまとめて文化祭で発表しています。

地域とのつながりといった部分も大切に

――最後に地域の方へメッセージをお願いいたします

地域の方にとって私学は接点を持ちづらい状況というのがあると思います。本校では、自分たちが学校生活を送っている、あるいは毎日通学している場所なので、通学時のマナーなども含めて地域の一員だという話しは日頃から生徒たちに伝えています。

また子どもたちも学校という閉鎖的な空間ではなく、地域やまわりの人たちとのさまざまな関わりのなかで成長していく部分もあると思うので、地域とのつながりといった部分も大切にしていきたいと思います。

吹奏楽部は日程が合えば演奏に伺いますし、他の部活動やクラブもお役に立てることがあれば積極的に関わりたいと思います。子どもたちの成長を促す良い経験になりますし、地域のためにもプラスになるのであれば素晴らしいことだと思います。

多様な価値観を育む国際交流、芸術教育にも取り組む「吉祥女子中学・高等学校」
所在地:東京都武蔵野市吉祥寺東町4-12-20 
電話番号:0422-22-8117
https://www.kichijo-joshi.jp/

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