子どもたちに楽しい記憶を残すため、イベントで未来の種をまく「根津八重垣謝恩会」
東京メトロ千代田線「根津」駅を降りて地上に出ると、不忍通り沿いに延びる商店街「根津八重垣謝恩会」がある。同会のメンバーとしてさまざまなイベントに関わる事業部の浜島元大さんに、商店街の歴史や取り組み、根津エリアの人々や魅力についてお話を伺った。

チェーン店はコンビニ1店のみ!唯一無二の小さな個人店が軒を連ねる
――まず「根津八重垣謝恩会」の概要と沿革についてお聞かせください。
浜島さん:不忍通りの根津一丁目交差点から千駄木二丁目交差点までのおよそ500mが「八重垣謝恩会」で、現在100店舗ほどが加盟しています。クリニックなど2階の店舗も増えましたが、1階の路面店も多いのが特徴ですね。商店会は1949(昭和24)年に発足しました。当時この辺りは根津八重垣町という町名で、商店街に足を運んでくださるお客様への感謝の気持ちから「根津八重垣謝恩会」と名付けています。

――商店街にはどのようなお店がありますか?また、「根津八重垣謝恩会」の特色についてもお聞かせください。
浜島さん:特定の分野が突出して多いということはなく、いろんなお店がありますね。一番古い1968(昭和43)年の記録を見ると、50年以上続く店がたくさんあり、3代目、4代目の店も珍しくありません。特色は、1人か2人でまわしているアットホームな小さな個人店が多いこと。チェーン店は今のところ、コンビニ1軒のみです。

幼少期の楽しい思い出を作ってくれた根津と地域の人に恩返し
――根津では多くのイベントが開催されていますね。これらについて詳しくお聞かせください。
浜島さん:主なものを春から順にご紹介すると、4月には根津神社の「文京つつじまつり」があります。多くの人が根津にいらっしゃるので商店街も大きく盛り上がります。7月には2週間ほど「八重垣夏まつりセール」を開催。買い物500円ごとに抽選券を1枚お渡ししており、最終日の抽選会はハズレがなく地元の方からも好評です。期間中最後の休日には「不忍通りふれあい館」で、金魚すくいやヨーヨー釣り、射的、輪投げなどを開催しています。8月には根津神社の盆踊り、9月は根津神社の祭礼があります。

10月中旬の土日2日間はふれあい館で「下町まつり」を、10月の最終日曜日には「ねづdeハロウィン」を主催しています。5年ほど前に始めた「ねづdeハロウィン」は根津の町を子どもたちが仮装して練り歩くもので、去年は600人ほどの子どもたちが集まりました。保護者も含めると1,000人規模の人出になるなど、少しずつ街に定着しつつあると思います。11月の文化の日には「文豪の街を歩こう」というスタンプラリーを主催しています。文豪ゆかりの史跡を3か所ピックアップして行うもので、今年で10回目になります。年末の12月には歳末イルミネーションセールを行っています。

――子どもたちが楽しめる季節のイベントが多いですね。なぜこれほど精力的に行っていらっしゃるのでしょうか。
浜島さん:多くの子どもたちは、成長したらいったんは根津を出て行くでしょう。でも幼少期の楽しかった記憶がよみがえれば、大人になったとき根津のまちに戻ってきてくれると思うんですよ。100人のうち1人でもいいので、そうなるといいなと。そのために今から種をまいておこうと思ってやっています。謝恩会で1番の若手は47歳の私なんですよ。やはり将来を考えると若い人の力が必要です。それに、私自身が幼少期を根津で過ごして楽しかったんですよね。冬のイルミネーションや抽選会など、季節ごとに思い出がたくさんあります。夏休みのラジオ体操も町会の人が全部やってくれていたんだと今はわかりますから、恩返しの気持ちもあります。すぐに結果が出るような取り組みではありませんが、継続して根津のファンを増やしていきたいです。

――商店街として地域との連携などの点で力を入れていること、意識していることはありますか?
浜島さん:町会と謝恩会のメンバーはだいぶ重なっているので、どちらの仕事という意識はなくやっています。以前は「根津小学校」にも「下町まつり」で鼓笛隊の子たちにパレードに出てもらっていましたし、何かあれば互いに協力し合う感じです。また、根津には7つの町会があり、他の商店街とも連携しています。特に古くから根津の街にある「根津銀座通り商睦会」「根津宮永商盛会」「根津八重垣謝恩会」の3商店街は、クリスマスツリーの設置や「下町まつり」でも連携しています。将来的には、池之端を挟んだ湯島の商店街とも連携したいですね。

住宅や事務所が多く静かで落ち着いた池之端、店が多くにぎやかで下町の風情がある根津
――商店街から見た池之端・根津エリアの魅力を教えてください。また、池之端エリアにお住まいの方にはどのような方が多いと感じますか?
浜島さん:子どものころはよく不忍の池にザリガニを獲りに行くなど、池之端は私にとって遊び場でした。でも大人になってみると、根津とは違う雰囲気の街だと感じますね。住宅や事務所の多い、静かで落ち着いた街の印象です。一方で「根津」駅に近いこのエリアにはお店やイベントも多く、どこかにぎやかです。その一方で、裏通りに入ると昔ながらの建物が連なるスポットもあり、下町の風情が色濃く残っています。
静かで落ち着いた住環境の印象ですが、上野にもすぐに出られますし、下町情緒を感じたいときや散策したいときは谷根千がある。上野と根津の間にあるため、いろんな良さを享受できる立地です。池之端には、利便性と落ち着きを求める方が多くお住まいなのではないでしょうか。

――森鴎外旧邸の根津神社への移築が決まるなど、池之端・根津の街は日々変わり続けていると思います。変わったと感じるところと、昔から変わらないと感じるところを教えてください。
浜島さん:ビルが増えて風景は変わりましたね。昔の商店街は平屋か2階建ての木造家屋がほとんどでしたが、40年前から徐々にビルが増え始め、いつの間にか大半がビルになりました。商売の形態という意味では、スーパー「赤札堂 根津店」ができたのも大きな変化だったと思います。私が生まれたときにはすでにあったようですが、大体のものがそろう総合店は画期的だったでしょう。

数年前に行われた不忍通りの拡幅工事の影響で、精肉店や鮮魚店など多くの店がなくなってしまいました。その一方で、最近は「根津で商売がしたい」と志してくれる若い人が増えています。そうした新しい人の存在がなければ町は成り立ちませんから、うれしいし、ありがたいですね。「文京つつじまつり」には全国から人が訪れますし、外国人観光客の方も多くいらっしゃいます。オリンピック開催前には、区がコンサルをつけて英語メニューの制作やWi-Fiの設置などインバウンド対応のサポートをしてくれました。コロナ禍でフェードアウトしてしまいましたが、外国人客も戻ってきたのでまた頑張りたいですね。

変わらないのは根津の人の気質ですね。情があるので、道端で倒れている人がいたら絶対みんな声をかけると思います。物事をスルーできない気質というか、言葉を変えれば野次馬根性が旺盛ということでもあって、救急車や消防車が近くに停まるとみんな一斉に店から出てくるんですよ(笑)。で、情報が駆け巡るわけです。代々この辺りに住んでいる家が多いので、代替わりしても人の気質はあまり変わらないんですよね。そのおかげで近所の人は互いに顔見知りなので、防災の観点では良いところだと思います。

――商店街内や池之端・根津エリアのおすすめスポットがあれば教えてください。
浜島さん:1番はやっぱり根津神社。都心ではなかなかない規模の境内で緑も豊かですし、根津にいらしたらぜひ行ってほしいです。不忍通りが華やかな光の道になる、11月から翌年1月末までのイルミネーションの期間もおすすめです。
飲食店は少人数で気軽に入れてサッと食べられるところが多く、どこに入っても失敗することはないと思います。特に長年やっている店はおいしいと思いますね。私がよく行く「海上海」は何を頼んでもおいしく、ランチだけでなく会合の後に飲みに行くこともあります。

――これから池之端・根津エリアに住むことを検討している方へ、メッセージをいただけますと幸いです。
浜島さん:「根津」駅からは20~30分で都心のどこでも行けるので、交通の便が良いことは一番の魅力でしょう。上野にもすぐにアクセスできますし。子ども時代を根津で過ごし、大人になってからは各地を転々としていろんな街を見てきた身として、池之端や根津は静かで安全な場所だと感じます。それに文京区は教育水準が高いですよね。それは根津の子どもたちと話をしていても感じますし、学校の先生も熱心です。すぐ近くに東大や藝大があって、子育て環境はすごく恵まれていると思います。

根津八重垣謝恩会
事業部 浜島元大さん
所在地:東京都文京区根津1-16-10(浜島商店)
電話番号:03-3821-0936
FAX:03-3821-9403
URL:https://www.facebook.com/yaegakisyaonkai/?locale=ja_JP
※この情報は2024(令和6)年9月時点のものです。