スペシャルインタビュー

多様性を重んじ、「本物」にふれる教育に注力する「江戸川区立平井南小学校」

「江戸川区立平井南小学校」正門
「江戸川区立平井南小学校」正門

江戸川区平井3丁目では現在、2023(令和5)年度に開校予定の「小松川中学校」が建設中だ。その目の前にあり、JR「平井」駅の南口から徒歩8分の場所にある「江戸川区立平井南小学校」は、全9学級の小規模校だ。学校の取り組みや平井地区について、岡田盛雄校長先生にお話を伺った。

平井南小学校 岡田盛雄校長先生
平井南小学校 岡田盛雄校長先生

一人一人が尊重される「行きがいのある学校」をめざす

――昭和28年創立と、60年以上の歴史のある平井南小学校ですが、学校の概要と教育方針についてお聞かせください。

岡田校長先生:1976(昭和51)年には1,200人いた児童も、2021(令和3)年9月現在で226名。全9学級で、平井地区にある6つの小学校の中で一番規模の小さい学校です。本校では、毎日の学校生活で児童が達成感を感じ、学校に行って良かったと思える、「行きがいのある学校」を目指しています。その前提として、一人一人が尊重されること、お互いの違いを認められることが必要です。みんな違うからこそ集団生活の中では我慢しなければならないこともある。それが基本的な考えです。集団の中で自分の良さや可能性を探り、他者の良さや可能性も見つけられる人になることが大切だと思います。

「江戸川区立平井南小学校」昇降口
「江戸川区立平井南小学校」昇降口

――コロナ禍において、力を入れていることがあればお聞かせください。

岡田校長先生:基本的な感染対策が重要と考え、正しいマスクのつけ方の指導に力を入れ、手指消毒や換気を徹底しています。児童数に対して校舎が広いため、単学級の学年は教室を2つ使うなど、空き教室を利用して無理なく密を回避できています。また、全校児童がアクリル板とフェイスシールドを1つずつ持ち、話し合いを行うときなど必要に応じて使っています。昇降口を3カ所に分けてそれぞれを2つの学年で使うことで、登下校時も密にならずに済んでいます。全校朝会はオンラインで行い、体育館に全児童を集めて行うことは控えています。マスクを外す給食の時間は、おしゃべり厳禁。机は向かい合わせにせず、一方向を向いて黙食を徹底しています。

「本物にふれる」教育を重視

――教育活動および施設の特色について教えてください。

岡田校長先生:今年度は「本物にふれる」ことを重視し、専門家を招いて行う教育活動に力を入れています。近くにある落語文化の発信拠点「ひらい圓藏亭」からプロの落語家に来ていただいた他、山形交響楽団には映画「E・T」のテーマなどを演奏していただきました。先日も木版画の先生に来ていただき、子どもたちは多色木版に挑戦しました。音楽家の青島広志さんや、プロの声楽・演奏家に来ていただいたこともあるんですよ。10月にはパーカッションアンサンブルの演奏会を予定しています。

施設としては、校庭が2つある点が特徴だと思います。校舎がある敷地と道路を挟んだところに、第二校庭があるんです。児童の安全を考慮して校舎直結の歩道橋が設置されています。第二校庭は広いので、このコロナ禍でも全校児童で運動会を実施できるのが嬉しいですね。

第二校庭と、校舎から延びる歩道橋
第二校庭と、校舎から延びる歩道橋

ICTによって個々に合った学びが可能に

――ICTやプログラミング教育、GIGAスクール構想に基づくタブレット配付によって、学びがどのように変化していくことを期待されますか。

岡田校長先生:AI技術の進歩によって、子どもたちが大人になる頃には、今ある職業の半分はなくなっているとも言われますよね。そんな風に将来が不確実な時代においては、情報処理能力の向上が不可欠だと思います。プログラミング教育を通じて、コンピューターの扱いや論理的な思考力を養っておけば、将来必ず役に立つでしょう。本校では全校児童にタブレット端末を配布し、授業、課題の提出と回収、朝礼などに「Microsoft Teams for Education」を活用しています。端末を使うことで、一人ひとりに合った進め方ができるのが大きな利点だと思います。また、授業参観や展示作品の閲覧、保護者アンケートなど、保護者とのやりとりもオンラインで行っています。

第一校庭と校舎のようす
第一校庭と校舎のようす

障がいの有無にかかわらず、努力し、支え合う

――特別支援教育(巡回指導)では、平井地区小学校の拠点校になっていますね。障がいのある児童への教育についてお聞かせください。

岡田校長先生:東京都ではすべての小中学校で配慮を必要とする児童のための教室「エンカレッジルーム」を用意しています。そして通常の学級に在籍して学習上や生活上でつまずきや困難がある児童に、巡回指導教員が各校をまわって、エンカレッジルームなどで週1時間程度指導する仕組みがあります。本校は、巡回指導教員を派遣する拠点校の役目もあり、今年、5人の教員が平井地区小学校をまわっています。実は今年の校内研究のテーマも特別支援教育なんです。拠点校であることを活かし、特別支援教育への理解と実践力の向上を図っています。障がいがあっても、社会的参加と自立が必要ですよね。さっき話に出たICTも、そのための一つの手段でしょう。視力が良くなかったら眼鏡を使うように、困難さがあってもそれを補う道具などがあると生活が向上します。パラリンピックは、まさしくそうですよね。

――オリパラ教育についてお聞かせください。

岡田校長先生:これからの社会では、ダイバーシティとインクルージョンが求められます。つまり、多様性を認め、受け入れることが大切です。こういった時代において、オリパラ教育は非常に良いと思います。障がいの有無にかかわらず自分らしく自分の力を出し切ることの大切さ、努力することや支え合うことの素晴らしさを学べますから。去年は、車椅子ラグビーの今井友明選手、パラ卓球・車いすクラスの吉田信一選手などに来ていただきました。障がいのある方たちからじかに話を聞いた経験は、子どもたちにとって大きな財産になったと思います。

体育館
体育館

――校長先生が、子どもたちと関わる中で大切にしていることを教えてください。

岡田校長先生:それぞれの児童に好き嫌いや得手不得手があり、みんなが良さと可能性を持っています。そのことは常に意識し、全教職員と共有しています。また、私はもともと中学校の教員として小中一貫校に勤めていたこともあり、必要に応じて、小中連携教育の観点から中学校を見通した支援や指導についても教員に話をしています。

結束が強く、地域の人々が学校に協力的な平井地区

――地域との関わり・連携について教えてください。

岡田校長先生:明治の末に起きた洪水をきっかけに荒川放水路(現:荒川)が整備され、江戸川区では、これによって大きく2つのエリアに分かれました。今の平井地区と他の地域ですね。このこともあり、平井地区は結束が強まったのでしょう。平井地区の人たちのつながりは今も強いです。多くの学校は登校時に通学路で子どもたちを見守るのはPTAが多いと思いますが、本校は違います。地域の人で構成されている「安全見守り隊」が中心となってやってくださっているんです。しかも所轄の小松川警察署から委嘱状をいただき、揃いのベストまで支給していただき、しっかり活動されています。子どもたちを毎朝見守ってくださり、ありがたい限りです。
また毎年8月15日には旧中川の「ふれあい橋」付近で、東京大空襲の犠牲者の慰霊を目的に、灯籠流しを行います。今年は密を避けるため本校からは献花式に私一人しか参加しませんでしたが、例年は児童やPTAの方も多く参加しています。今はコロナ禍でできませんが、平井地区では毎年秋に行われている地元の「小松川平井ふるさとまつり」も盛況で、それも地域の人が仲良くいろいろなことに協力的だからだと思います。

江戸川区と江東区(対岸側)とを結ぶ「ふれあい橋」
江戸川区と江東区(対岸側)とを結ぶ「ふれあい橋」

江戸川区では、小学校の施設を活用して、放課後や土曜日などに児童が保護者や地域の人々と交流できる「すくすくスクール」(登録制)があります。「すくすくスクール」で顔見知りの大人と子どもの関係が増えることで、児童の安全安心につながっています。

校舎内にある「すくすくスクール」では、児童が地域の人々と交流できる
校舎内にある「すくすくスクール」では、児童が地域の人々と交流できる

――平井エリアの魅力をお聞かせください。

岡田校長先生:最近は商店街というとシャッター街みたいなところもあると聞きますが、平井の商店街は比較的活気がある印象です。個人的には、第二校庭の横を流れる旧中川沿いが気に入っています。人工の河川ですが風景になじんでいて、きれいに整備されています。川沿いに植えられた河津桜が咲く早春の時季は、特にきれいな景色を楽しめますよ。

岡田盛雄校長先生
岡田盛雄校長先生

江戸川区立平井南小学校
岡田盛雄 校長先生

所在地: 東京都江戸川区平井3-3-1
電話番号: 03-3681-4532
URL: https://edogawa.schoolweb.ne.jp/hiraiminami-e/
※この情報は2021(令和3)年9月時点のものです。