老舗から新顔まで80以上の店が軒を連ねる 楽しいイベントも魅力の「平井親和会商店街」
JR総武線「平井」駅南口から延びる「平井親和会商店街」。メインストリートは地域住民の生活道路となっているため人通りが多く、多くの買い物客で賑わっている。この地に長く住み、「平井親和会商店街振興組合」の理事長を務める濱田守正さんに、商店街の歴史や恒例イベント、平井エリアの魅力などを伺った。
多彩な店がそろう、江戸川区最古の商店街
――「平井親和会商店街」の沿革についてお聞かせください。
濱田理事長:商店街という形になったのは1927(昭和2)年とされ、数年前に90周年を迎えました。江戸川区最古の商店街といわれています。その頃にはすでに「平井」駅がありました。ちなみに、当初「平井」駅はもっと土手の近くにあり、しばらくして現在の場所に移りました。当時の地主さんが立派な方で、土地を厚意で提供されたと聞いています。
太平洋戦争でこの辺りも焼け野原になりましたが、終戦から2~3年経ったころにどんどん人が戻って来て、元々駅前にあった店の周りに次々とバラックを建てていき、商店街の基礎ができたそうです。一坪程度の小さな店がひしめき合って、迷路みたいだったそうですよ。
平井はかつて三業地(花街)として栄え、いろいろな小説にも出てきています。私は20歳でこの地に来て時計店で働いていましたが、料亭に足を運び芸者さんに指輪などを買ってもらうこともありました。同時にこの辺りは工業地帯でもあり、商店街の先にある小松川周辺には、日新製鋼の子会社や名古屋製陶、日本化学工業など、昔から大きな工場がいくつもありました。そこで働く人たちの多くは「平井」駅を利用し、商店街を通って通勤していたので、商店街はありがたかったと思います。
いまも他の地域から視察に来る方たちは、人通りの多さにびっくりします。こんなに人がたくさん歩いている商店街、いまどきなかなかないですよって。でも黙って店を開けているだけでは利用してもらえないので、どのお店も人を呼び込むために頑張っています。
――「平井親和会商店街」にはどのようなお店があるのでしょうか。
濱田理事長:洋品店、金物屋、花屋、布団屋など、物販が多いですね。加盟店は80軒ちょっとです。クリニックやファストフードもあります。ここ10年で、接骨院や整骨院といったマッサージ店、美容室などが増えました。100年近い歴史がある中で、初期からある店は少なくなってきました。現在残っているのは、2~3軒程度だと思います。食品スーパーの「平井 中村屋」は創業100年近く、駅前のお茶屋さん「立花屋」や「シバタ薬局」も昔からありますね。
地域の人の笑顔のため、毎年多彩なイベントを開催
――商店街で開催しているイベントがあれば教えてください。
濱田理事長:毎年秋には、加盟店それぞれがイチオシの品をPRする「一店逸品フェア」を行っています。ほかにも、驚くほど低価格の商品を販売する春と秋の「びっくり市」、金券が当たるスクラッチカードがもらえる夏と暮れの「歳末ビッグセール」も恒例です。
最近は実施できていませんが、子どもたちを喜ばせたくて、以前は夏に金魚すくいやヨーヨー釣りを楽しめる「ちびっこ大会」を開いていました。
「一店逸品フェア」は、各店が選び出した優れた商品にスポットを当て、値引きはせずに販売するというものです。相談していた役所の方から、一店逸品運動を推進する先生を紹介されたのがきっかけです。当初は集客につながるのか半信半疑でしたが、このフェアを始めて14~15年経ったいまも根強い人気がありますね。フェアの一環として、数軒のお店を案内してまわる「お店巡りツアー」も実施しています。他の地域で同じ取り組みを行う商店街と交流が生まれたことも収穫でした。
また、私は平井に来て50年以上経ちますが、「びっくり市」はその頃始まりました。午後2~4時の2時間に限定したイベントで、以前は始まりの合図に土手で花火を打ち上げていました。その音を聞いて、商店街の通りが埋め尽くされるほど人が集まったものです。花火による合図はもう行っていませんが、イベントはずっと続けています。
――今後予定しているイベントがあれば教えてください。
濱田理事長:昨年のクリスマスイベントが好評だったので、今年もやろうかと検討しているところです。助成金が出る東京都の広域支援事業で、3つの商店街が同じイベントを開催します。昨年は大岡山と西蒲田の商店街と組んで、サンタクロースの国であるフィンランドの消印が押されたクリスマスカードを配布しました。宛名とメッセージを書いて商店街内に設置したポストに投函すればOK。コロナ禍で親御さんやお孫さんなど大切な人に会えない状況を踏まえ、明るく温かい気持ちになってほしいと企画しました。
プレゼンテーション時の反応はイマイチでしたが、審査を通って実施をしたところ、とても喜んでもらえました。「似顔絵マシーン」などサブイベントもいくつか行いましたが、何よりクリスマスカードが欲しいという方がたくさんいて、企画して良かったと思いました。
――「平井親和会商店街振興組合」公認キャラクター「こーた(幸多)くん」はどのようなきっかけで誕生したのでしょうか。こーたくんが担う役割についても教えてください。
濱田理事長:10年前、千葉商科大学の先生に多田さんという青年を紹介されました。その頃「立花屋」の娘さんが千葉商科大学に通っていて、学生さんたちに何度かイベントを手伝ってもらったことがあり、先生とも親しくさせていただいていました。多田さんは「こーたくん」の生みの親で、「これから平井に住みたいと思っている」「こーたくんを親和会商店街の公認キャラクターにしてほしい」と申し出てきました。もうキャラクターは出来上がっていて、「一銭も出さなくていい」「迷惑はかけない」と熱心な依頼でした。ご当地キャラクターやゆるキャラの人気は知っていましたし、先生の紹介もありましたので役員会で了承したことが始まりです。
その役員会の一週間後くらいにはもう商店街の一角を借りていて、驚きましたね。こーたくんのグッズ販売をする「こーたの小屋」です。いまではファンも多く、お子さんや若いお母さんに目を留めてもらえるので、商店街で作るチラシには必ずこーたくんを載せています。広域事業のイベントでも、連携している地域の商店街に行っても喜ばれています。「江戸川区民まつり」や「小松川平井ふるさとまつり」にも参加してもらっていますし、商店街のPRにも大いに役立ってくれています。
強い個性と横のつながりが商店街の魅力
――ショッピングモールではなく、商店街で買い物をする魅力についてお聞かせください。
濱田理事長:ショッピングモールにもいろいろなお店がありますが、ある程度統一されている印象があります。それに比べて商店街は、各店の個性がより強く感じられると思います。どの店も独自の考え方で商売をしていて、店員の対応も商品の並べ方もまるで違う。それが面白いのではないかと思います。 それと、商店街には横のつながりがあります。イベントなど商店街の活動に参加している店なら、「こんなものを探しているんですけど」とお客さんに聞かれたとき、すぐに「それならあそこで売ってますよ」と答えられるわけです。お客さんからしても便利だし、安心感があると思います。
うちの商店街に横のつながりが生まれたのは、「一店逸品フェア」の先生の「互いに率直に意見を言い合うように」という助言のおかげなんですよ。最初は、隣近所の商品や売り方に口出しするなんてケンカになりかねない、と抵抗がありましたが、思い切ってやってみたら逆に仲良くなりました。言いたいことを言い合うことで友だちになることができて、互いの商売についても知るきっかけになりました。そして、商店街の活動にもみんな協力的になりました。
――商店街として力を入れている取り組みがあればお聞かせください。
濱田理事長:具体的な取り組みには至っていませんが、各店の後継者問題など高齢化が大きな課題なので、次世代に頑張ってもらいたいと思います。幸いうちの商店街は、息子さんなどお店を継ぐ方が何人かいて、他の商店街に比べれば頑張っている方でしょう。私が商店街の活動に関わり始めた頃に比べれば、役員の年齢は若返っています。30代前半の若者もいますし、40代も多くいるので。彼らがやりたいことを企画・実行していってくれればと思います。
物が安くて都心へのアクセス良好 住みやすい平井エリア
――最後に、平井エリアの魅力をお聞かせください。
濱田理事長:比較的物価が低いので、暮らしやすいですね。大抵のものが値ごろで手に入り、おいしいものを安く食べられます。平井で働き始めた頃に一時少し離れた所に住んでいたのですが、平井に戻ってきたときに物価の違いを実感しました。電車に乗れば都心にすぐ出られる点も便利ですね。「新宿」駅にもさっと出られ、「秋葉原」駅で乗り換えれば「東京」駅もすぐですから。「平井」駅は街の真ん中にあるので、北側の人も南側の人も使いやすいと思います。
おすすめスポットは、亀戸と平井を結ぶ「ふれあい橋」のあたりですね。正面にスカイツリーが見えますし、春は川の両岸に植えられた桜の花を楽しめます。川沿いは整備され、カヌーの練習をしている方もいたりして、のどかな雰囲気を味わえますよ。

平井親和会商店街振興組合
理事長 濱田守正さん
所在地:東京都江戸川区平井3-24-10
電話番号:03-3681-5378
URL:http://hirai-shinwakai.com/index.html
※この情報は2022(令和4)年4月時点のものです。