スペシャルインタビュー

「自分も大切、友達も周りの人もみな大切」を合言葉に人権尊重教育に取り組む「東久留米市立第五小学校」/古矢美雪校長先生

1964(昭和39)年開校の歴史を持つ「東久留米市立第五小学校」。西武池袋線「ひばりヶ丘」駅から徒歩20分ほどの住宅地に位置する学校で、市内でも規模の大きな学校です。 2024(令和6)年度の「全国学力・学習状況調査」では、全校平均また東京都の平均を上回る結果もあり、学校・地域・保護者が一体となった取り組みにも注目が集まっています。 今回は古矢美雪校長先生を訪ね、学校の概要や特色ある取り組みについてお話しいただきました。

お話を伺った古矢美雪校長先生
お話を伺った古矢美雪校長先生

学校創立60周年を迎えた「東久留米市立第五小学校

——まず「東久留米市立第五小学校」の概要、沿革についてお聞かせください。

古矢校長先生:本校は1964(昭和39)年4月に開校し、昨年度、学校創立60周年を迎えました。当時の資料によると11学級、児童数381名でスタートしたようです。現在は26学級、807名の児童数で、私が着任した2022(令和4)年度から毎年1学級ずつ増えているような状況です。

人数が増えている理由は様々あると思いますが、大型商業施設ができたことやひばりが丘団地の整備などが影響しているのではないかと思われます。「ひばりヶ丘」駅は急行が停まるため池袋まで約20分と都心部へのアクセスが良く、生活するのに大変便利な環境だと思います。学校周辺にも新しく建てられたお家がたくさんあります。

今後の推移としては、現在の4学級編成が数年続いたのち、900〜1,000名規模の学校になるのではないかといった話もあります。

児童数800名規模。活気あふれる「東久留米市立第五小学校」
児童数800名規模。活気あふれる「東久留米市立第五小学校」

地域や家庭の教育力が高く、学校の取り組みにも協力的

——どのようなご家庭またお子さまが多くいらっしゃいますか?

古矢校長先生:もともとこの地域に住んでいる方も多いですし、移り住んで来られた方もいらっしゃいます。新旧の住民が融合されている地域と言って良いかと思います。

本校に通う児童の中には、おじいちゃま、おばあちゃまの世代から五小に通っていたというご家庭も多く、学校の取り組みにも高い関心をもっていただいているのを感じます。

また、地域やご家庭の教育力が大変高い学校だと認識しております。つまり、お家がしっかりされているということですね。お家で生活のリズムをしっかり整えて、学校の宿題などもきちんとやってきてくださいますし、学校からのお願いごとや取り組みにも協力してくださるご家庭ばかりです。ご家庭での教育力という土台が非常に盤石で、大変良い学校だなと思います。

明るい校内は開放的な雰囲気
明るい校内は開放的な雰囲気

「五小は褒めて育てる学校です」みんなで取り組む人権尊重教育

——力を入れて取り組んでいることや、大切にしていることについてお聞かせください。

古矢校長先生:私がもっとも大切にしているのは、学校経営計画にも掲げているように人権尊重教育です。人権尊重教育と聞くととても難しいことのように感じますが、わかりやすく、いつもこのような話をしています。「自分も大切、自分以外の友達も周りの人たちもみんな大切っていうのが人権教育ですよ」と。

あなたのことが大切だよって言ってもらうと嬉しくて、自分の気持ちが満たされますよね。そこではじめて相手に目を向け、そこから相手のことを大切に思う心が育つんじゃないかなと思います。

だから、人権尊重教育ではまず「自分が大切」ということ。教員には子どもたちを大いに褒めてあげてくださいと伝えています。さらに、先生たち同士も褒め合いましょうと。教員も自己肯定感が高くないと子どもを褒めるというところまで至らないので、とにかく褒め合いをする学校にしましょうと伝えています。保護者会でも「五小は褒めて育てる学校です」ということをお話させていただきました。

「自分も大切、自分以外の友達も周りの人もみな大切」が合言葉
「自分も大切、自分以外の友達も周りの人もみな大切」が合言葉

魅力ある授業や誰もが分かる楽しい授業で学力向上

——次に学力向上に関する取り組みについてもお聞かせください。

古矢校長先生:学校経営計画の2番目の柱として掲げているのが、学力向上に関する取り組みです。学校で学ぶ意味を十分理解したうえで、学力を身につけさせるのが私たちの使命です。

まず、教員はただ漫然と授業をするのではなく、魅力ある授業をするように取り組んでいます。これまでのチョーク1本と教科書を使って教師が一方的に話をするる授業からは脱却しようという試みが全国的に行われており、本校も例外ではありません。

また、誰もが分かる、楽しい授業をやりましょうと伝えています。具体的には1人1台のタブレットを学習ツールのひとつとして最大限に活かすよう取り組んでおります。

学習環境の整理整頓も行き届いている
学習環境の整理整頓も行き届いている

古矢校長先生:さらに、学校で学ぶ一番の意味は対話をすることだと思っています。ひとりで学んでいても自分の意見や考えは広がりづらいものですが、学校に来ればたくさんの仲間がいますので、おのずと視野が広がります。自分と同じ考えの子もいれば、逆に自分と全く違う考えの子もいる。否定ではなく、そういう考えもあるんだねと認め合うこと。さらに、その考えが良いと思えば自分の考えに取り入れることもできるようになり、心も豊かになっていくと思います。

現代は多様性の時代と言われていますが、その縮図のひとつが学校です。いろいろな考えに触れるという意味では800名いる学校では800通りの答えがあります。これは大規模校の良いところと思います。もちろんこれは学習の場面でも活かされていて、例えば国語の時間であれば主人公の感情についてさまざまな思いをめぐらせながら授業を受けることもできるので、結果として学力向上に結びついているのかなと思います。

学力向上に関するさまざま取り組み。図書館も蔵書が充実
学力向上に関するさまざま取り組み。図書館も蔵書が充実

東京都の平均を上回る結果となった令和6年度の「全国学力・学習状況調査」

——校長先生も学習指導に関わっているそうですが?

古矢校長先生:小学校の段階でもっとも大事な学習のひとつが、2年生の算数で学習するかけ算九九だと思っています。これができないと3年生以上になって問題を解くことができず、算数嫌いの子どもになってしまうだろうと思い、かけ算九九に関しては校長の私も関わって指導しています。

本校では、担任のテストとは別に校長の私がテストを行なっています。校長室に来るだけでも緊張すると思いますが、私が出題する20問に対してスムーズに答えられたら合格ということで、全問答えられた子にはがんばったねと手作りのメダルをかけてあげるのです。

このような取り組みが関係しているかは分かりませんが、昨年度の「全国学力・学習状況調査」において東京都の平均を上回った項目がありました。なかには全国平均と比べて9%も上回る項目があり、学校だよりの臨時号としてご報告させていただきました。ただこれは学校や教員の力だけではなく、地域やご家庭の教育力があったうえに学校でも取り組みを積み重ねた結果だと思っています。

校長みずから取り組むかけ算九九の学習指導
校長みずから取り組むかけ算九九の学習指導

地域や保護者と一緒になって取り組み考える道徳教育

——続いて地域とのつながりについてお聞かせください。地域の方をゲストティーチャーとしてお招きして「道徳授業地区公開講座」を実施されているそうですね。

古矢校長先生:「道徳授業地区公開講座」というのは東京都の教育委員会による取り組みで、地域や保護者と一緒になって道徳教育について考えることを目的としています。昨年度は開校60周年という映えある年でしたので、愛校心や地域愛をテーマに全学級で取り組みを行いました。

具体的には、本校の第1期卒業生を各学年一人ずつ学校にお招きしてお話を伺いました。また東京都で唯一、平成の名水百選に選ばれた落合川という川で活動する東久留米川クラブの方にお越しいただきました。

30年以上前は生活排水が流されていたそうですが、川クラブというボランティアの方々の尽力により、平成の名水百選に選ばれるまでの綺麗な川になったそうです。近くには南沢湧水群というとっても綺麗な湧水が出る場所もあるのです。

どうして川がこんなに綺麗になったのか、落合川の歴史についてお話しを聞いたのち、実際に川に行って釣り体験や川のゴミ拾い、ゴムボートを川に浮かべて上流から流れてくるような体験もさせてもらいました。

ちなみに、一昨年はキャリア教育につながるような取り組みをしました。保護者の方にもご尽力いただき、保護者の方をゲストティーチャーとしてお招きして、1学級一人ずつ計25名ものゲストの方にお越しいただきました。これだけ学校規模が大きいと保護者の方にもいろいろな職種の方がいて、お医者さんもいれば大学の先生やパイロット、チェロの奏者や古民家カフェの方など、さまざまなお話を伺うことができました。

平成の名水百選にも選ばれた落合川
平成の名水百選にも選ばれた落合川

谷川俊太郎さんの詩を読んで感銘を受けた第一代校長からのつながり

——谷川俊太郎さんが作詞されたという校歌についても詳しく教えてください。

古矢校長先生:本校の校歌は谷川俊太郎さんによる作詞です。どういうご縁があるかと言いますと、第一代校長が正門のところにある欅の木を学校のシンボルにしようと考えていたとき、谷川俊太郎さんの「大きなけやき」という詩を読んで感銘を受け、ご本人に連絡したのがきっかけだったそうです。

今から60年前のことですから、谷川俊太郎さんも30代の頃ですね。それがきっかけで周年行事があるたびに学校にお越しいただいて校歌の詩に寄せた思いをお聞きするという会を開いてきました。

谷川俊太郎さんの詩といえば、国語の教科書にも必ずと言って良いほど作品が載っていますよね。2年生で習う「みんみん」や「コトコ」、「スイミー」の翻訳も谷川俊太郎さんです。3年生になると「どきん」、5年生の「かんがえるのっておもしろい」、6年生の「生きているということ」も有名です。

そういう方に作詞をしていただいたのは大変貴重なことで、校歌を通して愛校心を育むことにもつながっているんじゃないかと思います。

校校内には谷川俊太郎さんに関する掲示も
校校内には谷川俊太郎さんに関する掲示も

——60周年の周年行事ではどのような取り組みが行われたのでしょうか?

古矢校長先生:谷川俊太郎さんは2024(令和6)年11月にお亡くなりになられたのですが、その頃にはすでに外出することが難しかったため、ビデオレターというかたちで子どもたちにメッセージをいただきました。また息子さんの谷川賢作さんが来てくださって、お父様についてお話をしてくださいました。

そこで私たちもメッセージにお返しするかたちで5、6年生が学校を代表して呼びかけを行い、さらに学年ごとに谷川俊太郎さんに関わる作品を群読しました。140名で行う群読は大迫力で、賢作さんも感動してくださいました。

地域の一番の魅力は落合川。自然と街のバランスも魅力

——学校周辺エリアの魅力やおすすめスポットを教えてください。

古矢校長先生:地域の魅力と言えばやはりなんと言っても落合川です。先ほども触れましたが、南沢湧水群という綺麗な湧水の出る場所もあるんです。川クラブの方々のご尽力によって綺麗になったという歴史もあり、地域の一番の魅力は落合川です。私も子どもたちと一緒に水遊びをしましたが、川遊びはとっても楽しいですね。

さらに地域の魅力としては自然と街のバランスが良いところでしょうか。学校の北側には川や畑が広がっていて自然を感じられますし、南側には商業施設や大きな団地がありにぎやかな街の雰囲気を感じられます。

——これからこのエリアに移り住む方へメッセージをお願いいたします。

古矢校長先生:ここはとても住みやすい街だと思います。全てがそろう街だと思います。また本校には800名もの子どもたちがいて、活気がありとっても良い雰囲気です。地域や保護者の方も学校の取り組みに大変協力的で、みんなで子どもたちを育ててくれる温かい地域だと思います。

水辺と木々が心地よい環境
水辺と木々が心地よい環境

「自分も大切、友達も周りの人もみな大切」を合言葉に人権尊重教育に取り組む「東久留米市立第五小学校」
「自分も大切、友達も周りの人もみな大切」を合言葉に人権尊重教育に取り組む「東久留米市立第五小学校」

東久留米市立第五小学校

古矢美雪校長先生
所在地:東京都東久留米市南沢4-6-1
電話番号:042-461-5843
URL:https://www.higashikurume-school01.jp/~dai5-e/
※この情報は2025(令和7)年7月時点のものです。