浜町界隈をより魅力的な街へ 人をつなぎ、地域に活力を与える「日本橋浜町エリアマネジメント」

日本橋浜町3丁目に、ブックカフェ、オフィス、イベントスペースなどから成る複合施設「Hama House」がある。街づくりに参加する地域住民が集う場所であり、「一般社団法人 日本橋浜町エリアマネジメント」の活動拠点だ。1階のカフェで、理事兼事務局長である水代優さんに活動内容や浜町の魅力について伺った。

日本橋浜町エリアマネジメント 理事兼事務局長の水代優さん
日本橋浜町エリアマネジメント 理事兼事務局長の水代優さん

若い人や移住者が進める街づくり 古くから住む人々の懐の深さが大きな助けに

――日本橋浜町エリアマネジメントの概要をお聞かせください。

水代さん:町会、商店街、企業、住民と連携し、地域活動を推進・支援することで、浜町界隈の価値を向上させ、より魅力的な街にするために設立しました。2017年9月に「Hama House」ができたときから2カ月に1度、地元の町内会や商店街、企業が集まって浜町を盛り上げる会をやっていたんです。参加する人や企業がだんだん増えてきたので、話し合ってエリマネ団体にすることを決めました。それが2020年4月の15回目の集まりのときで、設立から2年半ほど経ったころですね。

都市と自然が融合した浜町の街並み
都市と自然が融合した浜町の街並み

浜町には昔から住んでいる人に加え、最近引っ越してきたファミリーやオフィスビルで働くビジネスマンなども多くいます。そんな浜町で、私たちが前向きに街づくりに取り組めているのは、この街の風土に助けられている部分が大きいです。

仕事で全国のさまざまな街を訪れますが、浜町みたいなところは少ないです。長年この地に住んで日本橋の伝統文化や風習を大事にしている人たちが、外から来た人たちの街づくりに対して、「頑張ってるね」「正しい活動だ」と言って応援してくれる。そういう粋な文化があるんです。

――地域コミュニティを活性化させるための主な取り組み内容についてお聞かせください。

活動の拠点「Hama House」
活動の拠点「Hama House」

水代さん:大きく3つの活動があり、ひとつは交流促進です。例えば、ここをオープンしてからずっと継続している毎月最終水曜日の「月末交流会」。企業の人は自分が携わっているプロジェクトについて話したり、地元の人は開催予定のお祭りなどイベントの案内をしたりしますし、最近引っ越してきた人たちは新たなつながりを求めて来る感じですね。初めて来てくれた人や知らない人同士でも話が弾むよう、事務局で毎回工夫しています。参加者は30~40人のこともあれば、日によって100人ぐらい集まることもあります。

良いコミュニティとは、「出入り自由であること」と、「先輩後輩の極端な上下関係がないこと」が重要だと考えているので、そこは事務局で力を入れています。例えば、新しいお客さんに対して常連客や店の人が優しいお店は居心地がいいですよね。それと一緒で、日本橋の伝統文化や風習を大事にしている先輩方が私たちにそうしてくださっているように、コミュニティをマネジメントする私たちも、見習って同じようにふるまいたいと思っています。

「Hama House」の外観
「Hama House」の外観

Hama House」前の道路を車両通行止めにして、人工芝を敷いて交流の場とする「オータムセッション」も、300~400人ほどの人が来てくれます。この交流イベントは違法駐輪対策の側面もあり、楽しみながら問題解決できればと思って始めました。この地域で一番おいしいと思うものをSNSで発表し合うオンラインコミュニケーションなども実施しています。「浜町いきつけ探し」と題して、ハッシュタグをつけて自分の一番好きな料理を投稿したときには2週間で700枚ぐらい写真が集まりました。

愛妻の日である1月31日には「愛妻×愛菜の日」プロジェクトを実施。浜町に本社を構える大手食品メーカーのカゴメさんと協力して、野菜をふんだんに使った愛菜弁当を販売したりしました。愛妻川柳コンテストには2,500通ぐらい応募がありました。

2つめはプロモーション活動で、「HAMACHO.JP」という浜町のポータルサイトを運営しているほか、フリーペーパーとマップも制作しています。地域の飲食店やホテルなどに配布しているのですが、事務局のメンバーが頑張って直接届けるようにしています。

年6回、毎号10,000部発行しているフリーペーパー「BRIDGE」
年6回、毎号10,000部発行しているフリーペーパー「BRIDGE」

マップも情報を更新して毎年発行している
マップも情報を更新して毎年発行している

コミュニティは接触回数が大事で、何度も顔を合わせるうちに何かしら共通の話題が見つかったりするので、大事な取り組みだと考えています。店長が替わっていたらご挨拶できますし、何か分からず捨てられてしまうことも防げますから。プロモーションという意味ではLINEのオフィシャルアカウントが大いに機能しています。例えば「この日の朝何時から清掃します」と告知すると、100人くらい集まるんですよ。

3つめは環境整備で、公共空間の活用と緑化の2つを行っています。街おこしのコンテンツは残念なことに、ときに音楽がうるさいと言われたり、キャンプファイヤーは消防署からNGが出たりと、逆風が吹くこともあります。でも公共空間や緑が増えて文句を言う人はいないと思うんです。

イベントの会場にもなる「あやめ第一公園」
イベントの会場にもなる「あやめ第一公園」

今年5月には、公共空間活用の実証実験として首都高高架下の「あやめ第一公園」で、3×3バスケットボールのプロチームによるエキシビジョンマッチ、パルクール、デジタル技術を活用したARスポーツなどを体験できるイベントを行いました。プロの選手による子どもたちの指導などもあり、たくさんの人が参加しました。これは実証実験ですが、こういった取り組みを繰り返すことによってよりよい日常をつくっていきたいと思っています。

緑豊かな街、面白い人や魅力的な店が多い街 いま以上に良い街をめざして

――年に4回、浜町マルシェを開催していらっしゃると伺いました。どんな催しかお教えください。

水代さん:エリマネが設立される前に初めて地域で開催したイベントが「浜町マルシェ」で、2025年で10周年を迎えます。「トルナーレ日本橋浜町」の敷地内に、全国から集まる30店に加え地元商店街が出店します。

トルナーレ日本橋浜町
トルナーレ日本橋浜町

商店街の人が結束して焼きそばを作ったり、ロイヤルパークホテルさんが焼きたてのパンを持ってきたり、コーヒーショップ「Single O Hamacho」がサンドイッチをつくって出したりと、地元の人が活躍しているのが特徴で、近隣の人たちが楽しんでくれています。小中学校とも連携していて、チアリーディングなどでも盛り上がります。

――浜町みどりプロジェクトの取り組み内容や、自然という地域資産を活かした活動を通じて浜町をどんな街にしていきたいかお教えください。

水代さん:TOKYO MIDORI LABOなどとともに推進している緑化活動で、街づくりに共感してくれる企業や店に植物を植えたプランターをお渡しし、軒先に置いてもらっています。プランターは同じデザインなので、街中を歩くときに少し植栽に意識を向けるとすぐに分かると思います。今後もっと数を増やして、より緑豊かな街にしていきたいですね。

街中には「hamacho midori project」の文字が入ったプランターが
街中には「hamacho midori project」の文字が入ったプランターが

――浜町の人の流れに変化はありますか?どのように変わってきていると感じますか?

水代さん:人が増えていて、浜町は中央区で一番多く人が住んでいる街とも言われています。そして最近は、頑張っている地元の人たちの新店舗が増えています。最近だと、近くにあるうどん割烹「谷や和」が新たに寿司割烹「浜町えぐち」を出店しました。面白い人や魅力的な店が多い街はいい街だと思うので、事務局としても応援しています。

また、私たちが初めてこの街に来たときは、町会の人から「ビジネスマン向けにランチをやるなら土日はお店を閉めた方がいいよ」と言われました。確かに最初の頃は土日のお客さんは少なかったのですが、いまは土日の売り上げの方がいい店も多くあります。これも人の流れの大きな変化かなと思います。

人の出会いから新しいプロダクトや事業が生まれる 増えればともっと活気が出る

――今後取り組みを検討されている活動予定と、将来的に浜町をどんな街にしていきたいかをお教えください。

回収が予定されている「浜町川緑道」
回収が予定されている「浜町川緑道」

水代さん:浜町川跡に整備された「浜町川緑道」は区による改修が予定されていて、これから変わっていきます。そういった公共空間の編集を頑張っていきたいですね。「トルナーレ緑道」の整備もしたいですし、「あやめ公園」の活用で日常を変えていきたい。2029年には中央区で最も広い「浜町公園」が100周年を迎えるので、何か打ち出せたらと考えています。

都会のオアシス「浜町公園」
都会のオアシス「浜町公園」

コミュニティ作りはできていると思うので、そこから生まれるプロジェクトをもっと増やしていきたいです。「浜町マルシェ」や「オータムセッション」など、いま動いている30以上のプロジェクトを洗練させるとともに、新しいものも増やせればと。

私はコミュニティの先に小さな産業が創出されることを「納品」と呼んでいるのですが、浜町で人が出会い、そこから新しいプロダクトやサービス、事業が生まれる「納品数」が増えれば街全体にもっとパワーが生まれ、より活気が出るでしょう。

――浜町を楽しむおすすめの過ごし方やお気に入りの場所などありましたら、ぜひお教えてください。

水代さん:好きな場所はたくさんあります。ここから歩いてすぐのところには、私が日本一好きな蕎麦屋「浜町かねこ」と立ち飲み屋「富士屋本店 日本橋浜町」があります。

水代さんおすすめの立ち飲み屋「富士屋本店 日本橋浜町」
水代さんおすすめの立ち飲み屋「富士屋本店 日本橋浜町」

それと隅田川沿いのランニングは気持ちがいいですよ。走った後はサウナとバーを併設したランニングステーション「ととけん日本橋浜町」で過ごせます。いつでもフラッと立ち寄って最高の時間を過ごせて、クオリティ・オブ・ライフを上げて毎日の暮らしを彩ってくれる。私にとってそういう場所です。

水代さんのおすすめスポットのひとつ、「ととけん日本橋浜町」
水代さんのおすすめスポットのひとつ、「ととけん日本橋浜町」

――これから浜町での生活を考えていらっしゃる方々へ、メッセージをお願いします。

水代さん:数万人もの人が訪れる「浜町盆踊り大会」など、地域の行事が多く残っています。日本橋エリアの10町会で構成される「日本橋五の部」という連合町会組織による町会対抗の運動会には2,000人くらい集まるんですよ。アクセスは便利ですし、隅田川や「浜町公園」のような大きい場もありますし、ユニークなお店もあります。光り輝くプレーヤーがどんどん参入してきてくれているので、住むには最高の街だと思います。防災への取り組みにも熱心なので、安全・安心の観点からも素晴らしい街だと思います。

理事兼事務局長 水代優さん
理事兼事務局長 水代優さん

一般社団法人 日本橋浜町エリアマネジメント

理事兼事務局長 水代優さん
所在地:東京都中央区日本橋浜町3-10-6
電話番号:03-6661-7084
FAX:03-6661-7058
URL:https://areamanagement.hamacho.jp/
※この情報は2024(令和6)年9月時点のものです。