文京区は武蔵野台地の東端に位置し、大きくは関口台、小日向台、小石川台、白山台、本郷台という5つの台地からなる。この台地がもたらす高低差は、街に美しい景観と独特の雰囲気をもたらしてくれる。
写真 : 白山エリアの街並み
台地と台地の間の谷間には坂道が点在している。坂道のある風景は多くの文学作品にも登場した。今の「白山」駅付近では、都営地下鉄三田線開通前から薬師坂の上と下それぞれに商店街が広がり、地域の拠点としてにぎわっていた。夏目漱石の『三四郎』にもこの薬師坂の情景が描かれている。現在も薬師坂には「東洋大学」の学生をはじめ、周辺の中学校や高等学校に通う生徒が行き来する。
文京区は緑が多く、身近で四季の移ろいを感じられることも特徴だ。「白山神社」に隣接する「白山公園」は1891(明治24)年に誕生した文京区で最も古い公園だ。園内には多くのあじさいが植えられ、シーズンには「文京あじさいまつり」が開かれる。「子どもあじさい写生会」も行われており、子どもたちにも親しまれている。
写真 : 紫陽花も美しく咲き乱れる
16万平方メートルという広大な敷地を持つ「小石川植物園」のルーツは1684(貞享元)年に徳川幕府が薬用植物を育てるために開いた「小石川御薬園」にさかのぼり、日本最古の植物園とされている。明治維新後に「東京大学」が設立されると、「小石川御薬園」は「東京大学」の附属植物園となり、一般にも公開されるようになった。今も広大な敷地で多彩な植物が栽培されており、世界各国の絶滅危惧種植物の保全という役割も担う。
写真 : 「小石川植物園」内の様子
『文京区生物多様性地域戦略』では文京区内の自然環境を住宅、民間施設、公園、医療福祉施設、教育施設など9種類のビオトープタイプに分類している。なかでも住宅地のビオトープは25.9%と約4分の1を占める。白山エリアでも住宅地に緑が多く、暮らしの中で緑を感じられるだろう。
写真 : ふとした街並みに、緑が添 …
高台と坂道が織りなすまちなみに緑が寄り添う白山エリア。ここには都内でも穏やかな時間が流れている。
風情溢れ、緑が彩る街 所在地:東京都文京区