文京区のほぼ中央に位置する白山エリアの地名は、「白山神社」に由来する。「白山神社」は948(天暦2)年に現在の石川県にある「白山比咩神社」から勧請を受けて創建され、当時は今の本郷1丁目エリアにあったという。その後、徳川綱吉の屋敷が造られることになり、現在地に移されたそうだ。「白山(しらやま・はくさん)神社」を名とする神社は全国各地に点在しているが、文京区内の「白山神社」は東京都心に最も近い立地にある。
写真 : 白山神社
白山エリア周辺の本郷通り沿いは寺町が広がり、『文京区景観計画』でも寺町界隈の景観形成として、位置付けられている。長い歴史を誇る寺も多く、「光源寺(駒込大観音)」は奈良の長谷観音を模した高さ6m以上の十一面観音像で知られる。「吉祥寺」は室町時代に太田道灌が開いたという歴史ある寺だ。「南谷寺(目赤不動)」は江戸五色不動のひとつとして親しまれ、多くの参拝客が訪れた。
現在も「駒込寺町」に隣接する白山エリアでは寺の緑と周辺のまちなみが調和し、落ち着いた佇まいの景観が保たれている。
写真 : 光源寺
写真 : 南谷寺
江戸時代、現在の文京区内には水戸藩上屋敷や加賀藩上屋敷など多くの武家屋敷があり、今の白山エリアにも備後福山藩中屋敷が設けられていた。明治維新後、備後福山藩中屋敷跡地では藩主であった阿部家によって住宅地の開発が行われ、邸宅地として知られるようになる。
また、かつての加賀藩上屋敷の門は「東京大学」の門となり、その姿から赤門として呼ばれるようになった。水戸藩上屋敷にあった庭園は今の「小石川後楽園」で、武家屋敷の名残はそこかしこに残る。
写真 : 東京大学赤門
写真 : 小石川後楽園
白山エリア周辺の閑静な佇まいは文人にも愛された。樋口一葉もその一人で、現在も白山通り沿いに「樋口一葉終焉の地」の碑が残る。ほかにも「夏目漱石旧居跡」や「文京区立森鷗外記念館」などゆかりの文人の足跡をたどれるスポットが点在する。
写真 : 樋口一葉終焉の地碑
写真 : 夏目漱石旧居跡
白山エリアでは長い歴史に培われた風情を感じながら暮らせるのも魅力といえよう。
深い歴史が醸し出す、落ち着いた街 所在地:東京都文京区