“スタートアップの街”ならではのイノベーションで五反田も面白くする/一般社団法人 五反田バレー

JR山手線、東急池上線、都営浅草線の3路線が乗り入れ、利便性に優れた五反田エリア。かつては「ソニー株式会社」が本社を構えていたこの街だが、近年はITベンチャー・スタートアップ企業が集まる“スタートアップの街”として注目を集め、米シリコンバレーにならった「五反田バレー」の呼び名も広く知られてきている。

今回は、五反田に拠点を置くスタートアップ企業を中心に発足された「一般社団法人 五反田バレー」の、代表理事の中村岳人さん(株式会社Hiway)、理事企業の広報を務める鈴木章子さん(セーフィー株式会社)、会員企業でありオウンドメディア「五反田企画」を運営する宮脇淳さん(有限会社ノオト)にお集まりいただき、五反田のこれまでや未来のこと、この街ならではの魅力についてお話をうかがった。

左から、中村 岳人さん、鈴木 章子さん、宮脇 淳さん
左から、中村 岳人さん、鈴木 章子さん、宮脇 淳さん

6社で発足した「五反田バレー」は現在の会員は約150社に。スタートアップにも適した五反田の優位性。

――まずは、「五反田バレー」の組織概要についてご紹介ください。

中村さん:正式には「一般社団法人 五反田バレー」と言いまして、五反田を拠点としていたスタートアップ、「freee株式会社」「株式会社マツリカ」「株式会社ココナラ」「セーフィー株式会社」「株式会社トレタ」「株式会社よりそう」の6社が2018(平成30)年7月に立ち上げた組織です。私はスタート当時に「マツリカ」にいて実務を担当していたこともあり、2019(令和元)年から「五反田バレー」の代表理事を務めています。

2017(平成29)年頃からだと思いますが、五反田にベンチャー・スタートアップの企業が増えているといった話がメディアなどで取り上げられるようになって、当時すでに大手ITベンチャーなどが集まっていた渋谷の「ビットバレー」に対して、「五反田バレー」という呼び名が徐々に使われるようになりました。

2018(平成30)年の設立から運営に関わり、現在は代表理事を務める中村さん
2018(平成30)年の設立から運営に関わり、現在は代表理事を務める中村さん

ちょうどその頃、五反田のスタートアップ企業の広報担当が集まる機会があり、“スタートアップの街として五反田のイメージをアピールできたら良いよね”といった話からこの組織を設立する具体的な話が持ち上がりました。鈴木さんともそこで出会い、立ち上げからずっと一緒に活動してもらっています。

鈴木さん: 私が皆さんとお会いしたのは2017(平成29)年の年末でしたね。五反田に面白い企業や人がたくさんいるなというのを感じていて、同時に1社だけで広報するのってなかなか難しいなと意識していた時期でもあって。それだったら何社か手を組んで何か面白いことができたら良いなと考えていたところに「五反田バレー」の話が持ち上がったので、「一緒にやりましょう!」と参画させていただくことになりました。

――設立当時から現在に至るまで変化や発展したことなどはございますか?

中村さん: ひとつは会員企業が増えたことですね。「五反田バレー」を立ち上げた理事企業6社を含め、正会員は約60社になりました。またイベントなどがあれば参加したいと言ってくれる企業も含めると会員企業が140〜150社ほどにのぼります。みなさんいずれも五反田を拠点としているか、過去に拠点を置いていたOB・OG企業も含め、五反田に関連する企業です。

“スタートアップの街から面白いことを”という思いから発足した「五反田バレー」
“スタートアップの街から面白いことを”という思いから発足した「五反田バレー」

――そもそも五反田がベンチャーやスタートアップ企業に選ばれたのはなぜでしょうか?

中村さん: 渋谷などと比べて家賃などを抑えてオフィスを構えられることと、利便性が高いところだと思います。山手線沿線で、さらに池上線や浅草線もあるし、「品川」駅も近いので新幹線にもすぐ乗れる。羽田空港にも行きやすいので急な出張にも対応できるし、アクセスの便利さは魅力的です。

あと、ベンチャーやスタートアップの企業は特に初期のフェーズはプライベートと仕事の時間が曖昧で…。オフィスから近いところに住めるのは助かります。五反田は近くに住みやすい場所が多く、職住近接が叶うことも魅力のひとつだと思います。

アクセス利便性もベンチャー・スタートアップ企業を惹きつける魅力のひとつ
アクセス利便性もベンチャー・スタートアップ企業を惹きつける魅力のひとつ

コミュニティのハブとして柔軟に活動。オウンドメディアで情報発信も積極的に。

――活動内容についてはいかがでしょうか?

中村さん:  もともと「五反田バレー」が目印になって企業間や企業・行政との連携など、コミュニティのハブになるような役割を担っていたのですが、コロナ禍になってオフラインのイベント開催や人を繋ぐリアルな交流がしづらくなったので、オンライン交流会や品川区さんとの地域活性化の取り組みなどにシフトしているところです。コロナが収まってからどうなるかまだ手探りの状態ではありますが、オフラインとオンラインのハイブリッドも含め、「五反田バレー」に期待される役割というのは今後も変わり続けていくのだろうなと思っています。

「五反田バレー」開催の過去のイベントの様子
「五反田バレー」開催の過去のイベントの様子

私自身も「マツリカ」から同じく五反田を拠点とする「株式会社Pathee」に籍を移し、現在は「株式会社Hiway」の創業にも携わるなどさまざまな変化がありましたが、そのなかでも引き続き「五反田バレー」の企画や運営など様々な活動をさせてもらっています。

――オウンドメディアとして運営されている「五反田計画」についてお聞かせください。

宮脇さん: 私が代表を務める「有限会社ノオト」は、「品川経済新聞」というニュースサイトを運営しているほか、メディアの立ち上げやコンテンツの制作もしています。「五反田バレー」とは2018(平成29)年に開かれた発足式で、モデレータをやってくださいと話があったのが出会いですね。

「五反田企画」立ち上げの経緯を語る宮脇淳さん
「五反田企画」立ち上げの経緯を語る宮脇淳さん

「面白そうだな」と率直に感じたのと、会員企業を増やしたいという話もあったので、うち自体はベンチャーでは無いけれど良いのかなと思いつつも7番目の企業として入れていただくことになりました。そこで情報発信やブランディングをしたいというお話があったので、「メディアをやりましょう!」と提案したところ、「五反田計画」というオウンドメディアを運営させていただくことになりました。

「五反田計画」のコンテンツには、「五反田の企業」「五反田で働く」「五反田を知る」「五反田で学ぶ」という大きく4つの柱があり、「五反田バレー」の会員企業の紹介や、品川区とのイベントのレポートなどを発信しています。

 「五反田バレー」のオウンドメディア「五反田計画」
「五反田バレー」のオウンドメディア「五反田計画」

中村さん: 「五反田バレー」は、ある意味概念を法人化したものなので抽象的なところもあり、そういう意味でも「五反田計画」の中で会員企業がどういうサービスを提供している会社なのかとか、行政と行うイベントなどを掲載することによって「五反田バレー」の取り組みがより理解しやすくなっていると思います。会員企業の方たちが自社の記事を名刺代わりの企業紹介に使ってくれているような話も聞き、コンテンツ量が増えて行くことによって、「五反田バレー」が捉えやすくなっているのも事実です。

宮脇さん: 基本的には「五反田バレー」に参画している企業さんの記事が多いですが、それ以外にも五反田の街のことや、働いている人に役立つコワーキングスペースの情報、過去には芸人さんと飲み歩く「五反田のはしご酒」のような独自に企画した記事も人気がありましたね。

品川区・地域・企業。スタートアップ全体のエコシステムを広げる「五反田バレー」ならではの仕組みづくり。

――地域活性の取り組みについてもお聞かせください。

中村さん これは昨年(2021年度)の取り組みですが、商店街で行っているスタンプラリーをIT化してみようと、品川区商店街連合会と品川区、電子スタンプを提供した「株式会社エム・フィールド」の3者が協力して「大商業まつり デジタルお買物ラリー」を開催しました。それまでは紙のスタンプラリーだったので、どういう属性の人がスタンプリーに参加して、どこのお店でどれだけ反響があったかというのは把握できなかったのですが、ITを導入することによって分析できるようにしました。他にも西五反田にあるVRの会社がコンテンツを作り、商店街に来た人たちに新しい体験をしてもらうという取り組みもありましたね。

いずれにしても、地域活性化が目的ではなくて、結果的に地域のためにばなれば良いな、というところからスタートしています。ベンチャー・スタートアップにとっては、そこで得られたノウハウや事例をパッケージにして営業活動やPRの一環として活用できたりと自分たちの事業成長のきっかけになり、他のビジネスや、アライアンスのような話につながる。その結果として地域の人たちもIT化する。そのような取り組みの中で地域が少しでも面白くなったり便利になったりしていくと、地域が盛り上がる好循環が生まれるのではないかと思っています。

インタビュー中の模様
インタビュー中の模様

――「五反田バレー」の今後の展望についてお聞かせください。

中村さん: 最近、「エコシステム」という言葉をよく使っていますが、品川区さんと連携していろいろなことに取り組むようになり、地域はもちろん会員企業にとってもメリットになる事例がうまく作れるようになってきました。また、スタートアップに限らず、ベンチャーキャピタルや大手企業の新規事業部も含めて、「五反田バレー」に関わっていただける企業が増えて欲しいと思います。スタートアップの中だけで閉じるのではなく、それを取り巻く全体のエコシステムをどんどん広げて行けると良いなと思います。

「五反田でスタートアップするってこういうこと」といった傾向や特徴が出てくると新しくスタートアップする企業さんも「五反田バレー」に入りやすいのかなと思います。それはきっと会社の規模感でも無くて、創業して間も無い頃でも五反田でやった方が上手く行くよねと感じられる仕組みを作っていきたいと考えています。

宮脇さん: つい先日、「品川経済新聞」の方が15周年を迎えましたが、私自身、健全な情報流通が良い世の中を作ると思っているので、「五反田計画」もお役に立てるような情報をどんどん発信していきたいと思います。

堅実さとバランスが魅力の五反田。若い世代も増えてきている街の変化。

――みなさんは日々五反田で働き、過ごされているわけですが、この街の魅力をどのようにとらえていますか?

鈴木さん: そうですね。五反田にいるスタートアップの皆さんは実利を追っている会社が多く、みんなそれぞれに自分の会社のサービスやどうやったら会社を成長させられるかを考えていて、堅実なところが私は好きなんですが、それはこの街自体にも言えることかなと。

決して派手なアピールは無いかもしれませんが、必要なものがちゃんと揃っていて、おいしいお店もいっぱいあって、居心地がよく快適な街です。

「五反田バレー」の広報を務める鈴木さん
「五反田バレー」の広報を務める鈴木さん

中村さん: 自分は今、近くの戸越に住んでいますが、五反田周辺には武蔵小山や中延などもあるので、休日など時間があれば五反田から商店街に歩いて行くこともできます。以前勤めていた会社が港区にあったときは、オフィスから徒歩5分のところに住んだこともありますが、重要なのは近さだけでは無いんです。そこに住んでいた頃と比べるこの辺りの街は週末はおだやかな時間が流れている気がして、リアルに生活する街としてはそういう点は大事だなと思います。

――宮脇さんはお住まいも五反田だとお聞きしました。

宮脇さん: はい、私はこの辺りが「五反田バレー」と呼ばれる以前、2012(平成24)年春から住んでいるので街の変化も肌で感じていますが、ベンチャー・スタートアップ企業が増えたこともあり、働く方はもちろん、住んでいる方も若い世代が増えているように思います。ファミリーの方々もよく見かけますし、街の雰囲気も変わってきましたね。

近年、若い世代やファミリー層も増えてきたという五反田の街並み
近年、若い世代やファミリー層も増えてきたという五反田の街並み

それと五反田はよく治安が悪いのではと言われることがありますが、まったくそんな風に感じたことはないですね。働く場所、暮らす場所、遊ぶ場所がいい距離感で共存していて、むしろ過ごしやすく感じます。

中村さん: そう、五反田はバランスがいい。

宮脇さん: あと、五反田は昔ながらの個人商店もまだ数多くあるので、飲食も豊かです。個人的には赤羽や立石なんかも飲み歩きの街としては好きですが、日々の暮らしの一部として楽しむのであれば五反田はちょうどいいですね。

地域の名店・昔ながらの個人商店も健在で、食も充実の五反田
地域の名店・昔ながらの個人商店も健在で、食も充実の五反田

目黒川などの自然もあって、川沿い桜並木は中目黒ほど有名ではないのでそこまで人も混まずに、お花見が楽しめます。船着場があるところの「大崎橋広場」とか、「五反田ふれあい水辺広場」辺りも、ゆったりした雰囲気で良い場所ですね。芝生もあるし、子ども連れですごす近所の人たちも多いです。五反田は地形的にもそんなにアップダウンが少ないくて、急な坂があるのは島津山のあたりくらいかなと思うので、街歩きもしやすいですね。

目黒川周辺は自然も豊か(写真は「五反田ふれあい水辺広場」付近)
目黒川周辺は自然も豊か(写真は「五反田ふれあい水辺広場」付近)

鈴木さん: 子育て・教育面でいうと、五反田にある「品川区立日野学園」さんは国内初の施設一体型の公立小中一貫校で、「五反田バレー」のベンチャー企業にも授業で見学に来られたりもしましたし、面白い教育活動をされていていいなと思います。

「五反田の色は大切に」「新しい広がりに期待」この街の未来への想い。

五反田の今後・未来についても聞きました
五反田の今後・未来についても聞きました

――現在、駅前で再開発事業なども進められていますが、変化する五反田の未来への想いや期待することをお聞かせください。

中村さん: 「五反田バレー」としては、ベンチャー・スタートアップは成長も速く、企業規模が大きくなって手狭になったタイミングで次の場所が見つからず、やむを得ず他のエリアに移転して行ってしまうことも多いので、ステップアップ後の規模に対応できるオフィスが整備されていくとありがたいですね。

また、個人的な希望としては、開発が進んでも流行のお店や人気のチェーン店ばかりの街というのは寂しいので、今ある店や、五反田らしい絶妙で多様な魅力のバランスを保っていって欲しいと思います。

駅前では「旧ゆうぽうと」跡地に大規模複合開発が進行中
駅前では「旧ゆうぽうと」跡地に大規模複合開発が進行中

宮脇さん: 再開発と同時に大きなマンションの建設も進んでいますよね。人口が増えて街が賑やかになっていくのは良いことだと思っています。一方で、五反田には昔からの住民や商売を続けている人がいて、そういう方々が街を見守り、良いものを残してきてくれたのだと思うので、ちょうどいい形でブレンドされていくといいですね。

中村さん: そうですね。五反田の色を残しつつ、新しい広がりがでると嬉しいですね。

鈴木さん: 私も、五反田らしさは残して欲しいです。それと新しいマンションなどができることによって、エンジニアなど様々な職種の方たちも五反田に移り住むようになって、ここで家族ができて、その子どもたちがまたベンチャーを立ち上げる、というようなストーリーが生まれたら嬉しいです。「五反田バレー」から世の中に新しいサービスや価値を提供しつつ、五反田愛あふれる人たちがこの街に増えたら良いなと思っています!

現在の街の色に、新たな賑わいや魅力の融合が期待される
現在の街の色に、新たな賑わいや魅力の融合が期待される

一般社団法人 五反田バレー

代表理事 中村 岳人さん(株式会社Hiway)、
理事企業広報 鈴木 章子さん(セーフィー株式会社)、
「五反田企画」宮脇 淳さん(有限会社ノオト)
URL:https://gotanda-valley.com/
※この情報は2022(令和4)年5月時点のものです。

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