荏原町に暮らすEBARA-MACHI AREA GUIDE

イベントで地域を巻き込み、暮らしの質を高める「荏原町商店街」の取り組みと魅力

歴史ある商店街が多く残る品川区。東急大井町線「荏原町」駅周辺に広がる荏原町商店街もそのひとつだ。かつてこの商店街で15年ほど書店を経営し、現在は荏原町商店街振興組合の事務仕事を請け負われている千葉秀喜さんに、「荏原町商店街」の歴史や取り組み、荏原町の魅力などを聞いた。

お話しをうかがった「荏原町商店街」の千葉秀喜さん
お話しをうかがった「荏原町商店街」の千葉秀喜さん

小規模で個性的な飲食店が増えつつある「荏原町商店街」

――まず「荏原町商店街」の概要・沿革についてお聞かせください。

千葉さん:昭和初期から小さな商店が集まって次第に大きくなったと聞いています。団塊の世代が各店の初代店主として商店街の最盛期を支えてきました。「荏原町」駅前の十字路を中心に、南に延びる本通りと縁日通り、西側の旗の台方面へ続く中央通り、中延方面に向かって東側の弁天通りという4つの通りから構成されているのが特徴です。縁日通りを南下した先は地名としては大田区馬込ですが、区をまたいで商店街を利用される方も多いです。ちなみに中央通りはセブンイレブンまでで、その先のスーパー「オオゼキ」から向こうは旗の台の商店街になります。

「荏原町」駅前の十字路
「荏原町」駅前の十字路

千葉さん:この辺りでは武蔵小山商店街パルムが最も規模が大きく、戸越銀座商店街や中延商店街に次ぐ規模なのが、「荏原町商店街」といったところでしょうか。規模が大きいので、商店会ではなく商店街振興組合なんです。現在の加盟店は120ほど。加盟していない店もあるので、商店街の店の数としてはもっとあります。私が書店を営んでいた頃は200軒近くあったと思います。

時代とともに金物店や寝具店など物販が減り、飲食店などサービス業の店が残りました。一時期は美容室が増え、その後整体やリラクゼーションなどの店が増え、さらに調剤薬局やクリニック、スポーツジムなどが増えてきました。全体的には、2000年(平成12)年の法改正でチェーン店が入ってきた影響が大きかったと思います。

中央通り
中央通り

――多くの商店街があるこのエリアにおいて、荏原町商店街の強みや独自性は何だと思いますか?

千葉さん:最近は一人で切り盛りできるぐらいのごく小規模な飲食店が増えています。とても小さいけど個性豊かなお店。そうした魅力的な店がこのまま増えていけば、それを強みにできるかもしれません。いまは過渡期ですが、そんな風に良い方向にシフトできればいいなと思います。

昔から力を入れているのはイベントですね。面白いイベントを企画・運営して人を集めることに注力しています。大勢の人に楽しんでもらい、また次の年も来てもらえるよう、告知から運営方法に至るまで知恵を絞っています。各店が創意工夫して集まった方々をお客様にしていくことで、商店街のにぎわいにつなげられたらと思います。

弁天通り
弁天通り

――荏原町に住んでいる方にとって、この商店街を利用するメリットは何だと思いますか?

千葉さん:昔はみんなが顔見知りみたいな感じでしたから、「安全安心」とか「顔の見える商店街」という点を推してきましたが、今は状況が違いますし、各店舗の方々がそういう意思を持ってお客様に接しないと難しいですね。ただ、商品だけが魅力ではなくなってきていると思うので、スーパーにはないメリットを考え続けていきたいです。

試行錯誤を繰り返したイベントを通じて、商店街に関心を持つ人が増えている

――商店街では主にどのようなイベントが行われていますか。特に地域の方々からの反響が大きいイベントがあれば、詳しく教えてください。

千葉さん:一番集客力があるのは、夏休みの期間中に行われるイベントですね。近年は「ハッピーサマーフェス」と題して行われ、親子連れが多く訪れます。

昔は「夏休みふれあいこども祭り」と題し、ジャンボのり巻きという、大勢の子どもがずらっと並んで長い海苔巻きを作るイベントが有名でしたが、残念ながら高齢化や人手不足で終了してしまいました。昔は料理体験など食育になるような企画がメインでしたが、コロナ禍の影響で食材を扱うことが難しくなったため、2023年からステージや屋台を主体に変えました。

子どもたちは屋台が楽しいみたいですね。コロナ禍で体験の機会が少なかった子どもたちにとっては、五感が刺激される体験として思い出に残ってくれているのではないかと思います。

近年の猛暑を考慮して今年は8月末の開催とし、スタートを昼から午後3時に変え、代わりに盆踊りを復活させて夜まで行いました。ステージは地元の人たちの発表の場と考え、荏原商店街会館の2・3階にあるダンススクールの生徒さんの発表などを行っています。近隣の学校に声をかけて、書道部による書道パフォーマンスをやった年もあります。

荏原商店街会館1階の商店街振興組合事務所
荏原商店街会館1階の商店街振興組合事務所

千葉さん:10月の最終月曜日に行うハロウィンイベントも、かなりの反響があるイベントですね。商店街が歩行者天国になる16時から18時までの2時間に、仮装した子どもたちがお店を回ってお菓子をもらう仮装パレードを行いました。

事前予約制で、年々参加者数を増やしており、400名だった去年は2~3時間で枠が埋まりました。今年は480名を事前予約制で募集する予定です。7、8年前に参加者60名から始め、試行錯誤してここまでのイベントに育ったこともあり、これだけの反響があり、品川区の中でも認知度が年々高まっているのは本当に嬉しいことですね。

参加する子どもたちに配った2024年のルートマップ
参加する子どもたちに配った2024年のルートマップ

千葉さん:他の商店街でもハロウィンのイベントはやっていますが、やはりレギュレーションに苦労しているようです。その点、「荏原町商店街」のハロウィンは比較的ゆったり楽しめます。400人の子どもたちと一緒に親御さんも来るので、人数は倍。およそ1,000人が2時間にわたって荏原町商店街を埋め尽くすわけで、お店の人たちは「この辺りに、こんなにたくさん子どもがいたんだ!」と驚いています。子どもたちに楽しんでもらうのはもちろんですが、最大の目的は大人に商店街にあるさまざまなお店を知ってもらうこと。子ども向けのイベントをきっかけに、大人の方にも商店街に興味を持ってもらえたらうれしいですね。

千葉さん:春にはガラポン抽選会をやっています。商店街で買い物をすると抽選券をもらえて、ガラポンを回して当たれば特典がもらえるというものです。

さらに11月下旬から12月上旬にかけては「冬の贈り物」という歳末セールを行います。これも抽選のプレゼント企画ですが、事前に希望する商品を選べます。商品は1万円程度。期間内に買い物をして抽選券をもらったら、商品を選んで事務所にある箱に投函します。でも、商店街ができるのは応募券を作って参加店に配るところまで。お客様に渡すのはお店なので、そこで頑張ってもらわないと盛り上がりません。だからことあるごとにお店の人とコミュニケ―ションをとって、協力を頼んで巻き込んでいくように心掛けています。去年は応募券を6万枚作り、3万の応募がありました。何年か前までは1~2万枚の応募だったので、徐々に参加者は増えています。今年からは、応募券に二次元バーコードを付けて応募しやすくしようと考えています。

縁日通りにある天明三年銘石造道標(左)と庚申堂
縁日通りにある天明三年銘石造道標(左)と庚申堂

――荏原町に暮らす方々の生活の質を高めるために、どのような価値を提供したいと考えていますか?地域への想い、展望についてお聞かせください。

千葉さん:一言で表現するとしたら、「こだわり」でしょうか。イベントならその魅力を正しく伝えて人を集めるために、そして子どもたちの記憶に残るように、チラシからしっかりこだわって作っています。参加した子どもたちが「楽しかった。来年もまた来たい」と思ってもらうことが大事です。子どもたちはいずれ大人になって、この町を支えていくのですから。抽選券もコピー用紙で簡素なものを作った方が楽だし安上がりですが、ペラペラの白黒プリントでは、そのイベントの価値まで低く見られかねませんよね。

立会川緑道
立会川緑道

千葉さん:私はこの町で生まれ育った人間ではありません。2008(平成20)年に書店を畳んだ後、故郷の陸前高田市に戻り、東京と行き来しながらデザインの仕事をしていました。そこに東日本大震災が起きました。私は打合せで東京にいて無事でしたが、故郷ではすべてが流されました。その後多くの災害支援に関わり、復興について考えるようになりました。実は2010(平成22)年に陸前高田に帰ったとき、駅前はシャッター街になっていました。震災によって町が無くなったところから、復興すると言って元に戻っても、過疎の町に戻るのでは意味がありません。にぎわいのあるまちをつくるにはどうすればいいかを真剣に考えました。

地元でもない商店街の仕事を頑張れるのは、そうしたバックボーンが影響しているのかなと思います。私自身、荏原町は長く働いた場所で愛着がありますし、この町を故郷とする友人・知人もいます。商店街で頑張る若い人たちのためにも、活気あるまちづくりに少しでも貢献できればうれしいです。

電車移動が便利!立会川緑道で人々が憩う荏原町エリア

――地域住民の方々、エリア内にある施設などとともに取り組んでいることはありますか。

千葉さん:商店街にある「隼」という飲食店は、一ノ蔵の日本酒を仕入れています。一ノ蔵は宮城県に本社のある日本酒メーカーで、東日本大震災の復興支援として、特別純米酒「3.11未来へつなぐバトン」の売上全額を、東北の子どもたちを支援する「ハタチ基金」に寄付しています。「隼」さんの主導で、荏原町商店街では「3.11未来へつなぐバトン」を各店舗で取り扱おうという取り組みを行っています。

街灯にも「えばらまち商店街」の文字が
街灯にも「えばらまち商店街」の文字が

――歴史ある「荏原町商店街」において、ここ数年で街が変わったなと感じる瞬間はどんなところですか? 一方で「昔から変わらない」と感じられるものがあれば教えてください。

千葉さん:駅前には青果店や精肉店など小さなお店が集まった雑多な雰囲気の区画がありましたが、再開発で2016(平成28)年にはなくなりました。これが一番大きな変化で、街の景観が大きく変わりましたね。ここ5~6年では昔から続いていた店がいくつも閉店し、弁天通りにあった老舗料亭の「秀」もなくなり、また風景が変わりました。ただ、十字路の商店街であること、ずっとイベントをやってきた「立会川緑道」や「荏原町公園」がみんなの憩いの場であることは、時代を超えても変わりませんね。

「荏原町公園」
「荏原町公園」

――商店街のある荏原町エリアに住む魅力や、周辺のおすすめスポットについて教えてください。

千葉さん:なんといっても電車移動が便利で、都心にすぐ出られますのが良いですね。「荏原町」駅からは自由が丘や二子玉川、大井町などに行きやすいですし、「旗の台」駅を使えば五反田にもすぐです。「馬込」駅からは都営地下鉄浅草線で銀座方面にも行けます。

神社が多いのも魅力です。地元の人々に八幡様として親しまれる「旗岡八幡神社」は、5年後に創建1000年を迎える歴史ある神社で、9月の例大祭では里神楽が披露されます。七福神巡りも楽しめますし、第二京浜の先には「蛇窪神社」もあります。さらに「旗の台」駅の近くには「昭和医科大学病院」もあるのでいざという時も安心です。

荏原町のまちを見守る「旗岡八幡神社」
荏原町のまちを見守る「旗岡八幡神社」

――これから荏原町周辺に住みたいと考えている方々に一言メッセージをお願いいたします。

千葉さん:移動が便利で、買い物をする場所もたくさんあるので、住む場所として非常に恵まれた環境ではないかと思います。引っ越して来られたら、ぜひ「荏原町商店街」にも足を運んでみてくださいね。

荏原町商店街 千葉秀喜さん
荏原町商店街 千葉秀喜さん

荏原町商店街

千葉秀喜さん
所在地:東京都品川区中延5-6-16 商店街事務所
電話番号:03-3783-8221
URL:https://ebaramachi.jp/site/
※この情報は2025(令和7)年9月時点のものです。

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