かつ好

人形町交差点近くの裏通りにあるとんかつ店「かつ好」。静岡に本店を持つとんかつの名店が、2016（平成28）年に東京進出したお店。今や多くのファンを持ち、人形町を代表するとんかつの名店になっている。

その人気の理由のひとつは、とんかつの基本的な作法を守りつつ、お客さんのニーズに合わせて柔軟なメニューを取り入れているため。その象徴が、ディナータイムに店を訪れるお客さんの半数以上がオーダーするという「とんかつコース」の存在だ。とんかつは単品、定食、御膳などで提供されるのが一般的だが、「かつ好」はそれをコースに仕立て、一番の人気メニューとして君臨させている。

コースを主役に据えた理由を、店主の水上彰久さんに聞いた。「静岡の時代からコースはありましたが、この店に移った時に、せっかくカウンターがあるので、揚げたてのとんかつをさっと出して食べていただきたいと思ったんです。お酒も進みますしね。そこで、とんかつをコースで提供するように仕立ててみました」とのこと。確かに、会社関係で来るお客さんが多いという場所柄、コースでオーダーできると幹事の方は負担が減るし、お酒もゆっくり飲める。その点がエリアのお客さんのニーズと合致し、支持を集めたようだ。

メインのとんかつの肉は、ロースとヒレから好みで選ぶことができる。まずはお手製の梅塩で、次に王道の和辛子と特製とんかつソースで、次いで変化球のわさび醤油で、という順で頂くのが店舗おすすめの食べ方。残ったピースはお好みで食べつつ、一切れだけ残しておくと良い。

というのも、メインの次に出てくるのが単なる白飯ではなく、カレーライスであるため。上にひょいとカツを乗せれば、即席のカツカレーが出来上がる。あさり汁で食後を締めたら、最後に待っているのはデザートの抹茶アイス。これもまた濃厚で美味しい。

もちろん、とんかつ単品でのオーダーや、各種とんかつ定食も用意されている。肉の部位のほか、厚さも選んでオーダーできる点が特徴で、注文後に塊から切り分ける。厚切りの肉は芯までじっくり火を通すため、温度の異なる油で二度揚げで仕上げているという。昼夜とも同じ価格、メニューで営業している点も良心的だ。

料理だけでなく、インテリアもまた面白い。カウンターやテーブルに使われているのは、かつて巨大な酒樽の一部だったという古材。表面の“味わい”を敢えて残した仕上げが、和洋折衷の料理の雰囲気とマッチし、「ゆっくりとお酒を楽しもう」という気分を盛り上げてくれる。カウンター席に座れば、カツが揚がるたびに「ザク、ザク、ザク」というテンポの良い包丁の音が聞ける。味覚だけでなく、五感で楽しめる点もまた「かつ好」の魅力なのだ。

実際に足を運んでみて、店の雰囲気、主人のたたずまい、味、音、香り、さまざまなものを五感で感じてこそ、この店を「堪能した」と言える。定食だけでも気軽に来られる店だが、まずはコース料理をオーダーして、店の魅力を存分に味わいたい。

かつ好
所在地：東京都中央区日本橋人形町3-4-11 
電話番号：03-6231-0641
営業時間：11:30～14:00（L.O.）、17:30～20:30（L.O.）
定休日：日曜日
https://katuyoshi.com/