スペシャルインタビュー

自分を大事にし、同じように他者も大切に 人権教育に力を注ぐ「台東区立千束小学校」

浅草4丁目にある「台東区立千束小学校」は、下町情緒を残す千束通り商店街に近く、「千束公園」に隣接する住宅街にある。昨年115周年を迎えた学校の取り組みや地域とのつながり、千束エリアの魅力について、瀧島和則校長先生にお話を伺った。

日頃から「もし自分だったら」と考えさせる

インタビューご協力いただいた瀧島和則校長先生
インタビューご協力いただいた瀧島和則校長先生

―学校の沿革・概要についてお教えいただけますでしょうか。

瀧島校長先生:1906(明治39)年に東京市千束尋常学校として開校した、歴史ある小学校です。幼稚園が併設されていて、私は幼稚園の園長も兼務しています。令和3年2月現在、児童数は226名。2年生と4年生が2クラス、他は1クラスで、全8クラスあります。教員は15名、スクールカウンセラーや図書館司書などを含めた教職員は45名います。

校長室の壁に掲げられている、開校以来続く教育目標
校長室の壁に掲げられている、開校以来続く教育目標

―特に力を入れている取り組みがあればお聞かせください。

瀧島校長先生:二つあって、一つは人権教育です。本校は40年以上前からずっと人権尊重教育推進校に指定されているんです。子どもたちには「自分を大切にし、そして自分と同じように他の人も大切にするように」と教え、なんでも 自分ごと として考えるよう指導しています。例えばけんかをしていたら、「あんなことを言われて、自分だったらどう思う?」と投げかけます。小さいことですが、そういった日々の積み重ねが大事だと思うので。実際、「もし自分だったら」をちゃんと考えられる素直な子が多く、成果が出ていると感じています。

子どもたちの努力を認める取り組みについての掲示
子どもたちの努力を認める取り組みについての掲示

―力を入れているもう一つの取り組みは何ですか。

瀧島校長先生:子どもの努力を認めることです。本校の子どもたちは、スピーチ大会やランRUNフェスティバルなど多くの分野で成果を上げています。そこで、子どもたちがより前向きに頑張れるよう、そしてその頑張りを保護者の皆さんによく知ってもらうために、努力をもっとしっかり認めていこうと考えています。例えば15年くらい続く「音読」という取り組みでは、高学年なら「国破れて山河在り」から始まる『春望』、中学年なら宮沢賢治の『アメニモマケズ』など、学期ごとに指定された課題を覚えます。担任の先生に合格をもらったら校長室に来て、私の前で暗誦します。ここでも合格できたらしっかり褒めて、その子の名前を校長室前の廊下に張り出すんです。他にも、なわとびや水泳の好成績を歴代記録として残すなど、子どもたちが達成感を味わって努力を続けられるようにしています。 

子どもたちのために、工夫してイベントを実施

正門前
正門前

―貴校ならではの設備などはありますか。

瀧島校長先生:今年度から台東区でも一人一台タブレットが配布されたので、現在タブレット学習に力を入れています。先日スピーチ大会を行ったのですが、その様子を撮った映像を後日配信して保護者の方に見ていただきました。本当はタブレットの配布はもう少し先の予定だったんですが、リモート学習の必要性が高まったため前倒しになったんです。今は従来の黒板と電子黒板、タブレットを併用して授業を行っています。

校庭
校庭

―秋に行われたスポーツフェスティバルについて教えてください。

瀧島校長先生:コロナ対策を徹底したうえで行った、運動会の代替イベントです。コロナだからできないと決めつけて断念するのではなく、できる方法を探って実施しました。密を避けるため団体競技は行わない、児童と保護者で観戦日を分けるなど、例年とは違うものになったので、「スポーツフェスティバル」という別の名前で行いました。 

体育館
体育館

―他にも工夫して実施したイベントはありますか。

瀧島校長先生:去年の11月、台東区の支援制度を利用して、日光移動教室に行けなくなった6年生が「台東区移動教室」に行きました。宿泊先はすぐ近くの「浅草ビューホテル」。あまりに近いので事前に子どもたちに確認したら、「遠くに行けなくてもいいからみんなと一緒に泊まりたい」と言うので実施しました。給食の後、上野公園まで歩いて行って不忍池でスワンボートをこぎ、夕食後に学校に戻り、保護者の方々が協力してくれた肝試しを楽しみ、ドッジボールをやりました。次の日は江戸切子体験、水上バス、プラネタリウムを満喫して、仲見世で買い物をして帰りました。子どもたちにとっては地元ですが、みんなとっても楽しそうでした。

「葱善」や「千束通り商店街」との交流で地域を知る

千束小学校で音楽教師を務めていた作曲家・中山晋平氏の功績をまとめた部屋
千束小学校で音楽教師を務めていた作曲家・中山晋平氏の功績をまとめた部屋

―地域の方との交流などがあれば教えください。

瀧島校長先生:本校の目の前にある「葱善」さんには、日頃からお世話になっています。食育の一環として、江戸千住葱を学校の花壇で栽培させていただいているんです。毎年2年生が種まきから収穫までやります。それだけでなく、育てた葱から種を取り、それを次の次の2年生が引き継いで同じ学習で使うんです。命のリレーですね。「葱善」さんは浅草神社に葱を奉納していて、子どもたちが育てたものも一部一緒に持って行ってくれます。そのとき2年生が一緒に葱の成長を見守ってくださったお礼を伝え、記念撮影をするのが恒例になっています。2年生が育てた葱を先日給食で出したんですけど、そのおいしさに子どもたちも感動していました。

廊下
廊下

―出前授業などもあるのでしょうか。

瀧島校長先生:そうですね。3年生の地域学習で、千束通り商店街の理事長さんが来て子どもたちのインタビューを受けてくださったりしています。みなさん優しいので、お願いするといつも快く引き受けてくださるんです。オリンピアンやパラリンピアンの方にも毎年来ていただいています。パラリンピアンではないのですが、去年は車椅子トラベラーの三代達也さんに来ていただきました。事故で突然車椅子生活となって落ち込まれるのですが、不屈の精神で立ち直り、車椅子での世界一周を成し遂げた人です。偶然見たテレビ番組で彼の話に感銘を受け、ぜひ子どもたちに会って話してほしいと思って連絡を取ったんです。直に話を聞けたことは、子どもたちにとって貴重な経験になったと思います。

これまでに来校されたアスリートのサイン
これまでに来校されたアスリートのサイン

―地域の方たちと連携して行っている行事はありますか。

瀧島校長先生:三社祭では子ども神輿も出るので、子どもたちは毎年町会の人たちと校庭で一緒に担いでいます。みんな三社祭が大好きなので盛り上がりますね。私たち教員も、法被を着て町会の人たちと一緒に担ぎますよ。 

最大の魅力は人々の温かさ 浅草千束エリア

千束小学校が大切している「千束スタンダード」の掲示
千束小学校が大切している「千束スタンダード」の掲示

―今後、新たに検討されている取り組みなどあれば教えてください。

瀧島校長先生:本校では、「挨拶」「返事」「言葉使い」「後片付け」「時間を守る」の5つから成る規範「千束スタンダード」を設けているのですが、改めてそれに力を入れようと考えています。コロナ禍のいまは、人に向かって大きな声を出せませんよね。こういった状況になって改めて、元気な挨拶というのは本当に気持ちの良いものだと再確認できたんです。だから安心して大きな声で挨拶できるようになったら、改めて「千束スタンダード」、特に挨拶に力を入れて指導しようと思っています。

創立115周年を祝って子どもちが作った大漁旗
創立115周年を祝って子どもちが作った大漁旗

―子どもたちと関わる上で、どんなことを大事にされていますか。

瀧島校長先生:子どもの話をじっくり聞き、子どもと一緒にやるということを心がけています。一方的に諭すだけでなく、言い分を聞いてあげる。「校長先生、なわとびやろうよ」って誘われたら、一緒に楽しむ。だから子どもたちも私に声をかけてくるし、いろいろしゃべってくれるし、気軽に校長室にも来るんだと思います。 

―コロナ対策について教えてください。

瀧島校長先生:子どもたちには、自宅で検温してから登校してもらっています。教室をはじめ校内ではこまめに換気を行い、手洗いやうがいの指導をしています。

多目的教室
多目的教室

―最後に、千束通り商店街を中心としたエリアの魅力についてお聞かせください。

瀧島校長先生:地域の人々のつながりが強く、人が温かいこと。これが一番です。千束小学校と千束幼稚園を合わせて「千束ファミリー」と言っていて、地域のみんなで子どもたちをみるという意識が根付いているんです。学校行事にも非常に協力的ですし、先生方にもねぎらいの言葉をかけてくださいます。そういった人の優しさが、最大の魅力だと思います。

東京都台東区立千束小学校

瀧島和則 校長先生
所在地:東京都台東区浅草4-24-11
電話番号:03-3876-3717
※この情報は2021(令和3)年2月時点のものです。

※取材時にはマスク着用、写真撮影時のみマスクを外しています。