Nabeno-Ism(ナベノ-イズム)
フランス料理に明るくなくても、「ジョエル・ロブション」という名を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。世界で最も星を取り、フレンチの皇帝と呼ばれた、世界で最も有名なシェフの一人だ。日本でも系列レストランは9つを数える。日本の「ジョエル・ロブション」でエグゼクティブ総料理長を勤めたのが、渡辺雄一郎シェフだ。21年間にわたり勤務した、ロブショングループシャトーレストランを勇退したのは2015(平成27)年のこと。翌年には隅田川のほとりで、フレンチレストラン「Nabeno-Ism(ナベノ-イズム)」を開業した。
世界各国、フランスやモナコなどの有名料理店で修業し、日本の「ジョエル・ロブション」を率いてきた渡辺シェフが、独立する場所に選んだのは浅草。なぜこの地を選んだのか聞いてみると、「地域の伝統食産物、江戸の伝統野菜、そして蕎麦粉などをフランス料理に取り入れてみたかった」「浅草という、地域に根付いた食文化と、長年学んできたフランスの食文化を融合させた唯一無二の料理、世界感を感じて頂きたい」と、さまざまな新しいフランス料理を提供してくれるレストランだと言う。
窓の外には悠々と流れる隅田川、その先にはスカイツリーも見える。店内に入るとまずはガラス張りのキッチンが登場。眺望の良いカウンター席、広々としたテーブル席、外にはテラス席も。どの場所でもくつろぎながら食事ができる、完全予約制のコース料理のフランス料理店だ。
「江戸時代から続く食文化、歴史ある町で自身の学んできたフランス料理を表現し、老舗店が凌ぎを削る、この地でチャレンジしてみたい」との言葉の通り、こちらの料理は、通常のフランス料理とひと味違う。写真の料理はなんとそばがき。これは両国にある人気の蕎麦店「江戸蕎麦ほそ川」の蕎麦粉を使ったもの。それを「ソースエミュルッショネ」というバターを使用し乳化させるフランス料理の技法で仕上げている。なんとも美しいそばがきだ。
そしてこちらは、「牛フィレコンソメ」。国産牛フィレ肉をカンボジア産の生コショウペーストを塗り、川端さんが作る金沢蓮根をローストやニョッキとさまざまな仕立てにし、V.C.C.で焼き上げたフランス産フォアグラを添え、カリフラワーのスムール、蕎麦米をひそませた極上の一品。最後はお客様の目の前で、コニャック風味のコンソメを注ぎ、完成させるというのも、なんとも憎い演出だ。
渡辺シェフが織りなす料理は、その時いちばん美味しい、旬の素材を使うものが多い。例えば、「冬のスペシャリテ」には、山口県産萩直送の甘鯛が用いられる。香ばしい鱗付きの甘鯛は、冬にはいっそう身の甘みが引き立ち、甘鯛の中骨を焼き上げ旨みをひきだし、香り高い高知県産の柚子の果汁を香らせたスープに鱗は香ばしく身はふんわりと太白油で丁寧に焼き上げた甘鯛を浮かべ、ナージュ仕立てにした至極の逸品。
フランス料理の本流、定義、伝統を守りながらも、更に進化させる渡辺シェフが奏でるフランス料理。古くから続く浅草の食文化を融合させた、ほかでは食べることができない料理に、注目が集まっている。
Nabeno-Ism(ナベノ-イズム)
所在地:東京都台東区駒形2-1-17
電話番号:03-5246-4056
営業時間:12:00~15:00、18:00~22:00 ※完全予約制
定休日:月曜日、他不定休あり
https://www.nabeno-ism.tokyo/