豊島区政策経営部企画課インタビュー

住みたい街、住み続けたい街を目指す、豊島区の新たな取り組み

東京23区で唯一の「消滅可能性都市」と発表されて以降、「選ばれるまちづくり」を実現すべくさまざまな対策を打ち出してきた豊島区。2015(平成27)年に新庁舎がオープンして以降、新たな公園の整備や2020(平成32)年に旧庁舎跡地に誕生する「Hareza池袋」など、次々と新施設も生まれています。また区民参加型のイベントや文化催事なども目白押しの豊島区は、「外からのイメージ」と「実際に住んでいる人のギャップ」が大きい街なのだそう。住んでみないとわからない豊島区の魅力を、政策経営部のお二人にじっくり語っていただきました。

2015(平成27)年に新しくなった「豊島区役所」
2015(平成27)年に新しくなった「豊島区役所」

長く住み続けたいと思ってもらえる区に

―― 「消滅可能性都市」とされた豊島区ですが、住民基本台帳ベースでは女性の人口が大きく減少に転じる兆候も見られないとのことですね。

「消滅可能性都市」とされたときのデータ採用時期に他区とずれがあったようで、他の区は2005(平成17)年~2010(平成22)年までのものを、豊島区は2000(平成12)年~2005(平成17)年までのデータを採用していたようです。理由は、豊島区では2005(平成17)年~2010(平成22)年までの5年間で再開発が進んだことで急激に人口が増え、統計学的に急激に変化したデータは使用しないというセオリーに則ったものだそうで…。したがって豊島区の人口は現在29万人にものぼり、女性の人口が大幅に減少したというデータも特にないのが実態です。

ただ、もともと20代の男女が多く住んでいるにも関わらず、流動性が高く、ファミリー層は比較的少ない区。つまり若い時期は便利で楽しいから住むけれど、結婚などのタイミングで郊外などに引っ越されてしまう、長く住み続ける場所には選んでもらえないという側面はあったようです。ですので、この機会に「もっと長く住んでもらえるような区」「ファミリー層が暮らしやすい区」に変化しようということで、さまざまな取組みをはじめました。

新たな取り組みが多数始まっている
新たな取り組みが多数始まっている

「わたしらしく、暮らせるまち。」

―― 持続発展都市を目指すための方針のうち「女性にやさしいまちづくり」について具体的にどのような取り組みをされているか、教えてください。

「女性」とひとことで言っても、学生から働いている女性、子育て中のママ、シニア女性までいろいろです。そのそれぞれの世代、それぞれのライフステージの女性たちにとって「わたしらしく、暮らせるまち。」というのが、豊島区が考える「女性にやさしいまちづくり」のコンセプトです。

具体的には、多様な人材やワークスタイルに理解を示す上司“イクボス”の存在に注目し、区内の66団体(区内に拠点を置く企業46社、区内の7大学、13の区関連団体)が参加した「としま・イクボス宣言」を宣言しました。産・官・学が連携するのは都内の自治体でも初めての試みであり、全国的に見ても最大規模のものです。これにより豊島区が女性や子育て世代にとって働きやすい地域になればと考えます。

豊島区役所 政策経営部 企画課のお二人
豊島区役所 政策経営部 企画課のお二人

このほかにも、豊島区に在勤・在学・在住の女性やファミリー世代で構成するFF(Female/Family Friendly:女性やファミリーにやさしい)ミーティングの開催や区内の人や暮らしに関する情報発信サイト「としまscope」の立ち上げなど、2016(平成28)年の4月からではありますがいろいろと動きはじめています。

「としまscope」http://toshima-scope.city/

親しみやすいデザインの「としまscope」
親しみやすいデザインの「としまscope」

―― 親子で参加できるフェスティバルなども企画・開催されていますよね?

はい。区画整理事業により2016(平成28)年4月にリニューアルオープンした「南池袋公園」は、中央に広い芝生スペースを有した緑いっぱいの憩いの場で、カフェレストラン「ラシーヌ」やソメイヨシノをはじめとする樹木や花々など、都会の真ん中とは思えないのどかな公園です。2017(平成29)年3月末、この公園で「Local! Festival! 2017 by としまscope!」という区主催のイベントを開催したところ、本当に多くのファミリーやカップルなどたくさんの人たちが参加してくださいました。豊島区内の飲食店さんが屋台を出し、豊島区内で活動する作家さんたちがお店を開き、豊島区出身のアーティストが舞台で演奏するという、豊島区の底力を感じられる楽しいイベントでした。

多くの方が参加した「Local! Festival! 2017 by としまscope!」
多くの方が参加した「Local! Festival! 2017 by としまscope!」

幅広い世代の方が参加し、交流が生まれた
幅広い世代の方が参加し、交流が生まれた

―― 豊島区の魅力が詰まっている、という感じですね。

豊島区は、目白や駒込周辺の閑静な住宅街から巣鴨の庶民的な雰囲気、若者の街というイメージの池袋、都電荒川線の走る風景、目白の学習院や池袋の立教周辺の文教地区としての顔など、これらすべてが豊島区のなかにあるという実に多様性を持つ区なんです。この多面性とユニークさ、ひとくくりにできない楽しさが“豊島区らしさ”なのだと思います。「誰もが憧れる高級住宅街」でもなければ、「おしゃれな店が軒を連ねる街」もないですが、ブランド志向ではない気取らない実(じつ)のある街。まさに「わたしらしく暮らせるまち」だと思います。

アート・カルチャーを身近に感じる街に

―― 持続発展都市を目指すための方針として挙げていらっしゃる「国際アート・カルチャー都市構想」についても教えてください。

「国際アート・カルチャー都市構想」は、これまで進めてきた「文化創造都市づくり」と「安全・安心創造都市づくり」を統合し、さらに発展させる新たなまちづくりの考え方です。もともと豊島区は外国からの移住者も多く、多様な文化資源を有する区でした。この強みを活かしながら、人間優先の都市空間の整備を進め、表現の舞台として開放しくことで、世界からアート・カルチャーの魅力で注目される都市づくりを進めたいと考えています。

「国際アート・カルチャー都市構想」に取り組む豊島区
「国際アート・カルチャー都市構想」に取り組む豊島区

例えば2016(平成28)年11月に実施した「大田楽 いけぶくろ絵巻」。“田楽”とは平安時代から室町にかけて日本中で大流行し、こつ然と消えた芸能で、豊島区在住の九世野村万蔵氏の演出により再現し、「大田楽」創作の指揮をとられたのは五世野村万之丞氏です。九世万蔵氏は「大田楽」を池袋バージョンに演出をされました。

池袋の街をを舞台に約100名がパフォーマンスを繰り広げました。田楽の装束に身を包み、としまセンタースクエア→グリーン大通り→南池袋公園南を練り歩き、南池袋公園で「大田楽」を上演。現代のコスプレイヤーたちとコラボをしたり、お客さんと一緒に踊ったり、街全体を巻き込んでの大イベントとなりました。これこそが国際アート・カルチャー都市構想のテーマである「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」です。劇場やホールに限定せず、公園や街、道路までもを舞台に見立てて、誰もが参加でき、誰もが主役になれる楽しい催しを、これからも考えていきたいと思います。またそれを実現するための街の整備も同時に進めていく予定です。

「大田楽 いけぶくろ絵巻」写真:赤坂久美
「大田楽 いけぶくろ絵巻」写真:赤坂久美

―― 今後も新たな公園整備や開発なども行う予定ですか?

一番大きなものですと、豊島区役所の旧庁舎跡地エリアに新たなホールや区民センター、民間施設などが集合したシンボル的な複合施設「Hareza池袋」を2020年に開設する予定です。これは3棟から成る施設で、旧本庁舎跡地にはシネマコンプレックスやカンファレンスホール、約150人収容のイベントスペースやオフィスなどが入った「オフィス棟」、公会堂跡地には1300席の新ホールやライブ劇場、約300人収容のイベントスペースなどが入った「新ホール棟」、区民センター跡地には多目的ホールや小ホール、パパ・ママスポットなどが入った「新区民センター」が建つ予定です。

この合計8つの劇場は、歌舞伎から宝塚まで上演できる大型ホールから、区民のみなさんが利用しやすい規模のホールまでサイズ・規模ともにいろいろと揃っているので、まさに国際アート・カルチャー都市の中心拠点、文化にぎわいの拠点になると思います。また新区民センターには女性トイレを35ブースも設けたり、キッズスペースを完備したパパ・ママスポットなど子育て支援スペースも入り、さまざまな世代の人たちが集まりやすい環境を整えました。

新複合商業施設「Hareza池袋」イメージ
新複合商業施設「Hareza池袋」イメージ

このほかにも、造幣局跡地に防災公園をつくったり、「池袋」駅東西連絡デッキの整備なども予定しており、豊島区全体を住みやすく明るい街にすべく開発を進めていきます。

生まれ変わった「豊島区役所」

―― 2015(平成27)年5月から「豊島区役所」も新庁舎になり、区民に利用されやすくなったのでしょうか?

一番大きく変わったことは、土日も開庁していることでしょうか。平日昼間の開庁だけでは、なかなか働いている方は利用が難しかったと思うのですが、土日にもご利用いただけるようになり、年中無休のコールセンターも開設して問い合わせに対応できるようにしました。また最新型のシステムに入れ替え、さまざまな手続きや届け出などへの対応もスピーディに行えるようになっています。多言語への対応もスムーズになるよう人材も確保しましたし、以前に比較すると不便が減り、お待たせする時間なども多少解消したのではないかと思います。

また10階には、かつての豊島区の自然環境を体験できる屋上庭園やグリーンテラスを整備しており、小中学校の環境教育に活用しているほか、来庁者の方々の憩いの場になっています。4階には庁舎内の廊下を回遊しながら区の歴史資産や美術・工芸品を鑑賞できる「まるごとミュージアム」もあります。

区役所内にある「ふくろうコレクション」
区役所内にある「ふくろうコレクション」

豊島区の自然環境を体験できる「屋上庭園」
豊島区の自然環境を体験できる「屋上庭園」

そのほかにも「子育てインフォメーションセンター」も併設されていて、専門知識を持つ子育てナビゲーターが常時おりますので、子育てに関する相談を受け付けたり、子どもをプレイスペースで遊ばせながら子育て情報を入手することも可能です。このように区役所が「ただ手続きのために来る場所」ではなく、区民のみなさんが「ちょっと立ち寄れる場所」「気軽に相談できるところ」になってくれたらと考え、新庁舎を新たに始動させました。豊島区民のみなさんには、どんどん利用していただきたいと思います。

―― お二人のおススメの場所はどこですか?

高田さん:駒込にある商店街がおすすめですね。「駒込」駅近くからはじまる「霜降銀座商店街」は、車が通れないほどのこじんまりとした道の左右に八百屋や肉屋、魚屋、パン屋、本屋などが肩を寄せ合って立ち並んでいるという雰囲気で、夕方になるといい匂いが漂ってくるんです。サンダル履きでお惣菜を買いに行く主婦の姿や、八百屋の店先で世間話するおばあちゃんなど、「日本に失われつつある風景がここにある」という感じです。「霜降銀座商店街」を進むと、そのまま「染井銀座商店街」へと繋がっているのですが、生活用品はすべてここで揃う便利な街だと思います。

また駒込は江戸時代中期から明治時代にかけて上駒込染井と呼ばれ、植木職人が多く住む「園芸の村」でした。歴史もあり、豊島区のなかでも暮らしやすい静かで落ち着いた街ですね。

「霜降銀座商店街」
「霜降銀座商店街」

宮田さん:私のお気に入りの場所は、「雑司ヶ谷」ですね。池袋からぶらぶらと歩いて行かれる地域なのに、古い情緒が感じられる街並が今も健在で落ち着きます。古い建物をリノベーションしたお店なども増えつつあって、散策するには最適です。また都電も通っていて、なんともノスタルジックな風景。毎月第三日曜日には鬼子母神境内で「雑司ヶ谷 手創り市」も開かれていて、各地から楽しみに来られる方も多く人気がありますよ。

自然あふれる街並みの中で「雑司ヶ谷 手創り市」は開催される
自然あふれる街並みの中で「雑司ヶ谷 手創り市」は開催される

―― 豊島区の魅力を教えていただけますか?

宮田さん:実際に調査をしてみると、豊島区は「外からのイメージ」と「実際に住んでみた印象」のギャップが大きい街だという結果が出ておりまして…つまり豊島区の魅力は、住んでみないとなかなか外からは分からないようなんです。実際私も豊島区の住民なのですが、都心で便利なのに庶民的で温かくて、本当に奥深いまち。一度住むと引っ越ししたくなくなります(笑)。

先にも申し上げましたが豊島区とひとことで言っても、駒込から巣鴨、大塚、千川、長崎、池袋、目白、雑司ヶ谷もすべて区内、いろいろな表情を持っています。池袋の繁華街のイメージが先行しがちですが、「人が暮らす街」としての豊島区にももっと注目してほしいなと思います。

豊島区政策経営部企画課 インタビュー
豊島区政策経営部企画課 インタビュー

豊島区役所 政策経営部 企画課

豊島区 政策経営部 企画課長 高田秀和さん、女性にやさしいまちづくり担当課長 宮田麻子さん

所在地:豊島区南池袋2-45-1
TEL:03-3981-1111
URL:https://www.city.toshima.lg.jp/index.html