花と緑と読書活動が特徴の公立中学校

肯定的な言葉で生徒に寄り添い自己肯定感を高め、国際社会で活躍できる人間を育てる「国分寺市立第五中学校」

国分寺市北部の並木町にある「国分寺市立第五中学校」。2020(令和2)年度に着任した田中一郎校長先生に、学校で力を入れている近年のさまざまな取り組みや地域の魅力について伺った。

正門
正門

ノーチャイムによって、生徒は自ら考えて動けるように

――まず、学校の沿革および概要について教えてください。

田中校長先生 1981(昭和56)年に開校し、2021(令和3)年に開校40周年を迎えました。現在12クラスあり、418人の生徒が通っています。本校に入学してくるのは主に「国分寺市立第六小学校」と「国分寺市立第十小学校」の卒業生で、一部「国分寺市立第二小学校」から来る生徒がいます。2004(平成16)年から2年ほどかけて大規模改修工事が行われ、2020(令和2)年度には体育館に空調が設置されました。特色ある学校作りの一環として、各クラスのエコ係とPTAの方が一緒になって花壇に球根や苗を一緒に植え、水やりなどの世話をして、花の絶えない学校をめざしています。

生徒と地域の人が世話をしている花壇
生徒と地域の人が世話をしている花壇

――貴校の教育目標と、特に力を入れている取り組みなどあれば、教えてください。

田中校長先生 「自ら学び世界の平和を願い 国際社会に活躍する人の育成を目指す」を教育目標に掲げています。各教科をはじめ道徳や総合的な学習の時間などを通して、普段の学習活動の中でこの目標を達成できるよう取り組んでいます。

自慢できる活動のひとつはノーチャイムです。朝の始業時や昼休みの終わりなどを除き、基本的にチャイムは鳴らしていません。コロナ禍で時程を変えざるを得なかったため一時中断していましたが、一昨年からまた始めました。生徒が時間を意識して動けるようになるので、非常に意義のある取り組みだと思っています。あとは月曜日から金曜日まで、始業前の10分間に朝読書行っています。3年生は1分間姿勢を正す「姿勢の時間」という取り組みも行っていて、それから朝読書に入っています。

田中一郎校長先生
田中一郎校長先生

昨年度からは、「五中 最高 最校 さぁ行こう!」を合言葉に、ペップトークの手法を取り入れた生徒への声かけにも取り組んでいます。ペップトークはアメリカのスポーツ界で生まれたもので、試合前に監督が選手を勇気づける短いスピーチのことです。肯定的な言葉を使うのがポイントで、例えば「廊下を走ったらダメ」ではなく「廊下は歩こう」、「遅刻するぞ」ではなく「始業時間に間に合うように」といった感じの言い方をします。目的は自己肯定感を高めること。生徒たちには自己肯定感を持ち、国際社会で活躍してほしいと思っています。生徒が問題行動を起こした際も、頭ごなしに叱るような指導ではなく、まずは話をきちんと聞いて寄り添い、できるだけ生徒自身に考えさせた上で良い方向に導くよう心がけています。

小中9年間の学びという視点から、地域の3校が情報共有

――GIGAスクール構想への対応や、小中連携の取り組みについて教えてください。

田中校長先生 国分寺市では2021(令和3)年度から、生徒1人につき1台のタブレット端末が支給されました。コロナ禍での急な対応で、当初はそれを扱って指導する教員が戸惑うような状況でしたが、幸い本校の先生方には潜在的なスキルと高い意識があり、あっという間に取り入れることができました。様々なアプリを活用し、問題の配布や作文の提出などもオンラインで行っています。

校舎
校舎

小中連携では「KBJ六十五」という取り組みがあります。「国分寺六小・十小・五中」の略で、この中学校区3校が連携して行っている挨拶運動や先生方の授業連携の総称です。挨拶運動は各学期に一度、登校時間に本校の生徒が六小と十小の校門前に立って児童に挨拶をするものです。子どもたちには安心して五中に進学してほしいと思います。授業連携というのは、小学校と中学校計9年間でどのような児童・生徒を育てるのかという視点で、3校の教員が必要な情報を共有することです。互いの授業を参観してねらいや達成度、中学進学前にどこまで教えるか確認し合うんです。小学校の先生方には「ここまで成長させてから送り出したい」という想いがありますし、小学校でやっている良い取り組みがあれば中学校でも続けた方がいいですよね。そういった部分でも教員が共通認識を持つようにして、9年間の学びに活かしています。

2022(令和4)年度に生徒会が主催した「いじめ防止標語コンクール」の入賞作品
2022(令和4)年度に生徒会が主催した「いじめ防止標語コンクール」の入賞作品

いじめ防止にも積極的に取り組んでおり、先日も文科省が開催する「全国いじめ問題子供サミット」に東京都代表として参加しました。小中学生がいじめについて話し合い、いじめ問題に真剣に向き合えるリーダーを育てることを目的にしたもので、大切な活動だと思っています。

校長室から見た雨上がりの虹 (田中校長先生撮影・提供)
校長室から見た雨上がりの虹 (田中校長先生撮影・提供)

――課外活動や行事などについてもご紹介ください。

田中校長先生 主な全校行事は運動会と合唱コンクールですね。あとは1年時に、立川の「昭和記念公園」や秋川の河原などでバーベキューをする校外学習があります。これは他の小学校から来た生徒同士が早く仲良くなれるよう、入学して割とすぐの時期に行うようにしています。他に生徒たちに人気のあるイベント的なものを挙げるとしたら、ビブリオバトルでしょうか。好きな本の魅力を伝え、いかに人に読みたいと思わせるかを競う書評合戦ですね。私が着任する以前は全校生徒でやっていたそうで、コロナ禍で集まれなくなって一度は消えかけたんですが、今も学年単位で続けています。

規範意識の高い人々が暮らす、治安の良い国分寺エリア

――学校の周辺はどんな地域でしょうか。

田中校長先生 高い建物がなく、畑と住宅の多いのどかで暮らしやすい地域です。国分寺産の野菜を総称して「こくベジ」といって、市をあげて地産地消に取り組んでいます。また、本格的な実施は来年度からなんですが、地域に親しみ、地域に学び、地域を考え、地域に貢献する態度を育て、地域に開かれた教育活動「国分寺学」をプレ実施しています。武蔵野は昔からお米が採れない地域で、代わりに小麦を栽培して「茹でまんじゅう」や「うどん」「すいとん」などの郷土料理に活かしてきました。中学3年生がそれらの歴史や作り方を「国分寺学」として学び、六小と十小の3年生に伝えます。これは今後長く続いていくと思います。

学校前の畑と住宅
学校前の畑と住宅

――周辺の住環境・子育て教育環境の魅力をお聞かせください。

田中校長先生 国分寺は交通の便が良く自然が豊かで、住環境は非常にいいですね。そして、便利なのに、すさんだ繁華街がありません。便利だと人が集まって治安が悪くなりそうなものですが、治安が保たれているんですよね。これは誇れる特長じゃないかと思います。国分寺駅の北口も再開発で整備され、放置自転車などもありません。

体育館
体育館

文教都市で人気の高い地域にも近く、教育環境にも恵まれていますね。本校の生徒の多くは、人の話を聞くなど基本的な部分が出来ています。おそらく、規範意識や教育力の高い保護者のもとで育ってきたことが大きいのではないでしょうか。受験に力を入れるご家庭も多くありますが決して過剰な感じではなく、そういった点も良いところだと感じます。

田中一郎校長先生
田中一郎校長先生

国分寺市立第五中学校

校長 田中一郎先生
所在地:東京都国分寺市並木町2-15
電話番号:042-325-3735
FAX:042-328-2415
URL:https://www.city.kokubunji.tokyo.jp/kurashi/1012309/1008645/1001233/index.html
※この情報は2024(令和6)年1月時点のものです。