まちの遺産を活かし、未来に向かって取り組む「千住いえまちプロジェクト」

日光街道・奥州街道の宿場町として栄えた千住。古民家や蔵などの古い建物が点在している街だが、文化財の基準に満たないことから少しずつ姿を消している現状がある。その流れを少しでも緩め、時代に合った建物の活用法を模索しているのが「千住いえまちプロジェクト」だ。同プロジェクトの代表を務める山崎たいくさんに、活動についてお話を伺ってきた。

活用することで残していく

代表の山崎さん
代表の山崎さん

――「千住いえまちプロジェクト」が発足するまでの経緯を聞かせてください。

山崎さん:「千住いえまちプロジェクト」は、「町雑誌千住」というタウン誌を発行したり、千住の蔵の調査をしてきた「千住・町・元気・探険隊」からバトンを引き継ぐかたちで動き出しました。私と「千住いえまちプロジェクト」との接点は、2012(平成24)年夏のキックオフミーティングに参加したことでした。地元足立区の古い建物を知りたかったことがきっかけでした。そして、当時はまだ東日本大震災の余韻も残っていて。そうした状況から身近な地域コミュニティを見つめなおそうと思い、「千住いえまちプロジェクト」の活動に加わることにしました。

まち歩きで千住への理解を深める(提供:千住いえまちプロジェクト)
まち歩きで千住への理解を深める(提供:千住いえまちプロジェクト)

――では、「千住いえまちプロジェクト」の活動内容について教えてください。

山崎さん:「千住らしいまち並み」を残していくと同時に、新しい時代・新しい価値観に合った建物の活用法を追求しています。活動の大きな柱になっているのが「調査・記録保持」、「情報発信・共有」、「建築活用の実践的検討」です。

建築活用の一つ、リノベーションした「玉井荘」(提供:千住いえまちプロジェクト)
建築活用の一つ、リノベーションした「玉井荘」(提供:千住いえまちプロジェクト)

――その3本の柱について、少し詳しく聞かせていただけますか?

山崎さん:「調査・記録保持」は、過去の文献調査だけでなく実際に建物を訪ね、居住者や関係者からヒアリングや実測調査を行っています。「千住・町・元気・探険隊」から受け継いだ情報やコミュニティがあったことは、今の活動の糧となっています。「情報発信・共有」についてはWebサイトやSNSを活用しています。千住に新しく移り住まれた方も多いので、そうした方々にも千住に興味を持ってもらうために、活動内容については積極的に発信しています。

旧家での寄席には大勢の参加者(提供:千住いえまちプロジェクト)
旧家での寄席には大勢の参加者(提供:千住いえまちプロジェクト)

――3つめの「建築活用の実践的検討」についてはいかがでしょうか。

山崎さん:建物を遺すためには、意義のある活用法を見出さなくてはなりません。そのために私たちは実際に空間を活用するイメージを、建物オーナー様をはじめ多くの方々に体験してもらえるように様々なイベントを行っています。旧家で寄席を行ったり、寺院でヨガのイベントを開いたり、桜が咲く時期に、桜と和菓子がテーマの映画上映と千住の和菓子屋・桜スポットをまわるまち歩きのコラボ企画を行ったこともありました。参加者と桜並木を歩いた後に、桜のシーンが印象的な映画を鑑賞する――。これは、とても反響の大きな企画となりました。

季節を感じられるイベントが開催されている(提供:千住いえまちプロジェクト)
季節を感じられるイベントが開催されている(提供:千住いえまちプロジェクト)

知れば知るほどに魅力も増す

――まち歩きの内容についても教えてください。

山崎さん:過去に開催したものと全く同じ内容のまち歩きにならないように、メンバーみんなでアイデアを出し合っています。足立区西新井の複合体験型施設「ギャラクシティ」とタイアップし、子どもたちが新聞記者となって、まち歩きをしながら記事を書いてもらったこともあります。それぞれの回によって異なりますが、参加者は30~60名程。これだけ若い人が参加するまち歩きは珍しいと評価をいただいたこともありました。ギャラクシティとは次のイベントも企画を進めており、2016(平成28)年12月3日(土)12:00からです。メインは戦前から営業している銭湯の「タカラ湯」で、ご主人から話を聞いたり石鹸や手ぬぐいを作ったりする予定です。その後に希望者がいれば入浴もできます。(2016(平成28)年11月現在)

以前開催した銭湯でのイベント(提供:千住いえまちプロジェクト)
以前開催した銭湯でのイベント(提供:千住いえまちプロジェクト)

――地元の方との関わりはいかがですか?

山崎さん:文化的な活動に協力的な方々が多いので、活動に幅を広げることができて助かっています。寺院でのヨガや映画のイベントは、我々の活動を理解していただけたからこそ、実現しました。協力していただくばかりでなく、こちらとしても、まちのゴミ拾いや、祭りの手伝いなどをし、良好な関係を続けていけるように努めています。

寺院でのヨガイベントで心も体もすっきりと(提供:千住いえまちプロジェクト)
寺院でのヨガイベントで心も体もすっきりと(提供:千住いえまちプロジェクト)

――建物や街並みのこと以外で、千住の魅力を教えてください。

山崎さん:電車アクセスについては言うまでもなくとても便利です。また、山手トンネルの開通によって自動車での移動もより便利になりました。それと、これまでグルメという観点では“飲み屋横丁”や老舗のイメージが強かったのですが、最近は美味しい料理を出してくれる新しい飲食店が増えてきたので、より外食も楽しめる街になったように思います。単に便利で住みやすいというだけでなく、地域コミュニティがしっかりと残り、とても居心地がいい街なので、新しく住み始めた人でもすぐに愛着を持ってもらえるのではないかと思います。

新しい世代にも暮らしやすい街(提供:千住いえまちプロジェクト)
新しい世代にも暮らしやすい街(提供:千住いえまちプロジェクト)

――最後に、「千住いえまちプロジェクト」の今後について聞かせてください。

山崎さん:活動を通して、まちの財産になるような建物が少しでも長く遺せたらと思っています。千住は歴史のあるまちですから、古い建物を活かしたイベントに興味がある方、またこのまちのことが好きな方には、ぜひ「千住いえまちプロジェクト」の活動にも参加してほしいですね。面白さだけでなく、まちに参加しているという実感が得られ、やりがいもありますよ。

千住いえまちプロジェクトの冊子
千住いえまちプロジェクトの冊子

※活動をまとめた「いえまちの冊子」は、書店「ぶっくらんど」で購入可能。
「ぶっくらんど」(東京都足立区千住2-43)いえまちの冊子/1冊500円

代表の山崎さん
代表の山崎さん

千住いえまちプロジェクト

代表 山崎たいくさん
URL:http://1010iemachi.jp/
※この情報は2016(平成28)年11月時点のものです。