“価値ある1杯”を提供する神保町の名店

GLITCH COFFEE&ROASTERS(グリッチコーヒー&ロースターズ)

神保町と小川町の間にある、靖国通り「駿河台下」の交差点。そこから皇居の方向へ歩いていくと、1つ先の信号角にガラス張りの小さなカフェがある。日本で一番、喫茶店文化が根付いている街とも言える神保町。そこに2015(平成27)年、新しく看板を掲げ、新たなコーヒー文化を発信しようと意気込む店がここ、「GLITCH COFFEE&ROASTERS(グリッチコーヒー&ロースターズ)」である。

ぱっと見、特に変哲の無い店に思うかもしれないが、この店の狙いは「本当に美味しいコーヒーを知ってもらう」という部分にある。滞在することが目的ではないので、席数は少なめで、派手なサインも無い。「さっと飲んでさっと帰る、砂糖もミルクも使わない」というのが、常連客の間では“暗黙のルール”のようになっており、長い時間滞在する人はごく稀だ。万人受けする最大公約数的な店ではなく、コーヒー好きだけがヘビーリピートするタイプの店である。

店舗内観
店舗内観

とは言ってもコーヒー好きを自称する人ならば、気構えは一切必要無い。入ればフレンドリーなスタッフが迎えてくれ、その日の気分や好みを伝えれば、的確なアドバイスをくれる。目の前に並ぶ数種類の豆から好みの1つを選べば、あとは提供を待つのみだ。面倒なメニュー指定はほとんど不要である。

実はこういった「ふらっと寄って、さっと飲んで帰る」というスタイルは世界的には一般的なもの。店主の鈴木清和氏はもともと、バリスタ大会で世界チャンピオンを獲ったオーストラリア人が経営する「Paul Bassett」(新宿)という店で、11年もの間働き、チーフバリスタを務めていたという人物。もちろん、その間に世界水準の技術と目利きを学び、世界最高の生豆ディーラーとも接点を持った。そんな人物が独立して作った店だから、グローバルスタンダードに則り、かつ、ハイレベルに仕上げているのは当然だ。

まず、抽出方法を見て多くの人は驚くことだろう。ドリッパーに紙を置き、豆を挽いて入れ、蒸らす。そこまでは見慣れた光景だが、抽出を始めるといきなり「グイグイ」とかき混ぜ始めるのである。「日本のコーヒーは深煎り文化。だから“嫌な味”を出さないように抽出するんですが、うちの豆は上質な豆を浅煎りにしているから、“豆全部からの抽出液”を取り出す感じなんです。せっかくのいい豆がもったいないですから」と鈴木氏。コーヒーはもともと果実。果実である以上、その美味しさは全体から満遍なく抽出して味わうべきである、というのが世界基準の考え方だそうだ。

かき混ぜるながらドリップをする
かき混ぜるながらドリップをする

今回淹れたいただいたのは、「エチオピア・アリーチャ」。その味わいはベリーのようにフレッシュで華やかであり、酸味も単調ではなく複層的。「コーヒーは苦いもの」という概念を覆してくれる一杯だった。「これに砂糖を入れたらもったいないですよね」と鈴木氏は笑うが、確かに、この一杯を口にすれば言葉の意味もよく分かる。なお、豆にはそれぞれ正しい淹れ方があるそうなので、豆を買うなら淹れ方も同時に教えてもらうのが良いだろう。店ではグラム数、湯温まで厳密に管理を行っているそうだ。

取材時に提供いただいた「エチオピア・アリーチャ」
取材時に提供いただいた「エチオピア・アリーチャ」

生豆は国内の業者だけでなく、海外の業者からも購入している。「コーヒー文化は海外から来たもの。だから海外の業者が良い農園と契約をしているケースも多い。そこから仕入れたほうが、確実に美味しいものが手に入る」という理論からだ。そしてブレンドは一切行わず、シングルオリジンのみで提供する。煎り方は浅煎りのみで、焙煎後数日置いて、フレーバーを熟成させてから使っている。
このことについて鈴木氏は「自分の田んぼで丹精込めて育てて、ようやく収穫できたお米が、ほかの田んぼのものと混ぜられ売られたら、農家の人は悲しみますよね。それと同じですよ」と喩えて話してくれた。安定しなくても良いから、豆の持ち味、農園の個性を、ダイレクトに表現したい。それがこの店の目指す、新しい「日本のコーヒー」の姿だ。

海外のディーラーから直輸入しているこだわりの豆
海外のディーラーから直輸入しているこだわりの豆

他の多くの文化と同様、「ガラパゴス化」している日本のコーヒー文化。その一方で、繊細な感性をもつ日本人からは、バリスタやカッピングのチャンピオンが多く輩出されているのだという。「沢山のチャンピオンがいますから、世界的に、日本のコーヒー文化はとても注目度が高いんです。でもそれに対して日本は保守的で、何も世界に向けて発信できていない。うちは日本から世界に向けて、コーヒー文化を発信していきたいんです」と鈴木氏は意気込む。今後は店舗展開もしていきたいそうだが、旗艦店として神保町を選んだのは、必然だったのだろう。

ドリップをするスタッフの方
ドリップをするスタッフの方

従来の常識や概念に囚われない、新時代のコーヒーが楽しめる「GLITCH COFFEE&ROASTERS」。コーヒー好きであれば遠くから訪れる価値がある店だろうし、「苦いから」とブラックコーヒーを敬遠していた人も、ここに来れば一発でブラックコーヒーの虜になることだろう。そのぐらいの個性と魅力を秘めた、神保町の新たな名店である。

GLITCH COFFEE&ROASTERS(グリッチコーヒー&ロースターズ)
所在地:東京都千代田区神田錦町3-16 香村ビル1F
電話番号:03-5244-5458
営業時間:7:30~20:00(土・日曜日、祝日は9:00~19:00)
不定休
http://glitchcoffee.com/

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