スペシャルインタビュー vol.1

地区計画を定め、緑と調和する景観形成を図る調布市入間町

多摩川の左岸に沿って、国分寺市から多摩川河口付近まで続く緑のライン「国分寺崖線」は、多摩川が武蔵野台地を浸食して生み出した自然の地形。急峻な斜面にはかつての武蔵野を思わせる天然林が美しく茂り、人の手がほとんど入らずに豊かな生態系を維持してきた。

このうち調布市入間町付近では、今後の利活用の方法について検討を重ねている。今後、この緑地はどのように変わり、地域はこの緑地をどのように活用していくのか。今回は、調布市で緑地保全を担当されている調布市役所緑と公園課の島崎真司さんと、都市計画課で地区計画を担当されている阿部直人さんにお話を伺った。

「水と緑の軸」に位置付けられる入間町エリア

豊かな自然が残る入間町地区
豊かな自然が残る入間町地区

――まず、調布市の都市計画の中での入間町地区と崖線緑地の位置付けや、現状について教えてください。

阿部さん:入間町は国分寺崖線の緑の軸と、野川の水の軸が交わっている、水と緑に囲まれた地域で、調布市の都市計画マスタープランの中では「水と緑の軸」として位置付けられています。また同時に、「桐朋学園」周辺と並んで、調布市の東部における「文化・交流の拠点」の一つとしても位置付けられています。

入間町では、このマスタープランの位置付けを踏まえたうえで、2014(平成26)年に「入間町周辺地区地区計画」を策定しました。

入間町周辺地区地区計画
入間町周辺地区地区計画

「入間町周辺地区地区計画」ではまず、都有地及びNTT東日本から譲渡された土地からなる約3ヘクタールの斜面緑地について、入間町周辺地区の「地区施設」という形で位置付けました。これによって、斜面緑地が都市計画によって、将来にわたって担保されたという意味合いがあります。

また、斜面緑地に隣接する集合住宅などでは一定のルールを導入し、建築物の規模や、崖線との関連性、敷地内の緑化率など、景観形成に配慮しながら、細かな部分の具体的なルールを定めました。

調布市都市計画課 阿部直人さん
調布市都市計画課 阿部直人さん

一方で、NTT中央研修センタの区域については、もともと宿舎やグラウンドなどがあった南側部分の活用の形が2015(平成27)年に決まってきましたので、この部分を「文教・福祉関連施設ゾーン」と位置付け、地区整備計画範囲に加えるという都市計画の変更を行いました。

なお、この土地については中高一貫校の設立を予定する学校法人「東京学園」と、高齢者にも対応した集合住宅と、特別養護老人ホームと、認可保育園が造られることになっています。都市計画マスタープランで「文化・交流の拠点」という位置付けがあった地区ですので、まさに、それに沿った土地利用の誘導が図れたと思っております。

調布市景観計画(国分寺崖線景観形成重点地区)の景観形成イメージ
調布市景観計画(国分寺崖線景観形成重点地区)の景観形成イメージ

自然あふれる「調布の森」を保全していくために

――斜面緑地部分については、今後どのような活用がなされていくのでしょう?

島崎さん:調布市の「緑の基本計画」では、入間町を含む一連の緑地帯を「調布の森」と位置付けています。斜面緑地については、「崖線の緑と湧水を守り、自然とふれあえる森づくり」をテーマとして、保全計画を検討しているところです。

ここは崖線で、連続した雑木林が斜面に広がっており、さまざまな生き物も生息しています。そういった点も踏まえ、崖線や樹林地については、市の緑地として管理しているところ、また、市民の方がお持ちになっている、保全などを図る必要があると認めた良好な樹林地を「保全地区」として指定して、一体的な保全を行うという方向で検討しています。

保全地区に関しては、入間町エリア全体で3か所、合計約7,800平方メートルを指定し、これとは別に保存樹木も17か所1,174本、生け垣も6か所約1,300メートルを指定しています。

調布市緑と公園課 島崎真司さん
調布市緑と公園課 島崎真司さん

「キンラン」「ギンラン」といった今や絶滅を危惧される珍しい植物も自生しています。そういうものを守っていくためにも、保全の活動をしていく必要があるんです。そうすることで、貴重な動物や植物も、また後世に残していくことができます。

多彩な動植物が生息している
多彩な動植物が生息している

――今後、一般市民が森を利用できるように整備がなされるのでしょうか?

島崎さん:東京都が所有している一部の部分については、すでに散策できるように整備されています。NTT東日本から調布市に寄付していただいた部分も含めて、現在まさに保全計画を作っているところで、具体的なことはこれから決めていく予定です。今後、保全をすべきエリアと、利活用できる可能性があるエリアの区分けをして、計画を策定していくという流れになります。

緑地を保全・活用・育成していく
緑地を保全・活用・育成していく

緑と調和した街並みになることが完成形

――入間町地区がめざす将来像とは、どのようなものでしょう?

阿部さん:入間町一丁目から三丁目では、いくつかのゾーンに分けて地区計画を定めて、それぞれに方針を定めていますが、地区全体としては、緑地を「調布の森」として保全、活用、育成していく、という部分が大きな目標となります。また、景観についても、国分寺崖線を一般の地区よりも一段高いレベルで景観誘導をする地区に指定し、地区全体で緑と調和した景観形成のための取り組みを行っています。

今回具体的に建築物等のルールを定めたところは入間町のうちの一部分ですが、戸建住宅が集まる地区や、都営住宅がある地区も地区計画には含まれていますので、核となる緑地のあり方をしっかりと考え、保全や利活用の仕方も工夫しながら、より魅力的な地区にしていければと思っています。

緑地の活用については、住民の方にとっては、管理上の問題や、防犯・防災上の問題など、いろいろな心配事等もあると思いますので、地域の意見も聞きながら、緑を守り活用していくための仕組みを考えていただけたらと思います。また、その成果が今後の街づくりに波及できるのであれば、将来的には、戸建エリアなどにも一定のルールを策定して、地区全体が緑と調和した街並みに変わっていけば、それが、この街の完成形なのではないかと考えています。

入間町の戸建て住宅地区の様子
入間町の戸建て住宅地区の様子

――最後に、入間町地区の魅力について一言お願いいたします。

島崎さん:この地区については、まだまだこれからの部分が多くありますので、ぜひ、もっと多くの住民の方にも緑の保全に参加していただきたいと思っています。ここは市内でも緑が豊かな地区ですので、緑や生態系を自分たちの手で守り、後世に残していきたい、という気持ちを持った方が来てくださるとうれしいです。また、それができることが、この地域の魅力でもあると思います。

阿部さん:これまでの話から、入間町は崖や斜面が多そうなイメージを持たれたかもしれませんが、成城方面には平坦な道のりで行けますので、自転車を使って成城方面に散策に行っていただければ、また違った文化を感じていただけると思います。「仙川」駅付近も「桐朋学園」などがあり文化の薫る地域ですから、そういう街が近接しているという点でも、暮らしやすいと思います。地区計画できめ細かいルールを定めていますので、安心してお住まいいただける地域だと思います。

島崎真司さん(左)と阿部直人さん(右)
島崎真司さん(左)と阿部直人さん(右)

調布市役所

調布市環境部 緑と公園課 みどりの推進係 主任・島崎真司さん(左)
調布市都市整備部 都市計画課 地域支援係 主任・阿部直人さん(右)
参考資料:
入間町周辺地区地区計画
調布市景観計画
緑の基本計画
※この情報は2017(平成29)年8月時点のものです。