世田谷区立八幡山小学校 校長 インタビュー

地域力を基盤に子どもたちをのびやかに育む「世田谷区立八幡山小学校」

東京23区内にありながら、自然を感じられる穏やかな住宅地にある「世田谷区立八幡山小学校」。教室の壁を取り払ったオープンスクールや広々としたランチルームが開放的な印象を与える同校は、世田谷区が取り組む小中連携教育「みどりの学び舎」や「地域運営学校」の熱心な実践校だ。盛んな地域行事や豊富な地域資源など、子どもたちがのびやかに育つ周辺環境も整っている。地域力を基盤にした公立校ならではの取組みや八幡山エリアの魅力について、今年度校長に赴任された丸木英美先生にうかがった。

地域人材と周辺施設を活かした多彩な授業づくり

「世田谷区立八幡山小学校」
「世田谷区立八幡山小学校」

――「世田谷区立八幡山小学校」の概要、沿革について教えてください。

丸木校長先生:「世田谷区立経堂小学校分校」から独立し、1960(昭和35)年4月に開校しました。現在の校舎は、1999(平成11)年に建て替えられたものです。児童数は、2017(平成29)年2月現在、男子260名、女子195名の計455名で、14クラスあります。

丸木英美校長先生
丸木英美校長先生

――施設・設備の特色はございますか?

丸木校長先生:教室の壁がないオープンスクールは、学年ごとに子どもの様子をよく見ることができ、教員の授業力向上にも役立っています。教室は必要に応じてパーテーションで仕切れ、ロッカーも可動式なので、自由に空間を使えます。
また、第一体育館と第二体育館があり、第二体育館は学校公開で使う時以外は平常、地域体育館として開放しています。育成団体をはじめ、いろいろな団体が利用しているので、放課後、子どもたちは学校という安心できる場所でスポーツを学ぶことができます。

教室の壁がないオープンスクール
教室の壁がないオープンスクール

――教育活動については、どのような特色がありますか?

丸木校長先生:1つめは、年3回のあいさつキャンペーンです。あいさつ運動は年間を通してやっていますが、キャンペーンの時は、犬の散歩をしながら子どもたちの見守りをしている「ワンワンパトロール」の方や町会の方が、子どもたちと一緒に校門に立ってあいさつをしてくれます。
2つめは、オリンピック・パラリンピック教育です。今年度は、やり投げのオリンピアン、村上幸史さんの講演と実技指導を実施したほか、アスリート飯や世界記録の展示、運動会では八幡山派出所のお巡りさん先導による聖火リレーと聖火点灯など、楽しくオリンピック・パラリンピック教育を進めています。

村上幸史さんによる講演の記録
村上幸史さんによる講演の記録

3つめは、豊富な地域人材・施設の活用です。世田谷には多彩な人がいらっしゃるので、授業の内容に合わせて年間相当数のゲストティーチャーを招いています。とくに、八幡山町会のお囃子体験は本校ならでは。このほか、八幡山町会の防災部による避難訓練の指導や、プロのオーケストラ団員として活躍している卒業生による「ようこそ先輩コンサート」などがあります。先日は日本建築家協会からプロの建築家12人を講師に、6年生が校庭で角材を組み立ててまちづくりの体験をしました。角材の確保や運搬、ドローン撮影まで、すべて地域の方の協力によるものです。

オリンピック・パラリンピック教育
オリンピック・パラリンピック教育

施設の活用では、「朝日プリンテック」での新聞印刷の見学、「医学総合研究所」による薬物乱用防止教室、「京王電鉄」のキャリア教育、清掃工場・消防署見学、農家見学、「日本大学」による連携授業の実施など、地域の企業や大学、施設と連携した教育活動を行っています。工場や農地は歩いて行ける距離にあるので、授業に活用しやすいのもポイントですね。 4つめは、学校図書館の充実です。今年度から図書館司書が配置され、来館児童が増えました。今後は、学校図書館と連携した研究発表にも取り組んでいきます。

オリンピック飯
オリンピック飯

――ふだんの子どもたちの様子について、どのようにご覧になっていますか?

丸木校長先生:周辺が閑静な住宅地なので、子どもたちも全体的に穏やかな雰囲気の子が多いように思います。読書やスポーツにも熱心で、図書館司書の配置により、夏休みの図書館利用もかなり増えました。スポーツは、全学年が午前中の中休みに校庭へ出て行う「金スポ」を実施していて、縄跳びやランニングも楽しみながら取り組んでいます。

「世田谷区立八幡山小学校」図書室
「世田谷区立八幡山小学校」図書室

――特色ある課外活動について教えてください。

丸木校長先生:ここは本当に行事が盛んな地域で、各地区の盆踊り、「上北沢区民センター・上北沢児童館」の「風太郎&子どもフェスティバル」、「将軍池公園」の「自由広場(フリーマーケット)」など、子どもたちはたくさんの地域行事に参加しています。特に近くの八幡社の行事へは、お祭り、七五三の餅つき、節分の豆まきなどに参加をしていますね。

学校が参加依頼を受けているのは、「蘆花恒春園」で開催される「蘆花祭り」です。4年生が、運動会の出し物でもあるソーラン節を披露しています。こうした地域行事には、PTAが協力しているものもたくさんあります。地域行事が盛んなため、子どもたちは地域で安心して遊べますし、地域の大人と顔見知りというのはありがたいですね。

「世田谷区立八幡山小学校」校庭
「世田谷区立八幡山小学校」校庭

授業の系統性や指導の工夫に活かされる「みどりの学び舎」

――「地域運営学校」としての具体的な取り組みについてご紹介ください。

丸木校長先生:夏休みには運営委員の企画運営で、「チャレンジスクール」を開いています。今年度は、2日間で12講座を実施し、282名が参加しました。教員や地域の方々が特技を活かして講師になり、ハンドベルやチアリーディング、ショートテニス、クラシックバレエなど、子どもたちの“やってみよう”という気持ちを大切に、興味のあることを体験してもらいます。このほか、日本語検定も実施しています。3年生ぐらいから検定を受ける子が多く、学年が上がるにつれ、難しい検定にもチャレンジしていますよ。また、校舎の南側には天然の芝生があり、その整備も運営委員会やPTAの親父の会にお願いしています。

「地域運営学校」の指定は6年目となります。月に1回、学校運営委員会を開き、運営委員会の方々と学校運営について協議を行っていますが、委員会には地域の方、学識経験者、中学校の学校運営委員などさまざまな方がいらっしゃるので、そこから直に助言をいただけることは大変励みになっています。地域人材などの詳細情報が直に入ってきますし、中学校と足並みをそろえた活動にも取組みやすいです。

「世田谷区立八幡山小学校」体育館
「世田谷区立八幡山小学校」体育館

――世田谷区では、小中連携教育「みどりの学び舎」に取組んでいますね。

丸木校長先生:本校は、「世田谷区立緑丘中学校」・「世田谷区経堂小学校」・「世田谷区上北沢小学校」と計4校で、「世田谷9年教育」を目指す学び舎を実施しています。具体的には、年4回、合同研修と学習習得調査の分析会議を行い、授業改善に取り組んでいます。児童・生徒の交流では、児童会が生徒会に行ってお互いの活動を発表したり、夏休みに児童が中学校の部活動を体験させてもらっています。子どもたちは複数の部活を体験し、入部先を決めているようです。「世田谷子ども駅伝」にも、学び舎の小中合同チームで参加をしていて、今年は女子が3位に入賞しました。

「みどりの学び舎」の取組みは、小中を通した授業の連続性や、地域の子どもたちの課題を理解した上での指導の工夫などに活かされています。また、子どもたちは実際の中学校の様子を知ることで、進学への意欲を高めることができます。
私は図工の教員で、もとは中学校の美術の教員でした。やはり小中合同で授業研究をしていましたが、その時の経験からも、教員同士の連携が大事だと思います。小中の教員に交流がないと、情報は共有できません。それぞれの学校でどんな内容をどう指導しているか、それを踏まえることで中学へのなだらかな接続を円滑にした指導ができると思います。

小中学校連携の「みどりの学び舎」
小中学校連携の「みどりの学び舎」

――幼稚園との連携もあるのでしょうか?

丸木校長先生:私はすぐ近くの「世田谷区立八幡山幼稚園」の園長を兼任していますが、本校はこちらの園とも数年来の交流があります。5年生が総合の時間で年数回、園に交流に行くので、園児が1年生として入学してきた時に6年生と顔見知りになっている。5年生にとっては、異年齢と関わって小さい子の面倒をみるよい機会になります。また、学年末のこの時期は、来年入学してくる園児たちが学校に遊びに来て、1年生がお世話をしています。

子どもたちの作品
子どもたちの作品

芸術やスポーツに親しめるバランスのよい環境

――世田谷区の公立校の教育環境の魅力をどのようにお考えでしょうか。

丸木校長先生:世田谷区は学校選択制をとっていないので、子どもたちと地域とのつながりが本当に深いです。そして、子どもたちを地域で育てようという教育力があります。例えば、防災に関しても、地域と連携しながら頻繁に防災訓練ができるし、地域人材が豊富でいろいろな大人が子どもたちの身近にいることはすごくありがたいです。

また、教育費にかける予算が手厚いので、学校の施設・設備が充実しています。本校でも、各クラスにICTによる大型モニターと実物投影機があり、1クラス分のタブレットが揃っています。また、区立の全小・中学校で、教科「日本語」を推進しています。
いろいろな育成団体が活動し、連合運動会があるなどスポーツが盛んですし、近隣の美術館にバスで鑑賞教室へ行けるなど、さまざまなものがバランスよく整備されている環境は本当に素晴らしいと思います。

食育にも力を入れている
食育にも力を入れている

――八幡山エリアの魅力についても教えてください。

丸木校長先生:意外に自然が豊かで、学校のすぐ近くの畑で農業体験ができたり、23区とは思えない環境に恵まれています。地域密着の土地柄な分、治安もいいです。環八が近いですが、交通量はそれほど多くありません。
そして、繰り返しになりますが、町会活動や地域行事が盛んで参加率が高く、地域人材も豊富。住民主体でこの地域を守っていこうという意識が強く、防災にも熱心です。例えば、八幡山派出所は以前もっと離れた場所にあったのが、町会の働きかけで学校の近くに移ってきたと聞いています。また、勉強だけでなく、芸術や音楽、スポーツなどへの理解がある地域で、子どもたちがいろいろなものへ興味関心を持てる環境にあります。

校内にあるケヤキ
校内にあるケヤキ

――最後に、校長先生の自校の教育にかける想いをお聞かせください。

丸木校長先生:第一に、子どもの可能性をきちんと見極め、子どもの良さを伸ばす教育をしたいと考えています。そして、子どもにとって精神的に安心できる居場所を作るという意味で、安心安全な学校づくりをしていきたい。また、子どもたちを伸ばしていくには教員も育っていかなければならないと、明るく強い教職員のチームづくりを目指していきます。

丸木英美校長先生
丸木英美校長先生

世田谷区立八幡山小学校

校長 丸木英美先生
所在地 :東京都世田谷区八幡山1-14-1
TEL :03-3302-2618
URL:http://school.setagaya.ed.jp/hama/
※この情報は2017(平成29)年2月時点のものです。