老舗酒蔵の伝統に触れるカフェ

江戸時代の酒蔵を利用した、ゆったりくつろげる喫茶室「蔵カフェ」

大國魂神社近くの旧甲州街道沿いにある、趣のある蔵造りの建物。こちらはもともと江戸時代に創業した造り酒屋の建物だったが、今は醸造所を「野口酒造店」として別の場所に遷し、蔵の半分ほどを「酒座 中久本店」という酒屋としている。そして、旧甲州街道に面した一部が喫茶店「蔵カフェ」になっている。

今も昔も交通の要衝であるという場所柄、また目を引く外観から、休日には府中を散策する観光客にも人気が高い「蔵カフェ」だが、平日は落ち着いた雰囲気に包まれ、馴染みのお客さんが「今日もいいお天気ね」とやってくるような場所だ。

今回はそんな「蔵カフェ」の店主、石塚栄子さんを訪ね、お店の特徴と府中の魅力についてお話を聞いた。

「酒座 中久本店」に併設された「蔵カフェ」
「酒座 中久本店」に併設された「蔵カフェ」

歴史ある蔵をリノベーションしたカフェ

――蔵造りのとても素敵な建物ですね。お店の歴史と特徴について教えてください。

石塚さん 私はここをお借りしている身なので、詳しい歴史のことはお話しできないのですが、もともとは野口酒造さんという造り酒屋さんの建物で、江戸時代から実際にここでお酒を作られて、大國魂神社に御神酒として納めていたそうです。25年くらい前に酒屋さんの工場が甲州街道の向こう側に移転した時、ここの2階で喫茶店が始められました。私はもともとそこで、店員として勤めていたんです。

店主 石塚 栄子さん
店主 石塚 栄子さん

当初は1階が全部酒屋さんで、2階がカフェという形でやっていました。そのうちにカフェが1階に下りてきまして、今の形になっています。1階がカフェ、2階がギャラリーという形ですね。当時のお店は「喫茶室 蔵」といって、今よりももっと和風な感じのお店でした。

私はそこで11年くらい働いていたのですが、「そろそろほかで店を開いてみたいな」と思い始めて、それをオーナーさんにお話ししたんです。そうしたら、「じゃあ、ここもどなたかに貸さないとね」とお話をされたので、「じゃあ私が」ということで、私が店主になって、ここでお店をやることになったんです。その時に、お店の名前も「蔵カフェ」に変えました。

若い世代にも親しみやすい雰囲気に改装した「蔵カフェ」
若い世代にも親しみやすい雰囲気に改装した「蔵カフェ」

――喫茶室だった当時と、内装などは変わっていますか?

石塚さん もともとの店は和のテイストだったので、ソファの色を変えたり置いてあるものも変えたりして、若い世代の方にとっても入りやすい雰囲気にしてみました。昔はよく、「ここ、カフェだったの?」って声も頂いていたんですけれど、今はおかげ様で、皆さんにカフェとして認知していただいています。

アンティーク家具に囲まれた温かい雰囲気の店内
アンティーク家具に囲まれた温かい雰囲気の店内

ゆったりと過ごせる語らいの場

――お店のコンセプトを教えてください。

石塚さん 最近は個人経営の喫茶店が減ってきていますけれど、私はやっぱり、「人とおしゃべりをする」というお店をやりたかったんです。お客さんとコミュニケーションをとりながら、うちに来て愚痴をこぼしてくれても、「全部聞くわよ」みたいな。そういう、皆さんとゆったりとした時間を過ごしていけるような空間、時間を作っていきたいと思っています。敢えて言えばそれがコンセプトですね。

――以前は2階をギャラリーやイベントスペースとして使われていたそうですね。再開の見込みはありますか?

石塚さん そうなんです。今はコロナの関係で何もできていなくて、再開については何とも言えません。以前はギターやジャズのライブ、絵画展、陶芸展、キルト展、お洋服やバッグなどを作られている趣味のサークルの展示など、いろいろやっていました。市内に限らず、遠くからも皆さん来られていましたね。コロナが落ち着いたら、以前のようにまた使えたらいいですね。

リラックスしておしゃべりを楽しめる空間
リラックスしておしゃべりを楽しめる空間

蔵元の酒粕で作ったオリジナルメニューが人気

――おすすめのメニューを教えてください。

石塚さん 一番のおすすめは「チーズケーキ」です。毎日手作りしてお出ししています。ほかにも「かぼちゃのプリン」など、気まぐれでいろんなものを作っています。

一番のおすすめは自家製「チーズケーキ」
一番のおすすめは自家製「チーズケーキ」

最近は新しく「日替わりランチ」も始めました。手が足りないので日替わりの1種類だけですが、好評をいただいています。ハンバーグが定番で人気ですね。ほかにも「しらすバター丼」とか、ちょっと変わったものもお作りしています。

この日替わりランチにはお野菜たっぷりの粕汁が付きますので、そこも楽しんでいただけると思います。追加料金でコーヒーやデザートも付けられるので、お時間のある方は、ゆっくり過ごしていただけます。

日替わりランチに付く粕汁
日替わりランチに付く粕汁

――ドリンクメニューに「酒粕ラテ」がありますね。とても気になります。

石塚さん この「酒粕ラテ」はうちのオリジナルで、看板ドリンクになっているものです。せっかく隣が酒造りをされていて、暮れになるとおいしい酒粕が出ますので、それを使って何かできないかなと思って、私が考えたものです。「国府鶴(こうづる)」というお酒の粕を使っています。

味のイメージとしては、甘酒にとても近い感じです。ミルクとはちみつの甘さが加わって、すごく身体に優しい感じの飲み物になっています。酒粕が出るのは冬の一時期だけですが、その時に大量に冷凍していますので、一年中お出ししています。ほかに「酒粕チーズトースト」もあるので、こちらも是非召し上がってみてください。

看板ドリンクの「酒粕ラテ」
看板ドリンクの「酒粕ラテ」

緑が多く、歴史情緒あふれ、交通も買い物も便利な街

――石塚さんは長く府中にお住まいということですが、府中エリアの魅力はどんな点でしょうか?

石塚さん もう20年以上府中に暮らしていますけれど、一番の魅力はやっぱり「大國魂神社」ですよね。「守っていただいている」という安心感がすごくあります。もちろん緑も多いですし、環境も素晴らしいところなので、暮らしやすいんじゃないかな、と思います。

「大國魂神社」
「大國魂神社」

――大國魂神社には普段からよく行かれていますか?

石塚さん もちろんです。普段も散歩に行ったりしますし、月に1回は必ず神社に行ってお参りをして、感謝の気持ちを伝えています。

――神社以外にはいかがでしょうか?

石塚さん 「郷土の森」もいいですよ。「下河原緑道」をずっと先に行ったところにあって、今の時期だと「あじさいまつり」をやっていて、四季を感じられる場所だと思います。

初夏に「あじさいまつり」が開催される「府中市郷土の森博物館」
初夏に「あじさいまつり」が開催される「府中市郷土の森博物館」

――交通や生活の利便性はいかがですか?

石塚さん もちろん交通の便はいいです。都心に出るにも30分くらいですし、国分寺にもバスですぐに行けるし、南武線も使えるし、いろいろと便利なところだと思います。

お買い物についても、伊勢丹が閉まってからは一時期、寂しい時期があったんですけれど、最近、新しい商業施設の「ミッテン府中」ができて、また便利になりましたね。スーパーの「ヤオコー」さん、ホームセンターの「コーナン」さん、家電の「ノジマ」さんも入ったので、以前よりすごく便利になったと思います。

――今後、府中の街に期待することがあればお聞かせください。

石塚さん せっかくこの旧甲州街道というものがあるので、この周りが盛り上がったらいいですね。古い建物もまだ残っていますから、川越みたいにオリジナリティのあるお店が出来てくれば、もっと人が集まるような場所になって、観光地としても魅力的なところになるんじゃないかなと思います。

たとえば、古い建物を若い方々に安い家賃で提供できるような仕組みを作ったりすれば、もっと面白い街になっていくんじゃないかなと思っています。

府中は古い建造物が残っていて歴史情緒あふれる街
府中は古い建造物が残っていて歴史情緒あふれる街

――最後に、これから府中に暮らしたいという方に向けてメッセージをお願いします。

石塚さん 府中は環境もいいし、生活もしやすいところだと思います。まずは一度遊びに来ていただいて、街を歩いていただいて、それで気に入ったら、お住まいになっていただければと思います。私も20年以上住んで全然飽きませんから、いい街だと思いますよ。

店主 石塚 栄子さん
店主 石塚 栄子さん

蔵カフェ

店主 石塚 栄子さん
所在地:東京都府中市宮西町4-2-1
電話番号:080-9170-3954
※この情報は2022(令和4)年5月時点のものです。