マンダリンオリエンタル東京

マンダリンオリエンタル東京
マンダリンオリエンタル東京

旅先で訪れるホテルと違って、都市生活者にとっての「地元のホテル」というのはどんな意味があるのだろうか。

いいホテルというのは不思議なところだ。世界中の様々なところから、様々な人々が集まり、目の色も、服装も、話す言葉もそれぞれに違うけれども、けっして雑然とした雰囲気に囲まれることはない。そうした人々を受け入れるだけの格というものがそれぞれのホテルに備わっているのだろうか。そんな伝統と格式に裏打ちされたホテルの佇まいからは都市生活における矜持のようなものも感じられる。

そして、地元の人々にとってそういったホテルはけっして地理的な意味だけではない、ここではないどこかへの扉なのかもしれない。

ここ日本橋三井タワーにある「マンダリンオリエンタル東京」はそんな、「ここではないどこか」への憧れをもつ都市生活者にとって格好のくつろぎと覚醒を提供してくれるところだ。

休日の午後、明るい光を浴びながら、日本橋界隈を散策するとしよう。なじみの寿司屋でちょっとつまんで、三越のショウウィンドウに季節を感じつつ中央通を下っていくと三井タワーだ。

通りに面した明るい吹き抜けのロビーフロアの一角に「マンダリンオリエンタル東京」への扉がある。ドアマンに丁寧に迎えられ、扉をくぐると、もう一つのドアがある。ほんとうはここからが、「マンダリンオリエンタル東京」なのだ。さきほどの明るいロビーとの対比が見事なまでに照明を落とした重厚なエントランスへと抜け出て、さらに暗いけれどもセンスのいいライティングが施されたエレベーターコーナーに進む。ここまで来たとき、あなたはさっきまでの「日常」が姿を消しつつあることに気づくだろう。

そのまま37階へ上り、エレベーターのドアが開くと今日の目的地「Mandarin Bar」だ。

Barの両サイドは全面大きなガラスばり。それぞれ東京の景色が一望できる。そこで、今日はチャイとチョコレートをいただくことにしよう。できればカウンターではなく、グランドピアノの隣に位置する水のせせらぎの聞こえるソファに深く腰掛けてみたい。眼下に広がる皇居の緑と褐色のチョコレート、クリーミーな泡に包まれたチャイ。上品な甘みと苦みが口中に広がる時、日頃の煩わしさから開放され、一瞬ここは何処なんだろうという軽い目眩にも似た錯覚に囚われるかもしれない。それは、心が「日常」から解き放たれて、想像力の翼をもつ瞬間。

その翼で飛ぶ空は、まだ行ったことのない遠い異国の空かもしれないし、子どもの頃遊んだ公園から見えた夕焼けの空かもしれないし、アラジンが魔法の絨毯で飛んだおとぎの国の空かもしれない。そのたびに眼前の景色はあなたの心の中で様々な街に姿を変えるだろう。

想像上の旅はきっとテーブルの上のチョコレートがなくなるまで、続く。一粒口にするたびに違う味わいが、違う想像の旅へとつれていってくれる。そうして想像の翼を広げていると、だんだんと空が色づいてくる時刻になる。茜色に染まっていく空を眺めながら、さて次はなにを飲もうか、と考える。もう、お酒だって大丈夫な時間だよな、なんて自分に言い訳しながらお気に入りのカクテルをオーダーする。そうしてまた想像の翼はアルコールというエンジンを与えられて、さらに羽ばたいていく。

いい大人がこんな想像をしてしまうくらいに、このBarのもつ魅力は妖しく、深い。そして、その魅力はきっとあのドアマンが扉を開けた瞬間からのマンダリンオリエンタルマジック。もてなされているようでいて、すっかり手のひらの上で踊らされているような。

こんな休日の午後の過ごし方、都市生活者ならでは、日本橋に住むものならではのものといえるかもしれない。

マンダリンオリエンタル東京
マンダリンオリエンタル東京

マンダリンオリエンタル東京
所在地:東京都中央区日本橋室町2-1-1 
電話番号:03-3270-8800
https://www.mandarinoriental.co.jp/tokyo..

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