世田谷美術館 マネージャー 村上由美さん インタビュー

世田谷区の文化・芸術活動を牽引する「世田谷美術館」

広大な敷地を誇り、区民の癒しのスポットとなっている「砧公園」。その一画にある「世田谷美術館」は約16,000点もの作品を収蔵、1階・2階に展示室を配し、レストランやカフェも併設する世田谷区が設置した美術館。アートの魅力を区民へ紹介すると共に多くの作家を生む世田谷の芸術文化を強く牽引している。今回は同館を訪れ、教育普及担当マネージャーの村上由美さんにお話を伺った。

世田谷美術館
世田谷美術館

ゆっくりと芸術鑑賞を楽しめる美術館

――美術館の沿革についてお教えください

村上さん:「世田谷美術館」は、緑豊かな「砧公園」の一角に、1986(昭和61)年3月30日に開館しました。既に開館してから30年以上の年月が経つ当館ですが、建築家の内井昭蔵氏の設計は、当時としては革新的で様々なデザインが盛り込まれて作られているので、現在の利用にも十分対応しています。それまでの美術館は展覧会が中心のものがほとんどでしたが、当館は展示だけではなく創作活動もでき、レストランやカフェ施設を備えているのも特徴です。ですので、一日ゆっくりとお過ごしいただける美術館になっています。

世田谷区は今も昔も作家さんが多く住まわれている地域で、そういった街の背景も美術館建設が進められたきっかけだと聞いています。恵まれた自然環境を生かした空間の中で、“芸術とは何か”という根源的なテーマのもと、特定の分野にかたよらない、幅広い視野で企画される展覧会や催し物、講座など、様々な活動をとおして、芸術との出会いの場を提供しています。

世田谷美術館
世田谷美術館

――主にどういった作品を展示しているのでしょうか?

村上さん:アンリ・ルソーや北大路魯山人、世田谷ゆかりの作家の作品など約16,000点の作品を収蔵しています。地域に根付いた美術館を目指すべく、世田谷区民に親しみやすい作品の展示を多く行っているのが特徴です。当館のコレクションの柱の一つアンリ・ルソーは、アカデミックな勉強をせずに独学で絵を描いて世界的に有名になった作家です。アンリ・ルソーの作品はピカソも所有していたほどで、20世紀の美術界に大きなインパクトを与えた作家として有名です。

当館では世田谷ゆかりの作家のコレクションが充実しているのも特徴です。作家さんのご遺族から寄贈を受ける例も多く、特に多くの作品を寄贈いただいた日本を代表する作家である向井潤吉氏、宮本三郎氏、清川泰次氏については世田谷区内の住居やアトリエの跡地に分館を構えて展示をしています。その他、館内ではアートライブラリーや前述のレストランやカフェ、区民の方の作品を展示できる区民ギャラリー、ミュージアムショップなどもあり、芸術との出会いが楽しめる環境に溢れています。

ミュージアムショップ
ミュージアムショップ

芸術の普及を目指して活動するボランティアの方々

――ボランティアの活動が盛んとお聞きしました

村上さん:「世田谷美術館友の会」は1987(昭和62)年に任意団体として発足しました。会員の方々には、初めて美術館を利用する方に館内を案内していただくなどの活動をお願いしています。会員になると「世田谷美術館」と分館の展覧会の観覧が年間無料になるほか、会員限定のイベントや実技講座への参加、美術館での会員作品展への出品などの特典があります。美術に親しむ人々が集い、楽しみ、学び、創造につなげ、相互の交流やボランティア活動をしています。

世田谷区の文化・芸術活動を牽引する「世田谷美術館」
世田谷区の文化・芸術活動を牽引する「世田谷美術館」

また、当館独自のユニークなボランティア活動が「鑑賞リーダー」です。登録者は450名以上、年間活動日数は300日と活発なボランティア活動で、主に子どもたちの団体来館の美術館案内をしています。当館では開館翌年から毎年5月から12月に行われる教育普及プログラム「美術大学」を行っていますが、卒業を迎える12月になると「また美術館に関われないか?」とのお声を多くいただいていました。

当館には世田谷区立の小学校4年生62校、合計6,000名以上が毎年来館しています。子どもたちにゆっくりと作品を鑑賞していただくために、グループに分かれて「美術鑑賞教室」を行い、それぞれ鑑賞リーダーの引率をお願いしたのが活動の始まりです。グループごとに引率者がつくことにより、一人ひとりの鑑賞時間が多く取れ、鑑賞リーダーからも子どもたちとの触れ合いが楽しいと好評です。

世田谷美術館
世田谷美術館

また、来館した子どもたちに「もう一度美術館に来てほしい!」という鑑賞リーダーの思いで始まったのが「100円ワークショップ」になります。企画展会期中の毎週土曜日の13時から15時に開催をしており、誰でもその場で参加できるのが特徴です。すべての来館者に気軽に創作に関わっていただき、自分の手の中で新しいものが生まれること、その気持ちを誰かと分かち合うこと、その喜びを感じていただくこと、さらに展示作品により興味や親しみをもってもらうきっかけになることを目的としています。企画・運営は美術館スタッフと鑑賞リーダーが行っています。ワークショップで使う材料は実費ですが、なかには鑑賞リーダーの家にあった余り布などの材料をご提供いただくこともあり、参加費以上のクオリティのものが揃うこともあります。台紙に絵を描いてカンバッチにする「お絵描きカンバッチ」やメタルワイヤーで形を作り、叩いて仕上げる鍛金のオーナメント作り「叩け!メタルオーナメント」など、その時に開催されている展覧会の内容にあった様々な工作を企画・開催しています。

世田谷美術館
世田谷美術館

――出張授業も行っているそうですね

村上さん:前述の「美術鑑賞教室」の前後に、世田谷区立の小学校へ出向き、出張授業を行っています。授業を担当しているのはインターンの学生さんで、45分または90分の授業を行っています。インターン生は毎年4月から12月まで当館で、学びオリジナルのプログラムを考え授業に臨みます、授業当日は鑑賞リーダーも授業のサポートをすることもあります。インターン生のみなさんには、子どもたちに美術館の作品により興味を持ってもらえるように大変工夫を凝らした授業を行っていただいていますし、子どもたちにもその思いがひしひしと伝わっていると実感しています。学校の先生方、インターンの学生さん、鑑賞リーダーのみなさんの力には驚くばかりでとても感謝しています。

砧公園
砧公園

――最後に、美術館周辺の街の魅力についてお教えください

村上さん:ここは都心から少し離れた場所にあることもあり、落ち着いた閑静な環境が魅力です。通りから「砧公園」へ一歩入ると緑豊かな環境に包まれて、まさに別世界。春には見事な桜が咲き、桜の名所としても有名で毎年多くの人が訪れます。近年は世田谷区も若いファミリー層の転入も多く、「砧公園」で子どもを遊ばせながら美術館にも立ち寄る方も多いですね。周辺には、「二子玉川」駅や「成城学園前」駅もあり、とても便利な住環境の良さも魅力です。「玉川タカシマヤ」や「成城コルティ」など商業施設と展覧会のタイアップ企画もたびたび行っています。今年1月に運行を開始した「せたがや3館めぐる~ぷ」は、当館と「静嘉堂文庫美術館」、「五島美術館」を巡る循環バスで、「二子玉川」駅や「上野毛」駅にも停車します。美術館を満喫したい方には便利でオススメですよ。

世田谷美術館
世田谷美術館

世田谷美術館

教育普及担当マネージャー 村上由美 さん
所在地:世田谷区砧公園1-2
電話番号:03-3415-6011
URL:https://www.setagayaartmuseum.or.jp/
※この情報は2018(平成30)年4月時点のものです。