堀口珈琲 代表取締役 堀口俊英さん インタビュー

たった1つ、輝く豆と出会うために。珈琲業界の革命は新たな世界へと通ずる

コーヒー好きの間では知らぬ者はいないと言われる、超有名ロースター「堀口珈琲」。厳選された豆を最高の技術でロースト(焙煎)し、その豆を販売しながら、店内でも飲めるという店である。徹底的にこだわり抜いたコーヒー豆と出会える場所として、日々、全国から多くファンが訪れている。「堀口珈琲」の創業者であり、現在も代表取締役を務めているのは、堀口俊英氏。話題となっている「スペシャルティコーヒー」というカルチャーを起こし、広げてきた、業界の第一人者である。今回はこの堀口代表に、コーヒーにかける熱い思い、そして今後の展望についてお話を伺った。

――堀口代表はもともと異業種のサラリーマンだったそうですが、コーヒーのロースターに興味をもつきっけかは何だったのでしょうか?

堀口さん:最初にコーヒーを知ったのは学生時代でした。当時は喫茶店文化の全盛期で、喫茶店がたまり場になっていたので、よくコーヒーを飲みに訪れていました。今思えば、そこからコーヒーが好きになっていったんでしょう。食べることも好きだし、コーヒーも、いずれやってみたいかな、という思いが漠然とありましたね。

就職し、サラリーマンとして働き始めましたが、僕はあまりサラリーマンは向いていませんでした。そして、「開業をしよう」と決意したのが40歳のとき。当時、コーヒーはまだ未開の分野だったので、「このマーケットに参入すれば、新しいことが何かできそうだ」と思ったのが始まりでした。「未開」というのは、ワイン等と比べると「トレーサビリティ」があまりない分野であること。主観的な判断で物事がすべて決まっている世界だったんですね。なのでコーヒーの分野は、進化の余地があると考えました。

たった1つ、輝く豆と出会うために。珈琲業界の革命は新たな世界へと通ずる
たった1つ、輝く豆と出会うために。珈琲業界の革命は新たな世界へと通ずる

――今は「スペシャルティコーヒー」という言葉が普通に通じる時代ですが、当時はこの言葉も無かった時代だったのでしょうか?

堀口さん:日本においてそのような言葉が誕生したのはずっと先のことです。当時は本当に何もない世界だったので、その中で試行錯誤をしながら、「コーヒーのいい味って何だろう」と探していました。開業から初めの10年間は、当時、日本でプレミアムと呼ばれていた豆を片っ端から使って、試行錯誤をしましたね。その末に辿り着いたのは、やはり「生(なま)豆」の品質の魅力でした。ですが、「生豆のいい品質って何?」ということを追究していくと、日本の流通マーケットの中では限界があり、徐々に「自分で生豆を確保したい」という欲求も強くなってきました。これだけ追及できたのは、「トレーサビリティ」について明確ではなかったからかもしれません。

――「トレーサビリティ」をコーヒーに求めれば、もっと美味しいコーヒーを生み出せると考えられたわけですね。

堀口さん:どの場所で、誰が、どうやって作ったのかということが明確なコーヒーが欲しかったんですね。そのためには、自分が取り組むしかない。けれど買うにしても量が必要で、とても自社のみでは対応ができないと考えていたところ、ちょうどあるビーンズショップのオープンのお手伝いをしていたことがきっかけで、彼らの分も一緒に購入することになりました。それが初めて自分で豆を買い付けた瞬間でした。それから、徐々に日本のインポーター、海外のエクスポーター、そして農園主も巻き込んで、関係を構築していきました。

――堀口代表が考える、コーヒーの美味しさの基準とは何でしょうか?

堀口さん:欠点が少ないこと、産地の特性があることなど、美味しさにはいろんな要素があります。より個性的な味があるということが理解できてから、よりコーヒーを美味しいと感じることができるようになるんです。コーヒーの美味しさを定義づけるまでの間には、そういう時代の変化がありました。

その変化が最も大きかったのが2000(平成12)年頃ですね。今から20年前のコーヒー業界と、10年前以降の業界は、まったく別世界です。とても変化しています。2000年以降、クオリティの良い生豆をを求めようとする気運が世界的に生まれてきて、これが現在に至る、「スペシャルティコーヒー」のムーブメントになっているんです。

2000(平成12)年以降には、僕らと同じ志を持つ人も世界中から名を挙げるようになり、そこから新しい価値観も生まれました。コーヒーというのは生豆の品質だということが認識され、生豆の品質の良し悪しがちゃんと研究されるようになったのです。今では当たり前のことかもしれませんが、この出来事は、過去何十年の歴史を全て覆してしまうような非常に大きな革命でした。この革命により、「スペシャルティコーヒー」と「コマーシャルコーヒー」の2種類が誕生しました。

当然、それまでも美味しいコーヒーというのはありましたが、生産国において各地方の豆を混ぜてしまうことで、平均した味になっていました。また、美味しさの一番大きな要因は標高であることに気付くにも時間がかかりましたね。2000(平成12)年頃から始まった10の中の1つだけ輝く豆を見つけ出すための作業は、今尚僕らが日々続けていることです。

――現在、「堀口珈琲」さんでは多数のストレート、ブレンドを扱っていますが、これらはどのようにして選ばれ、仕入れられているのでしょうか?

堀口さん:基本的にカッピング、つまりテイスティングをしてセレクションしていますが、仕入れる前には実際に現場に行って、栽培状況も確認して、そのうえで長期的な取引につなげていくようにしています。美味しい豆と出会っても、最初からすごい量を買うということはしないですね。初めは少量から購入して、良かったら次の年から沢山買うようにしています。

テイスティングについても、農作物のことですから、毎年必ずテイスティングをしています。堀口珈琲の場合は100ぐらいのシングルオリジン(ストレート豆)がありますが、ほとんどの生産者と直接会って購入しています。

――堀口社長はスペシャルティコーヒーを専門的に扱う「LCF」(リーディングコーヒーファミリー)という組織も運営されているそうですが、LCFとはどんな組織なのでしょうか?

堀口さん:LCFはビーンズショップのグループで、言ってみれば生豆のバイヤーです。色々なロースターがそこに参加しています。一店舗ではなく、複数の店舗でタッグを組むことで購入力をつけ、結果的に高品質な豆を確保することができます。

彼らは我々がいい豆を確保するために、お手伝いをしてくれる人たちなので、我々が良い豆を供給すれば、彼らも成長していきます。従って、使用量もどんどん増えていくという好循環が生まれています。

――最近、堀口珈琲のオリジナルブレンドを9つに集約したそうですが、その狙いをお聞かせください。

堀口さん:この9つのブレンドは今から2年前に作ったものです。もともと、当店で扱うブレンドが沢山あったのですが、それを整理して、チャートにしたのがこの9つです。

昔はブレンドというのは「いい豆が無いから仕方なく」ブレンドして作り、平均化していましたが、2000年以降はいい豆を確保できるようになり、堀口珈琲では10年間、沢山のシングルオリジンを使ってきました。シングルオリジンをきちんと認識したうえで、さらにオリジナリティのあるブレンドを作る。それが当店のブレンドであり、新しい美味しさであり、オリジナリティでもあります。

シングルオリジンは、問屋から買えばみんな同じものを買えますが、それでは十分な差別化ができません。我々のシングルオリジンは、ほぼ独占契約なので、ほかとは競合しないのですが、さらにブレンドを作るには、沢山のシングルオリジンの数が必要になります。最低でも50くらいは無いと、9つのブレンドは作れません。その点、堀口珈琲では100以上のシングルオリジンを買っているので、9つの最高のブレンドが作れたというわけです。このブレンドは当店および当社のコーヒーを使用してくださっている卸先各店で飲むことができます。

――さて、続いてお店の話題に移りますが、こちらの世田谷店には普段、どんなお客さんが来られるのでしょうか?

堀口さん:平日は主婦の方が多いです。女性が8割以上で、年齢層は高めですね。ビジネスでの打ち合わせの方も来られます。土日は年齢層の幅も広がり、地域の方はもちろん、家族連れの方や年配の方、かなり遠くから来られる方もいらっしゃいます。

使い方としては、やはりコーヒーが基本ですが、ケーキやパフェなども召し上がっていかれる方も多いですし、ここはほかの店舗との差別化するために、フードメニューも充実させています。なので、サンドイッチやトーストなど、フードメニューと一緒に楽しまれる方もいらっしゃいます。もちろん、豆の購入だけで来られる方も沢山いらっしゃいます。聞いていただければスタッフが丁寧に案内しますので、気軽にお越しください。

――創業当初からこの千歳船橋の本拠地を置かれている「堀口珈琲」ですが、その理由は何だったのでしょうか?

堀口さん:小田急線について言えば、経堂、千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵、この3つの駅は乗降客数が多く、商店街も発展していて、生活水準も比較的高い。そういう意味で、「ハイエンドの、我々のコーヒーを理解してくれる方がいる」と考えました。それに、住宅地でありながらも、意外とオフィスが多く、多様な方がいらっしゃる。そういった土地柄も魅力でした。「堀口珈琲」のコンセプトは「ピラミッドの一番上の部分」。商品も一番上、顧客もそれを啓蒙しやすい方たちがいい。それができるのが、この場所だと思ったわけです。

――実際に20年以上店を続けてきて、千歳船橋の魅力とはどんな点でしょうか?

堀口さん:やはり、当店の商品を理解し評価してくれる方々が同じエリアに住まわれているのはとても嬉しい。また、商店街でも活気あるという点も魅力です。老舗も個性的な個人の店も一緒に存在する。そして街も、人々も成熟している。そこが魅力だと思います。

堀口俊英さん

株式会社堀口珈琲 代表取締役会長
http://www.kohikobo.co.jp/
※この情報は2018(平成30)年3月時点のものです。